[P-KS-13-5] 侵害刺激に伴う中枢性感作に対する人工炭酸泉の介入効果に関する検討
Keywords:炭酸泉浴, 圧痛刺激, 中枢性感作
【はじめに,目的】
炭酸泉浴は,古くから鎮痛を目的に行われている慣習的な水治療法のひとつであり,含有成分である二酸化炭素(CO2)が皮膚を透過し,末梢組織に特異的作用を引き起こすことが知られている。しかしながら,炭酸泉浴の疼痛抑制効果については科学的根拠に乏しく,水温の違いが治療効果に与える影響についても不明である。そこで本研究では,水温の違いが人口炭酸泉浴の疼痛抑制効果に及ぼす影響を明らかとすることを目的に,侵害刺激に伴う中枢性感作に着目して比較検討を行った。
【方法】
健常大学生80名を対象に,左前腕を35℃の真水に浸漬する20名(不感温度対照群),35℃のCO2飽和水溶液に浸漬する20名(不感温度炭酸群),25℃の真水に浸漬する20名(冷浴対照群),35℃のCO2飽和水溶液に浸漬する20名(冷浴炭酸群)の4群に無作為に振り分けた。実験は安静10分,介入20分,回復10分の計40分とし,介入直前,介入中(10分経過),直後,10分後に評価を行った。評価は,実験中の快度を5段階のverbal rating scale(VRS)にて聴取するとともに,右側の僧帽筋,上腕二頭筋,大腿四頭筋に対して疼痛閾値の圧刺激を10回連続で加え,各回の圧痛強度をvisual analogue scale(VAS)にて測定し,得られたVAS値を基に中枢性感作の指標であるtemporal summation(TS)magとTS slopeを算出した。なお,統計学的解析には群内比較にFriedman検定とWilcoxonの符号付順位検定(Bonferroni修正),群間比較にKruskal-Wallis検定とMann-WhitneyのU検定を行い,有意水準を5%未満として比較検討した。
【結果】
快度は,不感温度炭酸群のみで介入中に有意な上昇を認めた。TS magは,不感温度炭酸群の僧帽筋で回復後,上腕二頭筋で介入中,大腿四頭筋で介入中と10分後,冷浴炭酸群の上腕二頭筋で介入中と直後および10分後,大腿四頭筋で介入中と直後および10分後に有意な低下を認めた。TS slopeは,不感温度炭酸群の上腕二頭筋で10分後,大腿四頭筋で介入中と10分後,冷浴炭酸群の上腕二頭筋で介入中と直後および10分後,大腿四頭筋で介入中と直後および10分後に有意な低下を認めた。一方,両対照群では,すべての測定部位においてTS magとTS slopeの有意な変化を認めなかった。また,冷浴炭酸泉群では,両対照群と比較して上腕二頭筋で10分後のTS magとTS slopeが有意に低値であった。
【結論】
本研究結果より,高濃度炭酸泉は中枢性感作を抑制し,全身的な疼痛抑制効果を得られることが明らかとなった。また,その結果は低い水温の方が即時的に得られる可能性が示唆された。この理由として,CO2飽和溶解度は水温に依存しており,水温が低いほどCO2濃度が高くなるため,冷浴の方がよりCO2による生理的反応が強く生じたことが考えられる。本研究の意義として,高濃度炭酸泉の疼痛抑制効果について明らかにしたとともに,疼痛管理における高濃度炭酸泉浴の導入根拠を示す基礎的資料になると考える。
炭酸泉浴は,古くから鎮痛を目的に行われている慣習的な水治療法のひとつであり,含有成分である二酸化炭素(CO2)が皮膚を透過し,末梢組織に特異的作用を引き起こすことが知られている。しかしながら,炭酸泉浴の疼痛抑制効果については科学的根拠に乏しく,水温の違いが治療効果に与える影響についても不明である。そこで本研究では,水温の違いが人口炭酸泉浴の疼痛抑制効果に及ぼす影響を明らかとすることを目的に,侵害刺激に伴う中枢性感作に着目して比較検討を行った。
【方法】
健常大学生80名を対象に,左前腕を35℃の真水に浸漬する20名(不感温度対照群),35℃のCO2飽和水溶液に浸漬する20名(不感温度炭酸群),25℃の真水に浸漬する20名(冷浴対照群),35℃のCO2飽和水溶液に浸漬する20名(冷浴炭酸群)の4群に無作為に振り分けた。実験は安静10分,介入20分,回復10分の計40分とし,介入直前,介入中(10分経過),直後,10分後に評価を行った。評価は,実験中の快度を5段階のverbal rating scale(VRS)にて聴取するとともに,右側の僧帽筋,上腕二頭筋,大腿四頭筋に対して疼痛閾値の圧刺激を10回連続で加え,各回の圧痛強度をvisual analogue scale(VAS)にて測定し,得られたVAS値を基に中枢性感作の指標であるtemporal summation(TS)magとTS slopeを算出した。なお,統計学的解析には群内比較にFriedman検定とWilcoxonの符号付順位検定(Bonferroni修正),群間比較にKruskal-Wallis検定とMann-WhitneyのU検定を行い,有意水準を5%未満として比較検討した。
【結果】
快度は,不感温度炭酸群のみで介入中に有意な上昇を認めた。TS magは,不感温度炭酸群の僧帽筋で回復後,上腕二頭筋で介入中,大腿四頭筋で介入中と10分後,冷浴炭酸群の上腕二頭筋で介入中と直後および10分後,大腿四頭筋で介入中と直後および10分後に有意な低下を認めた。TS slopeは,不感温度炭酸群の上腕二頭筋で10分後,大腿四頭筋で介入中と10分後,冷浴炭酸群の上腕二頭筋で介入中と直後および10分後,大腿四頭筋で介入中と直後および10分後に有意な低下を認めた。一方,両対照群では,すべての測定部位においてTS magとTS slopeの有意な変化を認めなかった。また,冷浴炭酸泉群では,両対照群と比較して上腕二頭筋で10分後のTS magとTS slopeが有意に低値であった。
【結論】
本研究結果より,高濃度炭酸泉は中枢性感作を抑制し,全身的な疼痛抑制効果を得られることが明らかとなった。また,その結果は低い水温の方が即時的に得られる可能性が示唆された。この理由として,CO2飽和溶解度は水温に依存しており,水温が低いほどCO2濃度が高くなるため,冷浴の方がよりCO2による生理的反応が強く生じたことが考えられる。本研究の意義として,高濃度炭酸泉の疼痛抑制効果について明らかにしたとともに,疼痛管理における高濃度炭酸泉浴の導入根拠を示す基礎的資料になると考える。