第52回日本理学療法学術大会

講演情報

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-09] ポスター(基礎)P09

2017年5月12日(金) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-09-2] 視覚フィードバック・負荷の有無が関節位置覚に及ぼす影響
―若年者と高齢者の比較―

竹林 秀晃1, 津野 沙也加2, 滝本 幸治1, 奥田 教宏1, 宮本 謙三1, 宅間 豊1, 井上 佳和1, 宮本 祥子1, 岡部 孝生1 (1.土佐リハビリテーションカレッジ理学療法学科, 2.愛仁会リハビリテション病院)

キーワード:関節位置覚, 視覚フィードバック, 加齢

【はじめに,目的】

ヒトの運動は,視覚等の感覚系,筋・腱・関節等の固有感覚系との協調により成り立ち,種々のフィードバック(Feedback:FB)情報により複雑な運動制御が行われている。関節位置覚の低下は,関節位置の誤認やバランス反応の遅延を生じさせ,転倒を引き起こす原因にもなり,視覚の有無や,視覚から得られた情報を基に運動を調節する能力の低下も重要な要因となる。そこで今回,視覚フィードバックに加えて重量負荷の要素も加味し,関節運動にどのように影響するかを,加齢の影響も含めて検討した。

【方法】

対象は,地域在住で日常生活に支障のない65歳以上の高齢者26名(73.7±5.7歳)と健常成人27名(21.1±0.4歳)とした。測定動作は,端座位にて90度から最大伸展位を100%とした60%角度を6秒保持,90度を6秒保持させる矩形波様の視標をHUMAC360(CSMi社製)を用いて,リアルタイムにPC画面上に呈示し,負荷無しと2kgの重錘負荷条件で自己の関節位置が表示される視覚フィードバック有りと無しの条件をそれぞれ5回,計10回連続で測定した。また,下肢の状態が見せえいようにボードを設置した。データは,運動課題の60%角度6秒保持のうち中央4秒間を分析区間とし,各FB条件5回のうち,適切に計測した3回分の平均値を分析対象とした。呈示した位置情報と自己位置情報の相対誤差と絶対誤差と変動係数を算出した。統計学的分析は,三元配置分散分析(FB×年齢×負荷)と多重比較(Bonferroni法)を用いた。

【結果】

結果,絶対誤差では,FBの要素において主効果が認められ,FB無しにおいて若年者・高齢者ともに有意に誤差が大きかった(p<0.01)。さらに,年齢×負荷の間に交互作用が認められ,若年者の負荷有りでは,負荷無しと比較して誤差が小さくなったが,高齢者では誤差が大きくなるという交差型パターンが認められた(p<0.05)。変動係数においては,高齢者のFB無しの負荷有りにおいて有意に高値を示した(p<0.01)。相対誤差は,特に高齢者のFB無しでより正の誤差が有意に大きくなった(p<0.01)。

【結論】

高齢者は視覚誘導性運動能力が低下している報告やFB無しでは,記憶の要素も要求されるため高齢者においてより誤差が大きくなると思われた。しかし,本研究の課題特性が,関節位置を目標位置で保持をする等尺性収縮での位置決め課題あったため,FB要素では絶対誤差に違いが認められなかったと思われる。一方,負荷の有無においては,高齢者では若年者とは異なり有利に働かない結果となった。特に高齢者のFB無しでは,変動係数が大きく,相対誤差がで正の誤差が大きいことは,高齢者の力量感覚は,筋紡錘由来のIa群線維活動の変容のため力が入りすぎoverestimateしてしまう報告(吉武2011)と一致している。こうした制御特性の知見を考慮し,関節運動の評価・トレーニングにおいて視覚フィードバックや負荷の有無による難易度を変化させることが必要である。