[P-HT-03-5] 待機的心臓外科術後の離床進行状況が退院時の移動動作能力に与える影響
Keywords:心臓外科手術, 移動能力, 早期離床
【はじめに,目的】
心臓外科手術後急性期のリハビリテーションは,過度な安静臥床による弊害の予防と術前身体機能を再獲得させることを目的とし,可及的早期から離床を進めることが普及している。しかしながら,術後の離床が遅延する症例も一定数存在することが報告されているが,術後の離床状況が身体機能に与える影響を検討した報告は散見される程度である。そこで本研究では,心臓外科術後の離床状況と退院時の移動動作能力の関係性を明らかにすることを目的とした。
【方法】
2014年1月から2015年12月に当院心臓血管外科において待機的心臓手術を施行した症例のうち,移動動作能力の指標であるShort Physical Performance Battery(以下,SPPB)測定が術前より可能であった症例321例を対象とし,診療録より後方視的に調査を行った。手術後100m歩行獲得までに要した日数が4日以内の症例を早期群(n=267),5~8日以内の症例を順調群(n=38),術後9日目以降の症例を遅延群(n=16)に分類した。各群の患者背景(年齢,性別,術前生化学検査,術前左室駆出率,手術様式,手術時間,術後歩行開始までの日数,ICU入室日数,術後入院日数),運動機能(術前SPPB,術前握力,術後SPPB,術後握力),退院時のSPPBが術前より低下していた症例の割合を調査し検討した。統計学的処理はSPSS ver 11.0.1Jを使用し,χ2検定,Willcoxonの符号付順位検定,Kruskal-Wallis検定,Bonferroniの不等式による修正を行ったMann-WhitneyのU検定を用いて比較し,有意水準は5%未満とした。
【結果】
各群における術前SPPBはそれぞれ早期群10.9±1.6点,順調群9.4±2.3点,遅延群9.7±2.0点,術後SPPBはそれぞれ早期群10.6±2.0点,順調群8.9±2.7点,遅延群9.0±2.3点であり,いずれにおいても早期群が有意に高値であった(p<0.05)。SPPB低下症例の割合は,早期群84例[31.5%],順調群11例[28.9%],遅延群8例[50%]であった。各群間での統計学的有意差は認められなかった(p=0.28)。
【結論】
心臓外科術後症例において,早期離床のみでは術後の移動動作能力の低下を十分に予防できているとは言えない事が明らかとなった。単に離床進捗状況に目標を設定するのではなく,個々に応じた目標を設定し,術前からのリスクの把握やリハビリテーション時間外での活動量増加,退院後も継続した評価やリハビリテーション介入を行っていくようなアプローチが必要であると考えられた。
心臓外科手術後急性期のリハビリテーションは,過度な安静臥床による弊害の予防と術前身体機能を再獲得させることを目的とし,可及的早期から離床を進めることが普及している。しかしながら,術後の離床が遅延する症例も一定数存在することが報告されているが,術後の離床状況が身体機能に与える影響を検討した報告は散見される程度である。そこで本研究では,心臓外科術後の離床状況と退院時の移動動作能力の関係性を明らかにすることを目的とした。
【方法】
2014年1月から2015年12月に当院心臓血管外科において待機的心臓手術を施行した症例のうち,移動動作能力の指標であるShort Physical Performance Battery(以下,SPPB)測定が術前より可能であった症例321例を対象とし,診療録より後方視的に調査を行った。手術後100m歩行獲得までに要した日数が4日以内の症例を早期群(n=267),5~8日以内の症例を順調群(n=38),術後9日目以降の症例を遅延群(n=16)に分類した。各群の患者背景(年齢,性別,術前生化学検査,術前左室駆出率,手術様式,手術時間,術後歩行開始までの日数,ICU入室日数,術後入院日数),運動機能(術前SPPB,術前握力,術後SPPB,術後握力),退院時のSPPBが術前より低下していた症例の割合を調査し検討した。統計学的処理はSPSS ver 11.0.1Jを使用し,χ2検定,Willcoxonの符号付順位検定,Kruskal-Wallis検定,Bonferroniの不等式による修正を行ったMann-WhitneyのU検定を用いて比較し,有意水準は5%未満とした。
【結果】
各群における術前SPPBはそれぞれ早期群10.9±1.6点,順調群9.4±2.3点,遅延群9.7±2.0点,術後SPPBはそれぞれ早期群10.6±2.0点,順調群8.9±2.7点,遅延群9.0±2.3点であり,いずれにおいても早期群が有意に高値であった(p<0.05)。SPPB低下症例の割合は,早期群84例[31.5%],順調群11例[28.9%],遅延群8例[50%]であった。各群間での統計学的有意差は認められなかった(p=0.28)。
【結論】
心臓外科術後症例において,早期離床のみでは術後の移動動作能力の低下を十分に予防できているとは言えない事が明らかとなった。単に離床進捗状況に目標を設定するのではなく,個々に応じた目標を設定し,術前からのリスクの把握やリハビリテーション時間外での活動量増加,退院後も継続した評価やリハビリテーション介入を行っていくようなアプローチが必要であると考えられた。