[P-KS-06-1] 左頭頂葉に対する経頭蓋直流電流刺激(tDCS)が平衡機能に及ぼす影響
Keywords:transcranial direct current stimulation, 平衡機能, 左頭頂葉
【はじめに,目的】
前庭機能低下を有する高齢者では,転倒や認知機能の低下を併発し,ADLの低下を示すことが多い(Semenov, et al., 2016)。前庭機能の中枢は,脳幹,小脳だけでなく,大脳皮質での複数領野の関連が確認されている(Naito, et al., 2003)。皮質前庭中枢のひとつである頭頂葉は,左右の情報処理特性が異なり,左側を抑制すると右側の機能が賦活される半球間抑制作用を有している(Xu, et al., 2016)。また,一過性に脳機能を変化させる経頭蓋直流電流刺激(transcranial Direct Current Stimulation:tDCS)を用いた研究において,左側が末梢前庭情報処理,右側が前庭情報を統合するとされている(Arshad, et al., 2014)。我々は,第51回日本理学療法学術大会において,右頭頂葉に対するtDCS陰極刺激が皮質前庭中枢に影響を及ぼし,開眼時の平衡機能を低下させることを報告した。本研究の目的は,左頭頂葉に対するtDCS陰極刺激が平衡機能に及ぼす影響について検討することとした。
【方法】
対象は,健常成人10名(男性5名,女性5名,21.8±0.5歳,全例右利き)とした。tDCSは,DC stimulator plus(Neuroconn)を使用し,5cm×7cmのスポンジ電極を用いた。刺激電極は,生理食塩水を十分に浸透させた後,国際10/20法に準じP3に陰極,右前頭部に陽極を設置した。刺激条件は,刺激強度1.5mA,刺激時間15分とし,刺激開始時の立ち上がり時間と刺激終了前の減衰時間を10秒間設けた。重心動揺検査は,Twingravicoder G-6100(ANIMA)を用い閉脚立位で,開閉眼での60秒間と,開閉眼で頭部回旋35°を2Hzで回旋中の10秒間を測定した。開眼閉脚立位時は,被験者に前方2mの指標を注視する様に指示した。頭部回旋立位時のリズムは,メトロノームを使用して調整した。統計学的分析は,SPSS statistics 23.0(IBM)を使用し,Shapilo-Wilk検定で正規性の確認を行った後,tDCS前後の比較についてWilcoxon符号順位和検定を用いて分析し,有意水準5%とした。
【結果】
tDCS前後の比較について,頭部回旋条件では,開眼時は外周面積が1.15(0.36-2.38)cm2から1.24(0.59-6.27)cm2(p=0.041),Y方向実効値が0.45(0.29-0.88)cmから0.53(0.27-1.00)cm(p=0.041)と有意に増加し,閉眼時は総軌跡長が28.8(15.7-68.9)cmから35.5(17.1-110.4)cm(p=0.050),X方向軌跡長20.8(11.0-55.3)cmから25.8(13.8-83.9)cm(p=0.021)が有意に増加した。閉脚立位条件では,開眼時の外周面積が3.66(2.43-6.98)cm2から3.53(1.20-7.17)cm2と有意に減少した。
【結論】
左頭頂葉に対するtDCSは,頭部回旋条件での足底圧中心の動揺を増加させたことから,平衡機能における末梢前庭情報処理に寄与すると考えられる。また,開眼立位時の外周面積の減少は,半球間抑制作用により右頭頂葉の視覚情報処理機能が相対的に賦活された影響によるものと推察される。
前庭機能低下を有する高齢者では,転倒や認知機能の低下を併発し,ADLの低下を示すことが多い(Semenov, et al., 2016)。前庭機能の中枢は,脳幹,小脳だけでなく,大脳皮質での複数領野の関連が確認されている(Naito, et al., 2003)。皮質前庭中枢のひとつである頭頂葉は,左右の情報処理特性が異なり,左側を抑制すると右側の機能が賦活される半球間抑制作用を有している(Xu, et al., 2016)。また,一過性に脳機能を変化させる経頭蓋直流電流刺激(transcranial Direct Current Stimulation:tDCS)を用いた研究において,左側が末梢前庭情報処理,右側が前庭情報を統合するとされている(Arshad, et al., 2014)。我々は,第51回日本理学療法学術大会において,右頭頂葉に対するtDCS陰極刺激が皮質前庭中枢に影響を及ぼし,開眼時の平衡機能を低下させることを報告した。本研究の目的は,左頭頂葉に対するtDCS陰極刺激が平衡機能に及ぼす影響について検討することとした。
【方法】
対象は,健常成人10名(男性5名,女性5名,21.8±0.5歳,全例右利き)とした。tDCSは,DC stimulator plus(Neuroconn)を使用し,5cm×7cmのスポンジ電極を用いた。刺激電極は,生理食塩水を十分に浸透させた後,国際10/20法に準じP3に陰極,右前頭部に陽極を設置した。刺激条件は,刺激強度1.5mA,刺激時間15分とし,刺激開始時の立ち上がり時間と刺激終了前の減衰時間を10秒間設けた。重心動揺検査は,Twingravicoder G-6100(ANIMA)を用い閉脚立位で,開閉眼での60秒間と,開閉眼で頭部回旋35°を2Hzで回旋中の10秒間を測定した。開眼閉脚立位時は,被験者に前方2mの指標を注視する様に指示した。頭部回旋立位時のリズムは,メトロノームを使用して調整した。統計学的分析は,SPSS statistics 23.0(IBM)を使用し,Shapilo-Wilk検定で正規性の確認を行った後,tDCS前後の比較についてWilcoxon符号順位和検定を用いて分析し,有意水準5%とした。
【結果】
tDCS前後の比較について,頭部回旋条件では,開眼時は外周面積が1.15(0.36-2.38)cm2から1.24(0.59-6.27)cm2(p=0.041),Y方向実効値が0.45(0.29-0.88)cmから0.53(0.27-1.00)cm(p=0.041)と有意に増加し,閉眼時は総軌跡長が28.8(15.7-68.9)cmから35.5(17.1-110.4)cm(p=0.050),X方向軌跡長20.8(11.0-55.3)cmから25.8(13.8-83.9)cm(p=0.021)が有意に増加した。閉脚立位条件では,開眼時の外周面積が3.66(2.43-6.98)cm2から3.53(1.20-7.17)cm2と有意に減少した。
【結論】
左頭頂葉に対するtDCSは,頭部回旋条件での足底圧中心の動揺を増加させたことから,平衡機能における末梢前庭情報処理に寄与すると考えられる。また,開眼立位時の外周面積の減少は,半球間抑制作用により右頭頂葉の視覚情報処理機能が相対的に賦活された影響によるものと推察される。