第52回日本理学療法学術大会

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-18] ポスター(基礎)P18

2017年5月12日(金) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-18-5] 3m timed“Up & Go”test施行中の高齢者と若年者の運動学的差異
―三次元動作解析装置を用いた検討―

岡田 智成1, 佐々木 賢太郎2, 木村 剛3, 浅野 慶祐4 (1.医療法人社団博友会金沢西病院, 2.金城大学大学院リハビリテーション学研究科, 3.金城大学社会福祉学部, 4.社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院)

キーワード:timed“Up & Go”test, 下肢アライメント, 運動器不安定症

【はじめに,目的】

運動器不安定症の機能評価基準の一つでもある3m timed“Up & Go”test(TUG)は機能的移動能力を評価する簡便なテストとして,特に高齢者を対象として広く用いられている。高齢女性と若年女性の至適速度におけるTUGを比較した結果によると,所要時間には両群に差は認められないことが報告されている。しかし,全体の所要時間としては両者に差はないものの,各運動要素(起立・往路・方向転換・復路・着座)には運動学的な差違があるものと考える。特に高齢者ではその身体特性から,立ち上がってから最初の一歩を出すまでに時間を要し,歩幅が小さいのではないかと考えた。本研究では,高齢者と若年者のTUG施行中の運動学的な差違について明らかにすることを目的とした。


【方法】



対象は,地域在住高齢女性7人(69.9±6.5歳,20.8±2.3 kg/m2)と健常女子大学生7人(20.0±1.0歳,22.3±0.9 kg/m2)とした。計測には3次元動作解析装置(VICON MX OxfordMetrics社製)を用い,対象者に反射マーカー16個を貼付した。TUGはPodsiadloらの方法に従い,至適速度にて2回実施し,所要時間をストップウォッチにて計測した。両群間の下肢長の差を考慮し,歩幅ではなく,矢状面上の股関節角度を採用した。計測区間を,①起立後の一歩目の踵離地時と踵接地時,②最初の一歩を出した肢の二歩目における踵離地時と踵接地時,③ ①②と同側肢の方向転換における踵離地時と踵接地時,④方向転換後の復路における同側肢の踵離地時と踵接地時,以上の4区間,8時点とし,両側の股関節角度を抽出した。これらの時点における股関節角度を2群間で比較,検討した。統計学的手法として,正規性を認める場合は対応のないt検定,正規性を認めない場合はMann-Whitney U検定を用いて5%水準にて有意判定を行った。


【結果】



至適速度のTUGでは,所要時間に差は認められなかった。若年群に比べ,高齢群では①踵離地時点の遊脚肢(p<0.0001)と立脚肢(p<0.0001),ならびに踵接地時点における遊脚肢(p<0.0001)と立脚肢(p<0.0001)の股関節屈曲角度が有意に小さかった。②踵離地時の支持脚における股関節屈曲角度が小さく(p<0.01),踵接地時の股関節伸展角度が大きい(p<0.01)結果となった。③④には両群間に有意な差は認められなかった。




【結論】



本結果より,両群にはTUG所要時間には差を認めないが,起立後の最初の一歩と同側肢の二歩目に運動学的な差違が認められた。若年者では最初の一歩の股関節屈曲角度が大きいことから,起立が完遂する前に骨盤前傾位のままで一歩目を踏み出していることが理解される。一方,高齢者では往路での直進歩行において立脚肢の股関節伸展角度が大きいことから,歩幅を大きくとろうとしていることが推察される。今後は被験者数を増やし,最大速度でのTUGについても検討していく。