The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

Presentation information

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-19] ポスター(基礎)P19

Fri. May 12, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-19-1] 運動イメージと末梢神経電気刺激併用の介入時間と皮質脊髄路の興奮性変化の検討

安井 崇人1, 山口 智史2,3, 田辺 茂雄4, 立本 将士1,4, 近藤 国嗣1, 大高 洋平1,2 (1.東京湾岸リハビリテーション病院, 2.慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室, 3.日本学術復興会海外特別研究員(コペンハーゲン大学), 4.藤田保健衛生大学医療科学部リハビリテーション学科)

Keywords:運動想起, 電気刺激療法, 経頭蓋磁気刺激法

【はじめに,目的】

脳卒中患者において,運動イメージと末梢神経電気刺激(電気刺激)の併用は,単独の介入よりも運動機能改善が促進されることが報告されており,理学療法における介入手段として有用な可能性がある(Hong, et al., 2012)。しかしながら,その介入条件については,十分に検討されていない。そこで本研究の目的は,健常者を対象に,運動イメージと電気刺激の併用において,介入時間が皮質脊髄路の興奮性変化に及ぼす影響について検討した。


【方法】

対象は,中枢神経系疾患及び整形外科系疾患の既往のない健常成人12名(女性5名,平均年齢25.2±1.9歳)とした。課題条件は(1)運動イメージのみ,(2)電気刺激のみ,(3)運動イメージと電気刺激の併用条件(併用条件)の3条件を,5日以上の間隔で実施した。運動イメージ課題では,ボールを右手で把握する動画(2秒把持,3秒開排)をモニタ上に提示し,動画に合わせて運動をイメージするように指示した。電気刺激は,右手関節前面に電極を貼付し,尺骨神経を刺激した。刺激周波数は10 Hzとし,パルス幅は1 msとした。刺激強度は,第一背側骨間筋(FDI)に収縮が生じる最小強度の0.9倍とし,2秒間通電し3秒間安静とした。併用条件では,提示動画の把握開始に合わせて,同様の電気刺激を通電した。皮質脊髄路の興奮性変化の指標として,経頭蓋磁気刺激法(TMS)による運動誘発電位(MEP)を評価した。TMSは,左一次運動野を刺激し,右FDIと小指外転筋(ADM)からMEPを記録した。TMSの刺激強度は,FDIにおいて0.5から1 mVのMEPが記録できる強度とし,介入前に強度を設定しその後は同じ強度で実施した。評価は介入前,介入5分後,介入10分後,介入15分後,介入20分後の合計5回行った。それぞれの時点で,15回分のMEPを測定した。データ解析は,MEPの最大振幅値の平均値を算出した。各条件内における時間的な変化の検討および各評価時点における条件間の比較を目的に一元配置分散分析を用いた。事後検定は多重比較検定(Bonferroni法)にて実施した。有意水準は5%とした。


【結果】

一元配置分散分析の結果,条件内の比較では,すべての条件で,有意な主効果を認めなかった(p>0.05)。一方で,条件間の比較では,介入後20分においてのみ,有意な主効果を認めた(F=3.87,P=0.031)。多重比較検定の結果,介入後20分の併用条件において,運動イメージ条件と比較し,有意にMEPの増大を認めた(p=0.035)。その他の評価時点では,条件間に有意差を認めなかった(p>0.05)。


【結論】

運動イメージと電気刺激を反復することで,運動イメージのみと比較し,介入20分後時点で,有意に大脳皮質興奮性の増大が認められた。一方で,本研究の設定では,条件内での時間的な興奮性変化を認めなかったことから,適切な条件での設定を検討していくことが必要である。