[P-KS-09-3] 下肢調整能力測定装置の開発
年代別の課題遂行時間と正確性
Keywords:下肢, 運動調整能力, 年代別データ
【はじめに,目的】
従来,下肢の調整能力は踵膝試験や片脚立位保持などにより評価されてきた。しかしそれらは定性的であることや体幹や頭部の機能を含んだ評価であり,下肢そのものの調整能力を十分反映していない可能性がある。そこで,我々は,下肢の調整能力を定量的に測定する目的で,PC画面上に描かれた目標軌跡(円・星)をマウスが内蔵された下肢装着デバイス(デバイス)でなぞり,その指標(運動時間〔MT〕および目標軌跡からの逸脱面積〔EA〕)を算出する下肢調整能力測定装置(装置)を作成した。これまで健常高齢者において,信頼性,妥当性および転倒との関連が示されている。本研究の目的は,本装置による指標の基礎データを作成するため年代別データを取り,指標が加齢を反映するかを検討することである。
【方法】
対象は日常生活が自立している133名(女性95名,男性38名)であった。対象を年代別に分けた(20歳代20名,40歳代6名,50歳代14名,60歳代6名,70歳代70名,80歳代17名)。下肢調整能力測定は椅子座位にて測定足にデバイスを取り付け,股関節90°,膝関節90°を開始姿勢とした。PCモニターに円・星コースのいずれかを写し,「早くかつ正確に」目標軌跡上をデバイスでポインタを動かすよう指示した。各コースには開始と終了場所が示され,運動時間(MT〔秒〕),と目標からの逸脱面積(EA〔pixels〕)を記録した。統計的分析は,年代間の比較についてANOVAを行い,多重比較を行った(有意水準は5%)。
【結果】
下肢調整能力指標の平均値±標準偏差は,円のMT(秒)は20歳代8.5±4.9,40歳代18.3±12.8,50歳代7.3±2.9,60歳代18.5±14.9,70歳代24.7±31.7,80歳代31.3±33.6であった。円のEA(pixels)は20歳代28893±14022,40歳代16260±9802,50歳代47132±33010,60歳代19454±18364,70歳代26296±25629,80歳代31549±58259であった。星のMT(秒)は20歳代15.3±6.2,40歳代32.2±20.8,50歳代13.4±5.8,60歳代28.3±16.7,70歳代34.0±29.5,80歳代68.8±86.9であった。星のEA±pixelsは20歳代24049±10236,40歳代13792±5606,50歳代36790±16675,60歳代13798±6469,70歳代21902±13426,80歳代32707±58663であった。円のMTにおいて,有意な主効果(F(5,127)=2.40,p=0.04)があり,年代間の多重比較で有意差はなかった。円のEAにおける有意な主効果はなかった。星のMTにおいて,有意な主効果(F(5,127)=4.59,p<0.01)があり,年代間の多重比較で80歳代が20歳代,50歳代,70歳代より有意に遅かった(すべてp<0.01)。星のEAに有意な主効果はなかった。
【結論】
課題遂行の正確性(EA)に年代間の差はなく,遂行速度に年代間の差があったことから,高齢になるに従い,若年者と同様の正確性を得るためにより時間を掛けることが示された。本装置による指標は加齢による下肢調整能力の低下を反映し得ることが示唆される。
従来,下肢の調整能力は踵膝試験や片脚立位保持などにより評価されてきた。しかしそれらは定性的であることや体幹や頭部の機能を含んだ評価であり,下肢そのものの調整能力を十分反映していない可能性がある。そこで,我々は,下肢の調整能力を定量的に測定する目的で,PC画面上に描かれた目標軌跡(円・星)をマウスが内蔵された下肢装着デバイス(デバイス)でなぞり,その指標(運動時間〔MT〕および目標軌跡からの逸脱面積〔EA〕)を算出する下肢調整能力測定装置(装置)を作成した。これまで健常高齢者において,信頼性,妥当性および転倒との関連が示されている。本研究の目的は,本装置による指標の基礎データを作成するため年代別データを取り,指標が加齢を反映するかを検討することである。
【方法】
対象は日常生活が自立している133名(女性95名,男性38名)であった。対象を年代別に分けた(20歳代20名,40歳代6名,50歳代14名,60歳代6名,70歳代70名,80歳代17名)。下肢調整能力測定は椅子座位にて測定足にデバイスを取り付け,股関節90°,膝関節90°を開始姿勢とした。PCモニターに円・星コースのいずれかを写し,「早くかつ正確に」目標軌跡上をデバイスでポインタを動かすよう指示した。各コースには開始と終了場所が示され,運動時間(MT〔秒〕),と目標からの逸脱面積(EA〔pixels〕)を記録した。統計的分析は,年代間の比較についてANOVAを行い,多重比較を行った(有意水準は5%)。
【結果】
下肢調整能力指標の平均値±標準偏差は,円のMT(秒)は20歳代8.5±4.9,40歳代18.3±12.8,50歳代7.3±2.9,60歳代18.5±14.9,70歳代24.7±31.7,80歳代31.3±33.6であった。円のEA(pixels)は20歳代28893±14022,40歳代16260±9802,50歳代47132±33010,60歳代19454±18364,70歳代26296±25629,80歳代31549±58259であった。星のMT(秒)は20歳代15.3±6.2,40歳代32.2±20.8,50歳代13.4±5.8,60歳代28.3±16.7,70歳代34.0±29.5,80歳代68.8±86.9であった。星のEA±pixelsは20歳代24049±10236,40歳代13792±5606,50歳代36790±16675,60歳代13798±6469,70歳代21902±13426,80歳代32707±58663であった。円のMTにおいて,有意な主効果(F(5,127)=2.40,p=0.04)があり,年代間の多重比較で有意差はなかった。円のEAにおける有意な主効果はなかった。星のMTにおいて,有意な主効果(F(5,127)=4.59,p<0.01)があり,年代間の多重比較で80歳代が20歳代,50歳代,70歳代より有意に遅かった(すべてp<0.01)。星のEAに有意な主効果はなかった。
【結論】
課題遂行の正確性(EA)に年代間の差はなく,遂行速度に年代間の差があったことから,高齢になるに従い,若年者と同様の正確性を得るためにより時間を掛けることが示された。本装置による指標は加齢による下肢調整能力の低下を反映し得ることが示唆される。