第52回日本理学療法学術大会

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日本心血管理学療法学会 » ポスター発表

[P-HT-05] ポスター(心血管)P05

2017年5月12日(金) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本心血管理学療法学会

[P-HT-05-3] 外来維持血液透析患者の身体機能評価と栄養状態の関連について

日比野 貴志, 田川 公一 (医療法人偕行会偕行会城西病院)

キーワード:血液透析, 身体機能評価, 栄養状態

【はじめに,目的】

維持血液透析患者の栄養状態の特徴として近年,国際腎疾患栄養代謝学会,国際腎臓学会よりタンパク質エネルギー障害(protein energy wasting:PEW)が提唱されている。PEWとは血液透析患者特有の栄養障害で,食事制限やタンパク質の透析液への喪失,慢性炎症,代謝性アシドーシスなどの原因がある。その結果,筋タンパク異化の亢進や筋タンパク合成障害が起こり,骨格筋の機能低下を呈するため身体機能評価と栄養状態は密接に関連すると仮説が立てられる。そこで本研究は外来維持血液透析患者の身体機能評価と栄養状態が関連する検証を行った。

【方法】

対象は当院にて外来維持血液透析を行っている患者19名(年齢71.1±11.4歳,男性12名,女性7名,DM14名,透析期間53.4±42.2ヶ月)。脳卒中や重度の関節疾患など身体機能評価に影響を及ぼす合併症がある患者はあらかじめ除外した。身体機能評価は10m歩行速度,Tined Up and Go test(TUG),6分間歩行テスト(6 Minutes Walk Test:6MWT),握力,等尺性膝伸展筋力,Short Physical Performance Battesy(SPPB)を測定し,栄養状態は透析前の血清アルブミン値を指標とした。各種身体機能評価と栄養状態の関連について統計学的検討はPearsonの相関係数を用いて有意水準を5%未満とした。

【結果】

各種身体機能評価の平均±SDは10m歩行速度10.3±3.5秒,TUG11.6±4.3秒,6MWT295.8±93.2m,握力23.1±7.1Kg,等尺性膝伸展筋力17.0±6.2Kgf,SPPB9.2±2.9点で,透析前血清アルブミン値は3.4±0.3g/dlであった。各評価項目との関連は10m歩行速度(p<0.01,r=-0.68),TUG(p<0.05,r=-0.39),6MWT(p=N.S,r=0.26),握力(p=N.S,r=0.24),等尺性膝伸展筋力(p=N.S,r=0.45),SPPB(p=N.S,r=0.32)であり10m歩行速度とTUGが透析前血清アルブミン値と相関する結果となった。

【結論】

外来維持血液透析患者の栄養状態と関連する身体機能評価は10m歩行速度とTUGであることが判明した。栄養障害の概念であるサルコペニアの診断基準(Cruz-Jentoft AJ.European Working. Group on Sarcopenia in Older People.2010)にも歩行速度が含まれている。また,TUGもサルコペニアと強い相関を示すという報告(Gill Turner, et al., 2017)があり,サルコペニアの診断基準を一部,反映する結果となった。近年の医療政策により在宅リハビリテーションが普及しているが栄養状態を把握できる機会は少ない。今回の研究により二次性サルコペニアであるPEWが懸念される血液透析患者の栄養状態を反映する身体機能評価が明らかになったことで在宅リハビリテーションの現場でも栄養状態を把握できる可能性が示された。