[P-HT-05-4] 運動療法を施行した保存期慢性腎臓病患者の運動耐容能
Keywords:慢性腎臓病, 運動耐容能, 運動療法
【はじめに,目的】
保存期慢性腎臓病(CKD)患者の身体機能やADL,身体活動量の低下に関する報告は近年増加している。先行研究では身体機能の低下は腎機能や血清バイオマーカーよりもCKD患者の生命予後に大きく影響するとの報告もある。CKD患者は体液異常,貧血,血行動態異常等の合併によって心機能が低下し,安静や不活動による廃用と相まって運動耐容能の低下を招くといわれている。診療報酬未設定のためCKD患者への運動療法の普及は十分ではなく,運動療法を施行したCKD患者の運動耐容能に関する報告は少ない。そこで本研究の目的は,運動療法を施行したCKD患者の運動耐容能について検討することとした。
【方法】
後ろ向き横断研究。対象は当院心臓リハビリテーション(心リハ)に外来通院し心肺運動負荷試験(CPX)が可能であった69名のうち,週1回以上かつ3か月以上継続できている患者52名とした。維持透析中,呼吸器疾患のある患者は除外した。診療記録より患者背景因子として性別,年齢,BMI,疾患内訳,既往・合併症,推定糸球体濾過量(eGFR),心機能指標(BNP,LVEF,E/e',LAD),CPX実施までの日数,心リハ頻度を調査した。運動耐容能の指標としてCPXより最高酸素摂取量(Peak VO2),無酸素性代謝閾値(AT VO2),二酸化炭素換気当量(VE/VCO2 slope)を測定した。eGFRと各項目との関連をPearsonの積率相関係数,またはSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。対象者をeGFR≧60(ml/min/1.73m2)のnon CKD群とeGFR<60のCKD群に分け,各項目を対応のないt検定,Mann-WhitneyのU検定,Fisherの正確率検定を用いて比較した。さらにCKDを従属変数,有意差を認めた項目,性別,年齢を独立変数としてロジスティック回帰分析を行った。有意水準は5%未満とし,統計解析にはSPSS Ver.24.0を用いた。
【結果】
解析対象は全47名(男性/女性=25/22名,平均年齢75.6±6.4歳)でCKD群の重症度分類はステージG1:1名,G2:17名,G3a:15名,G3b:10名,G4は4名であった。e-GFRとPeak VO2(r=0.314;p<0.05),AT VO2(r=0.358;P<0.05)に有意な正の相関が認められた。non CKD群18名:eGFR 70.0±8.3(男性/女性 11/7名,73.6±6.7歳)vs CKD群29名:eGFR 42.1±10.8(男性/女性 14/15名,76.8±5.9歳)に分類された。患者背景因子の比較では全項目で有意差は認めず,運動耐容能の指標ではPeak VO2(14.8±4.1 vs 12.8±2.7ml/kg/min,p<0.01),AT VO2(11.6±2.5 vs 10.2±1.9ml/kg/min,p<0.01)で有意差を認めた。ロジスティック回帰分析の結果,AT VO2のみが有意な因子であった(OR -0.322,p<0.05)。
【結論】
心リハ患者が対象であるが,保存期CKD患者の運動耐容能はCKDではない患者と比べ著明に低下していた。運動療法施行例の結果であることから,CKDの運動耐容能の低下には廃用・不活動以外の因子が関与している可能性が示唆された。今後は運動耐容能の改善率についての検討が必要である。
保存期慢性腎臓病(CKD)患者の身体機能やADL,身体活動量の低下に関する報告は近年増加している。先行研究では身体機能の低下は腎機能や血清バイオマーカーよりもCKD患者の生命予後に大きく影響するとの報告もある。CKD患者は体液異常,貧血,血行動態異常等の合併によって心機能が低下し,安静や不活動による廃用と相まって運動耐容能の低下を招くといわれている。診療報酬未設定のためCKD患者への運動療法の普及は十分ではなく,運動療法を施行したCKD患者の運動耐容能に関する報告は少ない。そこで本研究の目的は,運動療法を施行したCKD患者の運動耐容能について検討することとした。
【方法】
後ろ向き横断研究。対象は当院心臓リハビリテーション(心リハ)に外来通院し心肺運動負荷試験(CPX)が可能であった69名のうち,週1回以上かつ3か月以上継続できている患者52名とした。維持透析中,呼吸器疾患のある患者は除外した。診療記録より患者背景因子として性別,年齢,BMI,疾患内訳,既往・合併症,推定糸球体濾過量(eGFR),心機能指標(BNP,LVEF,E/e',LAD),CPX実施までの日数,心リハ頻度を調査した。運動耐容能の指標としてCPXより最高酸素摂取量(Peak VO2),無酸素性代謝閾値(AT VO2),二酸化炭素換気当量(VE/VCO2 slope)を測定した。eGFRと各項目との関連をPearsonの積率相関係数,またはSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。対象者をeGFR≧60(ml/min/1.73m2)のnon CKD群とeGFR<60のCKD群に分け,各項目を対応のないt検定,Mann-WhitneyのU検定,Fisherの正確率検定を用いて比較した。さらにCKDを従属変数,有意差を認めた項目,性別,年齢を独立変数としてロジスティック回帰分析を行った。有意水準は5%未満とし,統計解析にはSPSS Ver.24.0を用いた。
【結果】
解析対象は全47名(男性/女性=25/22名,平均年齢75.6±6.4歳)でCKD群の重症度分類はステージG1:1名,G2:17名,G3a:15名,G3b:10名,G4は4名であった。e-GFRとPeak VO2(r=0.314;p<0.05),AT VO2(r=0.358;P<0.05)に有意な正の相関が認められた。non CKD群18名:eGFR 70.0±8.3(男性/女性 11/7名,73.6±6.7歳)vs CKD群29名:eGFR 42.1±10.8(男性/女性 14/15名,76.8±5.9歳)に分類された。患者背景因子の比較では全項目で有意差は認めず,運動耐容能の指標ではPeak VO2(14.8±4.1 vs 12.8±2.7ml/kg/min,p<0.01),AT VO2(11.6±2.5 vs 10.2±1.9ml/kg/min,p<0.01)で有意差を認めた。ロジスティック回帰分析の結果,AT VO2のみが有意な因子であった(OR -0.322,p<0.05)。
【結論】
心リハ患者が対象であるが,保存期CKD患者の運動耐容能はCKDではない患者と比べ著明に低下していた。運動療法施行例の結果であることから,CKDの運動耐容能の低下には廃用・不活動以外の因子が関与している可能性が示唆された。今後は運動耐容能の改善率についての検討が必要である。