The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-13] ポスター(基礎)P13

Fri. May 12, 2017 12:50 PM - 1:50 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-13-4] 術後患者の炎症指標として超音波診断装置による血流評価を行った一症例

中道 博 (笠岡第一病院リハビリテーション科)

Keywords:超音波診断装置, パワードプラ法, 炎症

【はじめに,目的】

今回,人工膝関節全置換(以下,TKA)術後患者の炎症所見(熱感,腫脹,疼痛)と超音波診断装置のカラードプラ法による局所血流との比較検討を行ったので報告する。

【方法】

症例は70代女性,両変形性膝関節症あり,平成27年9月に右TKA施行されている。平成28年7月に左TKA施行され,同年8月リハビリ目的にて当院へ転院となった。身体評価として膝関節の関節可動域,MMTによる筋力,TUG-T,10m最大歩行速度,m-FIM,炎症評価として疼痛部位の体表温を継時的に測定し,最終評価日には周径とカラードプラ法による局所血流画像評価を行った。

【結果】

(術前~術後6週~術後11週)膝関節可動域屈曲/伸展:125°/0°~100°/-5°~115°/0°,膝伸展筋力(MMT):非実施~5レベル~5レベル,TUG―T(杖使用):25.8秒~17.4秒~13.8秒,10m最大歩行速度:非実施~17.4秒~10.2秒,m-FIM:84点~70点~85点であった。術後より膝蓋骨下縁より遠位3cmに安静時痛,運動時痛が持続していた。体表温は放射温度計にて膝蓋骨下縁より遠位3cmを測定し,術側35.0±0.4℃,非術側33.4±0.2℃であり,術側の体表温が有意に高値を示した(P<0.01)。周径は測定したすべての部位で術側の方が大きく,膝蓋骨中央では1.0cm,上縁では0.5cm,上縁3cmでは1.5cm,下縁では1.0cm,下縁3cmでは0.5cmの差を認めた。カラードプラ法による疼痛部位の局所血流画像では血流量増大の所見は認められなかった。

【結論】

機能障害や能力障害については良好な経過となったが,術後より術創部の遠位3cmに安静時・運動時痛が残存していた。炎症所見として周径による腫脹の評価を検討したが,非術側は既往にTKAを施行されており,術側も変形性膝関節症を呈している事より客観的指標とはなりにくいと考えた。そこで,熱感を炎症の指標として測定し,術側・非術側を比較し約1.6℃の違いが認められ,炎症を起こしているのではないかと仮定した。運動療法は疼痛増強を起こさないよう負荷に注意しながら実施した。最終評価時には体表温の差を炎症による局所血流量増加と予想し,カラードプラ法による評価を行ったが血流増加の所見は認めなかった。本症例の疼痛は炎症による痛みではなかった可能性が考えられ,触診による体表温を用いた炎症評価を行う事には注意が必要である。