[P-KS-07-4] 意図的な視線偏向は視覚刺激の格率分布に依存する
―情動喚起刺激を用いて―
Keywords:視線偏向, 情動喚起, 意図
【はじめに,目的】左半側空間無視が生じると空間的注意が右方に偏ることがよく知られているが,我々は左半側空間無視が改善するにつれて軽微な無視症状になったケースでは,視線がむしろ左偏向となり,そのケースでは前頭葉が過活動することを明らかにした(Takamura, 2016)。前頭葉は行動発現のための意図に関わるが,こうした視線の偏りは経験依存的な意図が関連するのではないかと仮説をたて,それを明らかにするため以下の実験モデルを作成し検証した。一方,恐怖喚起画像が視覚的注意を引きつける(Vuilleumier, 2008)ことが明らかにされており,視線の偏りを解放させる目的で,情動喚起画像の呈示が効果を示すか明らかにすることを目的に実験を行った。
【方法】健康な大学生30名(平均年齢21.21歳)を対象に,視線計測装置内蔵PCモニタに表示された水平方向で等間隔に配置された5つ標的を,自らの視線で追跡・注視する選択反応課題を行った。注視標的として顔画像(中性的な顔または恐怖を感じている顔)を0.3秒間提示し,呈示後1.5秒間安静状態を設けた。条件は,標的の呈示割合が全て20%のcontrol条件,呈示割合が左から40%,30%,10%,10%,10%としたleft条件の2条件に,標的が全て中性的な顔でneutral課題と右端および右から2番目の標的に恐怖を感じている顔を呈示するfear課題の2つの課題を組み込み,計4課題を50試行ずつ無作為に実施した。視線分析にはTobii TX300(Tobii Technology)を用い,視覚刺激提示プログラムはLabVIEW(National Instruments)を用いて作成した。刺激提示前(-100msec~0msec)の視線座標の平均値(視線偏向)と視線座標が各標的の座標と,重なるまでの時間(反応時間)を課題間で比較するためにFriedman検定を行い,bonferroni法にて補正した。有意水準は0.005に設定した。
【結果】視線偏向は課題にかかわらずcontrol条件と比してleft条件で有意な左方偏向を認めた。一方,neutral課題とfear課題の間に有意差はみられなかった。同様に,左2つの標的に対する反応時間は課題に関わらずcontrol条件と比してleft条件で有意に短縮したが,条件に関わらずneutral条件とfear条件に有意差はみられなかった。
【結論】標的呈示を左に偏らすことで,刺激呈示前より視線が左に偏向し,左への反応が高まることが明らかになった。つまり,刺激呈示が多い空間に対して意図的なバイアスを生じさせ視線を偏向することが示された。一方,中立表情と恐怖表情の間には有意差を認めず,表情を用いた情動喚起刺激に効果がみられなかった。今後は空間的注意に関与するsaliency刺激を考慮し検討する必要がある。
【方法】健康な大学生30名(平均年齢21.21歳)を対象に,視線計測装置内蔵PCモニタに表示された水平方向で等間隔に配置された5つ標的を,自らの視線で追跡・注視する選択反応課題を行った。注視標的として顔画像(中性的な顔または恐怖を感じている顔)を0.3秒間提示し,呈示後1.5秒間安静状態を設けた。条件は,標的の呈示割合が全て20%のcontrol条件,呈示割合が左から40%,30%,10%,10%,10%としたleft条件の2条件に,標的が全て中性的な顔でneutral課題と右端および右から2番目の標的に恐怖を感じている顔を呈示するfear課題の2つの課題を組み込み,計4課題を50試行ずつ無作為に実施した。視線分析にはTobii TX300(Tobii Technology)を用い,視覚刺激提示プログラムはLabVIEW(National Instruments)を用いて作成した。刺激提示前(-100msec~0msec)の視線座標の平均値(視線偏向)と視線座標が各標的の座標と,重なるまでの時間(反応時間)を課題間で比較するためにFriedman検定を行い,bonferroni法にて補正した。有意水準は0.005に設定した。
【結果】視線偏向は課題にかかわらずcontrol条件と比してleft条件で有意な左方偏向を認めた。一方,neutral課題とfear課題の間に有意差はみられなかった。同様に,左2つの標的に対する反応時間は課題に関わらずcontrol条件と比してleft条件で有意に短縮したが,条件に関わらずneutral条件とfear条件に有意差はみられなかった。
【結論】標的呈示を左に偏らすことで,刺激呈示前より視線が左に偏向し,左への反応が高まることが明らかになった。つまり,刺激呈示が多い空間に対して意図的なバイアスを生じさせ視線を偏向することが示された。一方,中立表情と恐怖表情の間には有意差を認めず,表情を用いた情動喚起刺激に効果がみられなかった。今後は空間的注意に関与するsaliency刺激を考慮し検討する必要がある。