The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本心血管理学療法学会 » ポスター発表

[P-HT-03] ポスター(心血管)P03

Fri. May 12, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本心血管理学療法学会

[P-HT-03-2] 高齢者における心臓外科術後のADL回復に重要な術前身体機能

岡添 祐也, 前田 秀博, 入江 博之, 川渕 正敬, 國澤 雅裕 (近森病院)

Keywords:心臓外科手術, ADL, 術前身体機能

【はじめに,目的】

近年,急速な高齢化を迎えており高齢者に対する心臓外科手術も増加している。術後の心機能回復に比べてADL回復は遅く,高齢になるほど入院期間の長期化や自宅復帰率の低下を引き起こす可能性がある。

そこで今回,高齢者における心臓外科術後のADL回復に関連する因子を検討することを目的とした。

【方法】

対象は2012年7月から2015年12月までに待機的開胸心臓手術を施行された65歳以上の症例317例のうち,術前評価が困難であった症例,術後3日以内に歩行開始が開始されなかった症例,死亡・術後転科となった症例を除く209例とした。手術内訳はCABG66例,弁手術102例,CABG+弁手術41例であった。入院前Barthel Index(以下,BI)と退院時BIの差がなかった回復群101例と差があった未回復群108例にわけ比較を行った。

方法としては患者背景,術前身体機能,手術内容,術後歩行距離をカルテより後方視的に調査した。統計分析はMann Whitney U検定,χ2乗検定,ロジスティック回帰分析を行い,ROC曲線からカットオフ値を算出した。有意水準はいずれも5%未満とした。

【結果】

各項目の差については平均値±標準偏差,回復群 vs 未回復群で以下に示す。患者背景および術前評価では年齢(74.4±6.1 vs 77.9±6.0歳),性別(男性62 vs 47%),握力(27.1±7.8 vs 22.6±7.2kg),膝伸展筋力体重比(52.0±18.8 vs 45.6±16.9%),片脚立位時間(29.4±25.1 vs 16.3±16.1秒),Functional Reach Test(31.6±6.8 vs 28.2±6.8cm),6分間歩行距離(346±95 vs 275±92m)で差を認めたが,入院時BI(99±3vs 98±3点)に差はなかった。手術内容では術式(CABG36 vs 30例,弁手術46 vs 56例,CABG+弁手術19 vs 22例),手術時間(275±79 vs 269±69分),麻酔時間(357±101 vs 347±76分)のいずれも差を認めなかった。術後経過では立位開始日(0.4±0.5 vs 0.6±0.7日)で差は認めなかったが,歩行開始日数(1.1±0.3 vs 1.3±0.6日),術後3日以内の最高連続歩行距離(404±149 vs 303±176m),退院時BI(99±3 vs 82±15点)において差を認めた。

BI回復を従属変数としたロジスティック回帰分析では術前片脚立位時間,術前6分間歩行距離,術後3日以内の最高連続歩行距離が抽出された(Hosmer Lomeshow検定P=0.349,判別的中率75.1%)。その中で最も影響力の強かった術前片脚立位時間のカットオフ値は9.05秒(感度81.2%,特異度61.1%,正診率73.9%)となった。

【結論】

未回復群は高齢で女性が多く,術前身体機能が低く,術後早期の歩行距離が短くなっていた。中でも術前片脚立位時間,術前6分間歩行距離,術後3日以内の最高連続歩行距離がADL回復に関連する要因であった。特に術前片脚立位時間が9.05秒を下回る症例ではADL回復に時間を要することが示唆され,術前身体機能の向上を視野に入れたアプローチが重要である。