[P-HT-05-2] 高齢血液透析患者への座位での膝屈伸運動が体幹機能,立位バランスへ与える即時効果
無負荷での高速度運動とレジスタンス運動による比較
Keywords:高齢血液透析患者, 高速度運動, 即時効果
【はじめに,目的】
血液透析(以下,HD)患者は,運動頻度と生命予後に関連が認められおり,運動を継続して実施することが重要とされている。また,HD患者への運動処方の際に参考にされるACSMのガイドラインでは,中等度~高強度でのレジスタンス運動が推奨されている。しかし,近年,HD患者は高齢化が進み,著明な身体機能低下や意欲低下により,レジスタンス運動を実施することが困難な者も多い。
一方,運動負荷に関して近年,無負荷での高速度運動(以下,高速度運動)がレジスタンス運動と同等の効果があると地域高齢者を対象とした検討から明らかにされた。高速度運動は負荷量が小さく,主観的な運動強度が小さいことが想定できることから,高齢HD患者へも適応できる可能性が考えられる。
そこで,高齢HD患者に対し,座位での膝屈伸運動を行う際に無負荷での高速度条件とレジスタンス条件で実施し,身体機能に与える即時効果を比較した。
【方法】
対象者は当院に入院し,リハビリを実施している65歳以上の高齢HD患者とした。意欲の評価にVitality Index(以下,VI)を用いた。運動前後の身体機能への即時効果の検討に体幹機能の評価としてSeated Side Tapping test(以下,SST)と立位バランスの評価としてShort Physical Performance Batteryの下位項目であるバランステスト(範囲0-4)を測定した。SSTは,座位にて両手を広げた状態から側方に10cm離れた位置にあるターゲットを左右交互にできるだけ早く10回触れる動作の所要時間を計測した。
運動は,座位にて両膝関節の屈伸運動を10回ずつ,5セット実施した。運動負荷は,高速度運動,レジスタンス運動(1RMの60%)とし,無作為な順序で異なる非透析日に実施した。また,運動後に主観的運動強度をBorg scale(範囲6-20)を用いて聴取した。統計的検討として運動前後と運動条件間の比較に反復測定分散分析を用い,Borg scaleの比較には,対応のあるt検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象者は12名(年齢76.9±8.7歳,女性8名)であり,VIは6.1±2.0点であった。運動前後のSSTは,高速度運動では,11.0±5.1秒,9.9±5.3秒,レジスタンス運動は,10.8±5.3秒,11.2±4.0秒であり,運動前後と運動条件間に交互作用は認めず,高速度運動で有意な改善を認めた。運動前後のバランステストは高速度運動では,1.8±1.4点,2.3±1.7点,レジスタンス運動は,1.7±1.4点,1.8±1.4点であり,交互作用を認め,高速度運動で有意な改善を認めた。Borg scaleは,10.9±2.8点,15.1±3.0点であり,高速度運動で有意に低値を示した。
【結論】
高齢HD患者に対する高速度運動は,レジスタンス運動と比較して体幹機能や立位バランスに対して即時効果が高く,ウォーミングアップとしての有用性が高い可能性が示された。さらに,主観的運動強度が低いことから高速度運動は,意欲低下のみられる高齢HDに適応・継続しやすいと考えた。
血液透析(以下,HD)患者は,運動頻度と生命予後に関連が認められおり,運動を継続して実施することが重要とされている。また,HD患者への運動処方の際に参考にされるACSMのガイドラインでは,中等度~高強度でのレジスタンス運動が推奨されている。しかし,近年,HD患者は高齢化が進み,著明な身体機能低下や意欲低下により,レジスタンス運動を実施することが困難な者も多い。
一方,運動負荷に関して近年,無負荷での高速度運動(以下,高速度運動)がレジスタンス運動と同等の効果があると地域高齢者を対象とした検討から明らかにされた。高速度運動は負荷量が小さく,主観的な運動強度が小さいことが想定できることから,高齢HD患者へも適応できる可能性が考えられる。
そこで,高齢HD患者に対し,座位での膝屈伸運動を行う際に無負荷での高速度条件とレジスタンス条件で実施し,身体機能に与える即時効果を比較した。
【方法】
対象者は当院に入院し,リハビリを実施している65歳以上の高齢HD患者とした。意欲の評価にVitality Index(以下,VI)を用いた。運動前後の身体機能への即時効果の検討に体幹機能の評価としてSeated Side Tapping test(以下,SST)と立位バランスの評価としてShort Physical Performance Batteryの下位項目であるバランステスト(範囲0-4)を測定した。SSTは,座位にて両手を広げた状態から側方に10cm離れた位置にあるターゲットを左右交互にできるだけ早く10回触れる動作の所要時間を計測した。
運動は,座位にて両膝関節の屈伸運動を10回ずつ,5セット実施した。運動負荷は,高速度運動,レジスタンス運動(1RMの60%)とし,無作為な順序で異なる非透析日に実施した。また,運動後に主観的運動強度をBorg scale(範囲6-20)を用いて聴取した。統計的検討として運動前後と運動条件間の比較に反復測定分散分析を用い,Borg scaleの比較には,対応のあるt検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象者は12名(年齢76.9±8.7歳,女性8名)であり,VIは6.1±2.0点であった。運動前後のSSTは,高速度運動では,11.0±5.1秒,9.9±5.3秒,レジスタンス運動は,10.8±5.3秒,11.2±4.0秒であり,運動前後と運動条件間に交互作用は認めず,高速度運動で有意な改善を認めた。運動前後のバランステストは高速度運動では,1.8±1.4点,2.3±1.7点,レジスタンス運動は,1.7±1.4点,1.8±1.4点であり,交互作用を認め,高速度運動で有意な改善を認めた。Borg scaleは,10.9±2.8点,15.1±3.0点であり,高速度運動で有意に低値を示した。
【結論】
高齢HD患者に対する高速度運動は,レジスタンス運動と比較して体幹機能や立位バランスに対して即時効果が高く,ウォーミングアップとしての有用性が高い可能性が示された。さらに,主観的運動強度が低いことから高速度運動は,意欲低下のみられる高齢HDに適応・継続しやすいと考えた。