[P-KS-17-3] 軽度脚長差による歩行時の体幹・下肢への運動学,力学的影響
Keywords:軽度脚長差, 歩行, アライメント
【はじめに,目的】脚長差が3cm以内の場合,身体各部位の代償動作により歩行において外観的な異常を認めないという報告や,3cm以内の脚長差であっても歩行時の重心偏位や体幹・骨盤の過度の傾斜,跛行などが生じることを指摘する報告もあり,分析方法により見解が異なる。本研究では体幹・下肢の運動学,力学的因子に注目し,3cm以内の軽度な脚長差による歩行への影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】対象は健常成人女性21名(年齢21.6±0.8歳,体重52.1±7.2kg,身長159.5±5.5cm)である。運動学・力学データの測定には三次元動作解析装置(VICON MX)と同期させた床反力計4枚を用いた。課題動作は,脚長差0,1,2,3cmの4条件の歩行で,左下肢(以下,長脚側)の靴底全面に補高板を装着することで人工的な脚長差を作った。歩行速度は快適歩行速度とし,測定順序は0 cmを始めに以降はランダムな順で測定した。解析項目は,1歩行周期における前額面と矢状面上の膝関節・股関節・骨盤・体幹の関節角度,前後・左右・垂直方向の床反力,重心移動幅である。統計処理は各歩行パラメータに関して3試行の平均値を用いて4条件間で比較した。Shapiro-Wilk検定により正規性が認められた項目では反復測定分散分析及び多重比較検定を行った。正規分布しなかった場合はFriedman検定後にHolm法による多重比較検定を行った。有意水準は5%とした。
【結果】上下方向重心移動は0~3cmの各条件間で有意差があり(脚長差0cm:36.6mm,1cm:39.9mm,2cm:43.6mm,3cm:48.0mm)脚長差増大に伴い増加した。床反力は長脚側立脚期の前後方向床反力最大値(0cm:2.18N/kg,1cm:2.04N/kg,2cm:1.84N/kg,3cm:1.76N/kg)が脚長差増大に伴い有意に減少した。長脚側では立脚後期の膝関節伸展角度と遊脚初期の股関節外転角度が脚長差0cmと比較して,1cm以上の脚長差がある場合に有意な低下を示し,遊脚後期の股関節屈曲角度は1cm以上の脚長差がある場合に有意な増加を示した。短脚側では垂直方向床反力極小値が2cm以上の脚長差がある場合に有意に増加した。絶対空間における体幹側屈に脚長差の変化による有意差はなかったが,骨盤及び骨盤に対する体幹側屈角度は1cm以上の脚長差がある場合に短脚側傾斜が有意に増加した。
【結論】1cmの脚長差であっても膝関節伸展や股関節外転,骨盤側方傾斜角度などへの影響が生じることがわかった。これらの結果は上下方向の重心移動や歩行速度の変化の抑制に働き,より効率的な歩行を行うための代償作用と考えられる。また,軽度の脚長差によって見かけ上明らかな歩容の変化がみられなくとも,骨盤や下肢関節に非対称な動きをもたらし,重心移動や床反力のような運動力学的因子にも影響を与えることが示唆された。これらは長期間継続することで身体アライメント異常や関節変形を生じる可能性があるため,軽度の脚長差でも介入を検討する必要性がある。
【方法】対象は健常成人女性21名(年齢21.6±0.8歳,体重52.1±7.2kg,身長159.5±5.5cm)である。運動学・力学データの測定には三次元動作解析装置(VICON MX)と同期させた床反力計4枚を用いた。課題動作は,脚長差0,1,2,3cmの4条件の歩行で,左下肢(以下,長脚側)の靴底全面に補高板を装着することで人工的な脚長差を作った。歩行速度は快適歩行速度とし,測定順序は0 cmを始めに以降はランダムな順で測定した。解析項目は,1歩行周期における前額面と矢状面上の膝関節・股関節・骨盤・体幹の関節角度,前後・左右・垂直方向の床反力,重心移動幅である。統計処理は各歩行パラメータに関して3試行の平均値を用いて4条件間で比較した。Shapiro-Wilk検定により正規性が認められた項目では反復測定分散分析及び多重比較検定を行った。正規分布しなかった場合はFriedman検定後にHolm法による多重比較検定を行った。有意水準は5%とした。
【結果】上下方向重心移動は0~3cmの各条件間で有意差があり(脚長差0cm:36.6mm,1cm:39.9mm,2cm:43.6mm,3cm:48.0mm)脚長差増大に伴い増加した。床反力は長脚側立脚期の前後方向床反力最大値(0cm:2.18N/kg,1cm:2.04N/kg,2cm:1.84N/kg,3cm:1.76N/kg)が脚長差増大に伴い有意に減少した。長脚側では立脚後期の膝関節伸展角度と遊脚初期の股関節外転角度が脚長差0cmと比較して,1cm以上の脚長差がある場合に有意な低下を示し,遊脚後期の股関節屈曲角度は1cm以上の脚長差がある場合に有意な増加を示した。短脚側では垂直方向床反力極小値が2cm以上の脚長差がある場合に有意に増加した。絶対空間における体幹側屈に脚長差の変化による有意差はなかったが,骨盤及び骨盤に対する体幹側屈角度は1cm以上の脚長差がある場合に短脚側傾斜が有意に増加した。
【結論】1cmの脚長差であっても膝関節伸展や股関節外転,骨盤側方傾斜角度などへの影響が生じることがわかった。これらの結果は上下方向の重心移動や歩行速度の変化の抑制に働き,より効率的な歩行を行うための代償作用と考えられる。また,軽度の脚長差によって見かけ上明らかな歩容の変化がみられなくとも,骨盤や下肢関節に非対称な動きをもたらし,重心移動や床反力のような運動力学的因子にも影響を与えることが示唆された。これらは長期間継続することで身体アライメント異常や関節変形を生じる可能性があるため,軽度の脚長差でも介入を検討する必要性がある。