[P-KS-06-4] 軽負荷の反復的な単純運動および調節運動による運動後抑制の変化
Keywords:経頭蓋磁気刺激, 軽負荷反復運動, 運動後抑制
【はじめに,目的】
リハビリテーション分野において,軽負荷の反復運動は関節可動域の改善や運動学習の促進,脳卒中患者の随意運動促通などを目的に幅広く用いられている。先行研究では軽負荷の反復運動後に一次運動野の興奮性が一過性に低下する現象(運動後抑制)が生じることが報告されている(Teo, et al., 2011)。しかし運動後抑制の程度を変化させる要因については明らかになっていない。そこで本研究は,運動課題の様式に着目し,軽負荷の単純運動および調節運動による運動後抑制の変化を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は健常成人12名(23.8±2.9歳)であった。運動課題は右示指の等尺性外転運動とした。単純運動では,被験者はパーソナルコンピューター(PC)から出力される2 Hzの音に合わせて示指の外転運動を遂行した。調節運動には視覚追従課題を用いた。被験者はPC画面上を0.2 Hz,0.3 Hz,0.4 Hzの頻度でランダムに上下に移動するターゲットに対し,発揮した示指外転張力により移動するカーソルを正確に重ねるように示指の外転運動を遂行した。どちらの運動課題も,収縮強度は最大随意収縮の20%とし,運動時間は3分間とした。皮質脊髄路の興奮性の評価には経頭蓋磁気刺激を用いた。左一次運動野手指領域を刺激し,右第一背側骨間筋から運動誘発電位(MEP)を計測した。磁気刺激の強度は運動前に1 mVのMEPを10回中5回以上導出する強度とした。MEPは運動前,運動後1分,運動後5分,運動後10分に,各16波形ずつ計測し,加算平均値を算出した。MEPの比較には二元配置分散分析(運動条件×時間)を用いた。事後検定にはTukey HSD法を用いた。有意水準は5%とした。
【結果】
二元配置分散分析の結果,時間要因(F(2.137,21.137)=3.563,p<0.05)の主効果および交互作用(運動条件×時間)(F(3,30)=13.534,p<0.01)が認められたが,運動条件における主効果は認められなかった。単純運動におけるMEPの値(平均値±標準誤差)は,0.99±0.06 mV(運動前),0.58±0.10 mV(運動後1分),0.88±0.12 mV(運動後5分),0.94±0.15 mV(運動後10分)となった。また調節運動におけるMEPの値は,0.95±0.06 mV(運動前),1.01±0.14 mV(運動後1分),1.05±0.13 mV(運動後5分),1.04±0.17 mV(運動後10分)となった。事後検定の結果,単純運動では,運動前に比べ運動後1分においてMEPの有意な低下(p<0.01)が認められたが,調節運動においてはMEPの有意な変化は認められなかった。
【結論】
運動後抑制は,単純運動後には生じるものの,調節を要する運動後には生じないことが明らかになった。
リハビリテーション分野において,軽負荷の反復運動は関節可動域の改善や運動学習の促進,脳卒中患者の随意運動促通などを目的に幅広く用いられている。先行研究では軽負荷の反復運動後に一次運動野の興奮性が一過性に低下する現象(運動後抑制)が生じることが報告されている(Teo, et al., 2011)。しかし運動後抑制の程度を変化させる要因については明らかになっていない。そこで本研究は,運動課題の様式に着目し,軽負荷の単純運動および調節運動による運動後抑制の変化を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は健常成人12名(23.8±2.9歳)であった。運動課題は右示指の等尺性外転運動とした。単純運動では,被験者はパーソナルコンピューター(PC)から出力される2 Hzの音に合わせて示指の外転運動を遂行した。調節運動には視覚追従課題を用いた。被験者はPC画面上を0.2 Hz,0.3 Hz,0.4 Hzの頻度でランダムに上下に移動するターゲットに対し,発揮した示指外転張力により移動するカーソルを正確に重ねるように示指の外転運動を遂行した。どちらの運動課題も,収縮強度は最大随意収縮の20%とし,運動時間は3分間とした。皮質脊髄路の興奮性の評価には経頭蓋磁気刺激を用いた。左一次運動野手指領域を刺激し,右第一背側骨間筋から運動誘発電位(MEP)を計測した。磁気刺激の強度は運動前に1 mVのMEPを10回中5回以上導出する強度とした。MEPは運動前,運動後1分,運動後5分,運動後10分に,各16波形ずつ計測し,加算平均値を算出した。MEPの比較には二元配置分散分析(運動条件×時間)を用いた。事後検定にはTukey HSD法を用いた。有意水準は5%とした。
【結果】
二元配置分散分析の結果,時間要因(F(2.137,21.137)=3.563,p<0.05)の主効果および交互作用(運動条件×時間)(F(3,30)=13.534,p<0.01)が認められたが,運動条件における主効果は認められなかった。単純運動におけるMEPの値(平均値±標準誤差)は,0.99±0.06 mV(運動前),0.58±0.10 mV(運動後1分),0.88±0.12 mV(運動後5分),0.94±0.15 mV(運動後10分)となった。また調節運動におけるMEPの値は,0.95±0.06 mV(運動前),1.01±0.14 mV(運動後1分),1.05±0.13 mV(運動後5分),1.04±0.17 mV(運動後10分)となった。事後検定の結果,単純運動では,運動前に比べ運動後1分においてMEPの有意な低下(p<0.01)が認められたが,調節運動においてはMEPの有意な変化は認められなかった。
【結論】
運動後抑制は,単純運動後には生じるものの,調節を要する運動後には生じないことが明らかになった。