[P-KS-01-2] 機能制限モデルにおける各種歩行戦略の力学的エネルギーの回復率に関する研究
Keywords:歩行戦略, 力学的エネルギー, 回復率
【はじめに,目的】歩行は,移動のために最も自動化された運動であり,定型性を示すことで知られ,エネルギーコスト(以下EC)が最小となるよう運動戦略が形成されると考えられている。
我々は,健常者において股関節の機能制限モデルを用い,歩行の運動戦略の選択基準を酸素摂取量の観点から報告した。その結果,EC最小の運動戦略が選択されたが,さらに1歩行周期当たりのECを明らかにする必要性を感じた。
そこで,本研究では股関節の機能制限モデルを用い,歩行における1歩行周期当たりのECを明らかにすることを目的とした。
【方法】対象は健常若年男性21名(身長174.4±6.2cm,体重66.1±7.9cm,BMI 21.7±2.2,年齢20.0±0.7歳)とし,歩行に障害を有する者を除外した。
測定は,平地歩行とした。三次元動作分析装置(ローカス3D,MA-5000 ANIMA)のカメラ6台を使用し,対象者に赤外線反射マーカーを12ヶ所貼付した。サンプリング周波数は150Hzとした。
歩容条件は,正常歩行と股関節屈曲制限0°とした制限歩行(後傾型・回旋型・揃え型)の計4種類をランダム化した。速度条件は,遅い速度(30m/min)と速い速度(60m/min)の順とした。
三次元動作解析ソフトにて,測定したデータより1歩行周期の重心位置を算出し,その値から解析ソフトMatlabにて力学的エネルギーの回復率を算出した。
統計解析は,二元配置分散分析を用い,従属変数は回復率,独立変数は歩行条件(4水準)と速度条件(2水準)とし,事後検定はBonferroniの多重比較検定を用いた。なお,統計学的有意水準は,危険率5%未満とした。
【結果】回復率は分散分析の結果,各要因間に交互作用はみられなかったが,歩容条件と歩行速度に主効果が認められた。両方の速度で,揃え型の回復率が最も大きかった。遅い速度では,正常歩行,回旋型,後傾型,揃え型の順,速い速度では,後傾型,正常歩行,回旋型,揃え型の順であった。歩容条件において,揃え型と後傾型・回旋型・正常歩行の間にそれぞれ有意な差を認めた。しかし,他の歩容条件の間に有意な差はみられなかった。また,速度が上昇すると回復率も高い値を示した。
歩行率は分散分析の結果,各要因間に交互作用が有意であった。そこで,それぞれの単純主効果を分析した結果,歩容条件と歩行速度に有意差が認められた。両方の速度で,揃え型の歩行率が最も高く,正常歩行・後傾型・回旋型との間に有意差がみられた。しかし,他の歩容条件の間に有意差は認められなかった。また,歩行速度の上昇により歩行率も増加した。
【結論】本研究において,回復率の観点からすると,揃え型は1歩行周期の効率が良いことが明らかとなった。一方で,先行研究において揃え型は選択されなかったのは,制限歩行の中で最も歩行率が高く,結果として単位時間当たりのコストとしては高くなるためだと考えられた。
我々は,健常者において股関節の機能制限モデルを用い,歩行の運動戦略の選択基準を酸素摂取量の観点から報告した。その結果,EC最小の運動戦略が選択されたが,さらに1歩行周期当たりのECを明らかにする必要性を感じた。
そこで,本研究では股関節の機能制限モデルを用い,歩行における1歩行周期当たりのECを明らかにすることを目的とした。
【方法】対象は健常若年男性21名(身長174.4±6.2cm,体重66.1±7.9cm,BMI 21.7±2.2,年齢20.0±0.7歳)とし,歩行に障害を有する者を除外した。
測定は,平地歩行とした。三次元動作分析装置(ローカス3D,MA-5000 ANIMA)のカメラ6台を使用し,対象者に赤外線反射マーカーを12ヶ所貼付した。サンプリング周波数は150Hzとした。
歩容条件は,正常歩行と股関節屈曲制限0°とした制限歩行(後傾型・回旋型・揃え型)の計4種類をランダム化した。速度条件は,遅い速度(30m/min)と速い速度(60m/min)の順とした。
三次元動作解析ソフトにて,測定したデータより1歩行周期の重心位置を算出し,その値から解析ソフトMatlabにて力学的エネルギーの回復率を算出した。
統計解析は,二元配置分散分析を用い,従属変数は回復率,独立変数は歩行条件(4水準)と速度条件(2水準)とし,事後検定はBonferroniの多重比較検定を用いた。なお,統計学的有意水準は,危険率5%未満とした。
【結果】回復率は分散分析の結果,各要因間に交互作用はみられなかったが,歩容条件と歩行速度に主効果が認められた。両方の速度で,揃え型の回復率が最も大きかった。遅い速度では,正常歩行,回旋型,後傾型,揃え型の順,速い速度では,後傾型,正常歩行,回旋型,揃え型の順であった。歩容条件において,揃え型と後傾型・回旋型・正常歩行の間にそれぞれ有意な差を認めた。しかし,他の歩容条件の間に有意な差はみられなかった。また,速度が上昇すると回復率も高い値を示した。
歩行率は分散分析の結果,各要因間に交互作用が有意であった。そこで,それぞれの単純主効果を分析した結果,歩容条件と歩行速度に有意差が認められた。両方の速度で,揃え型の歩行率が最も高く,正常歩行・後傾型・回旋型との間に有意差がみられた。しかし,他の歩容条件の間に有意差は認められなかった。また,歩行速度の上昇により歩行率も増加した。
【結論】本研究において,回復率の観点からすると,揃え型は1歩行周期の効率が良いことが明らかとなった。一方で,先行研究において揃え型は選択されなかったのは,制限歩行の中で最も歩行率が高く,結果として単位時間当たりのコストとしては高くなるためだと考えられた。