[P-KS-15-5] 片脚ブリッジ運動が股関節周囲筋の柔軟性に与える効果
Keywords:ブリッジ運動, 股関節, 筋柔軟性
【はじめに,目的】
大殿筋は多くの筋と筋連結しており,ブリッジ運動による大殿筋収縮後に股関節周囲筋の柔軟性が即時的に改善することを経験する。しかし,ブリッジ運動における筋電図学的検討をした研究は散見されるが柔軟性についての報告は渉猟する限りみられない。本研究の目的はブリッジ運動が柔軟性に及ぼす効果を検証することである。
【方法】
対象は整形外科的疾患の既往のない健常成人男女17名(年齢30.1±7.5歳,身長168.2±8.0cm,体重60±9.4kg)であり,これを対照群(以下C群)8名と片脚ブリッジ群(以下SB群)9名に無作為に割り付けした。SB課題は,背臥位で利き足を支持脚として膝関節屈曲110°に固定,対側下肢は股関節・膝関節90°屈曲位とし,両上肢は腕の前で組み合わせ頭部を挙上させた状態で殿部を挙上させた。課題は7秒間保持を5セット実施し,セット間に5秒間の休息を挟んだ。筋短縮検査として利き足側のPopliteal Angle(以下PA),Thomas Test(以下TT),Ober Test(以下OT),Heel Buttock Distance(以下HBD)を同一検者が実施した。角度計測にはアカツキ製作所コンパクトデジタル水平器DI-100Mを使用し,設置位置はHBD・PAは脛骨前面中央部分,TTは大腿前面中央部分,OTは大腿外側面中央部分とし,角度は0.1°単位で3回計測した平均値を代表値とした。C群は安静前・安静5分後の,SB群は実施前・実施直後・5分後の角度を計測し,実施前と比較した変化量(実施直後以降の値と実施前との差)を算出した。統計処理は,各検査の再現性についてICC(1,1)を求め,SB群内の比較を反復測定による分散分析とDunnett法を用い,変化量の比較を一元配置分散分析とTukey法を用いて解析した。統計解析ソフトはSPSSを用い,有意水準は5%とした。
【結果】
ICC(1,1)はすべて0.9以上だった。SB群内の比較では,TT,OT,HBDにおいて介入直後および5分後の角度が有意に増加した。変化量はOT,HBDにおいて介入直後および5分後の角度変化が有意に増加した。
【結論】
SB実施後は腸腰筋,大腿筋膜張筋,大腿四頭筋の柔軟性が即時的に改善し5分間持続することが明らかになった。これらの筋が股関節屈曲作用を有することから,SBによる大殿筋収縮が相反抑制作用として拮抗筋の伸張性を向上させたと考える。またOT,HBDの変化量が有意に増加した理由として,大殿筋は上部繊維と腸脛靭帯,下部繊維と大腿四頭筋が連結し,収縮によりそれぞれ後上方,後内側上方へ牽引する作用があり,これにより受動的に筋腱移行部が伸張され柔軟性が向上した可能性がある。本研究よりSBは大腿筋膜張筋や大腿四頭筋の柔軟性改善を目的とした運動療法として応用できる可能性が示唆されたが,今後は超音波診断装置などを併用して検討する必要があると考える。
大殿筋は多くの筋と筋連結しており,ブリッジ運動による大殿筋収縮後に股関節周囲筋の柔軟性が即時的に改善することを経験する。しかし,ブリッジ運動における筋電図学的検討をした研究は散見されるが柔軟性についての報告は渉猟する限りみられない。本研究の目的はブリッジ運動が柔軟性に及ぼす効果を検証することである。
【方法】
対象は整形外科的疾患の既往のない健常成人男女17名(年齢30.1±7.5歳,身長168.2±8.0cm,体重60±9.4kg)であり,これを対照群(以下C群)8名と片脚ブリッジ群(以下SB群)9名に無作為に割り付けした。SB課題は,背臥位で利き足を支持脚として膝関節屈曲110°に固定,対側下肢は股関節・膝関節90°屈曲位とし,両上肢は腕の前で組み合わせ頭部を挙上させた状態で殿部を挙上させた。課題は7秒間保持を5セット実施し,セット間に5秒間の休息を挟んだ。筋短縮検査として利き足側のPopliteal Angle(以下PA),Thomas Test(以下TT),Ober Test(以下OT),Heel Buttock Distance(以下HBD)を同一検者が実施した。角度計測にはアカツキ製作所コンパクトデジタル水平器DI-100Mを使用し,設置位置はHBD・PAは脛骨前面中央部分,TTは大腿前面中央部分,OTは大腿外側面中央部分とし,角度は0.1°単位で3回計測した平均値を代表値とした。C群は安静前・安静5分後の,SB群は実施前・実施直後・5分後の角度を計測し,実施前と比較した変化量(実施直後以降の値と実施前との差)を算出した。統計処理は,各検査の再現性についてICC(1,1)を求め,SB群内の比較を反復測定による分散分析とDunnett法を用い,変化量の比較を一元配置分散分析とTukey法を用いて解析した。統計解析ソフトはSPSSを用い,有意水準は5%とした。
【結果】
ICC(1,1)はすべて0.9以上だった。SB群内の比較では,TT,OT,HBDにおいて介入直後および5分後の角度が有意に増加した。変化量はOT,HBDにおいて介入直後および5分後の角度変化が有意に増加した。
【結論】
SB実施後は腸腰筋,大腿筋膜張筋,大腿四頭筋の柔軟性が即時的に改善し5分間持続することが明らかになった。これらの筋が股関節屈曲作用を有することから,SBによる大殿筋収縮が相反抑制作用として拮抗筋の伸張性を向上させたと考える。またOT,HBDの変化量が有意に増加した理由として,大殿筋は上部繊維と腸脛靭帯,下部繊維と大腿四頭筋が連結し,収縮によりそれぞれ後上方,後内側上方へ牽引する作用があり,これにより受動的に筋腱移行部が伸張され柔軟性が向上した可能性がある。本研究よりSBは大腿筋膜張筋や大腿四頭筋の柔軟性改善を目的とした運動療法として応用できる可能性が示唆されたが,今後は超音波診断装置などを併用して検討する必要があると考える。