[P-KS-19-2] 運動観察干渉効果とミラーニューロンシステムとの関連性
脳波を用いた検討
Keywords:運動観察, ミラーニューロンシステム, 脳波
【はじめに,目的】自己と一致しない他者運動の観察は,実行中の自己運動に影響を及ぼすとされ,この影響を示す行動学的指標として運動観察干渉効果がある(Kilner, 2003)。この干渉効果は,他者運動の観察による自動模倣と自己運動が干渉し合うことで生じ,自動模倣の程度を示すとされている。この神経基盤にミラーニューロンシステム(Mirror Neuron System:MNS)が考えられているが,それを実証した研究は存在しない。そこで本研究では,この干渉効果がMNS活動を反映する行動学的指標となるか否かについて,干渉効果とその脳活動について脳波を用いて調査し,その関連性を検討した。
【方法】対象は右利き健常成人8名(平均年齢23.8±4.7歳)とした。被験者にはディスプレイ上の他者運動を観察しながら,Tablet PC上に垂直線を反復して描画することを求めた。観察条件は観察対象が上肢の垂直反復運動を行う一致条件,上肢の水平反復運動を行う不一致条件の2条件を設定した。手順は5分間の開眼安静後,2条件を各2試行ずつ実施し,その際の脳活動を脳波にて測定した。Tablet PC上に描いた運動軌跡のX座標の標準偏差をY座標の標準偏差で除し,100を掛けた値を干渉指数として算出した。なお,この干渉指数が大きくなるほど運動軌跡に歪みが生じていることを示す。また,不一致条件から一致条件の干渉指数を引いた値を干渉効果として算出した。脳波解析には,MNS活動との関連が示されているμ波の減衰効果(Muthukumaraswamy,2004)を採用した。計測はサンプリング周波数1024Hz,記録電極数を32ch(国際10-20法)とし,データに0.1-30Hz bandpass filter,average referenceを適用後,独立成分分析を用いてノイズ成分を除去し,高速フーリエ変換にて感覚運動野を示すC3領域におけるμ波帯域(8-13Hz)のパワー値を抽出した。そして,各条件のμ波平均パワー値を安静時のμ波平均パワー値で除し,そのLog値をμ波の変化量とした。なお,この比が負の値となれば安静時と比較し各条件時にμ波が減衰したことを意味する。また,不一致条件から一致条件のμ波の変化量を引いた値をμ波の変化量の差とした。統計学的検討として,干渉指数とμ波の変化量の条件間比較,干渉効果とμ波の変化量の差の相関分析を実施した。有意水準は5%とした。
【結果】干渉指数は,一致条件と比較して不一致条件で有意な増加(p<0.05)を認めた。μ波は,不一致条件と比較して一致条件で減衰効果が強い傾向(p=0.25)を示した。相関分析では,干渉効果とμ波の変化量の差に有意な負の相関関係(r=-0.83,p<0.05)を認めた。
【結論】本研究より,干渉効果が大きいほど両条件でのμ波の変化量の差が小さくなり,両条件で同程度のμ波の減衰効果が生じることが示された。したがって,干渉効果が大きいほど,両条件ともにMNS活動が増加していることを示し,今回用いた干渉効果がMNS活動の行動学的指標となり得ることが明らかとなった。
【方法】対象は右利き健常成人8名(平均年齢23.8±4.7歳)とした。被験者にはディスプレイ上の他者運動を観察しながら,Tablet PC上に垂直線を反復して描画することを求めた。観察条件は観察対象が上肢の垂直反復運動を行う一致条件,上肢の水平反復運動を行う不一致条件の2条件を設定した。手順は5分間の開眼安静後,2条件を各2試行ずつ実施し,その際の脳活動を脳波にて測定した。Tablet PC上に描いた運動軌跡のX座標の標準偏差をY座標の標準偏差で除し,100を掛けた値を干渉指数として算出した。なお,この干渉指数が大きくなるほど運動軌跡に歪みが生じていることを示す。また,不一致条件から一致条件の干渉指数を引いた値を干渉効果として算出した。脳波解析には,MNS活動との関連が示されているμ波の減衰効果(Muthukumaraswamy,2004)を採用した。計測はサンプリング周波数1024Hz,記録電極数を32ch(国際10-20法)とし,データに0.1-30Hz bandpass filter,average referenceを適用後,独立成分分析を用いてノイズ成分を除去し,高速フーリエ変換にて感覚運動野を示すC3領域におけるμ波帯域(8-13Hz)のパワー値を抽出した。そして,各条件のμ波平均パワー値を安静時のμ波平均パワー値で除し,そのLog値をμ波の変化量とした。なお,この比が負の値となれば安静時と比較し各条件時にμ波が減衰したことを意味する。また,不一致条件から一致条件のμ波の変化量を引いた値をμ波の変化量の差とした。統計学的検討として,干渉指数とμ波の変化量の条件間比較,干渉効果とμ波の変化量の差の相関分析を実施した。有意水準は5%とした。
【結果】干渉指数は,一致条件と比較して不一致条件で有意な増加(p<0.05)を認めた。μ波は,不一致条件と比較して一致条件で減衰効果が強い傾向(p=0.25)を示した。相関分析では,干渉効果とμ波の変化量の差に有意な負の相関関係(r=-0.83,p<0.05)を認めた。
【結論】本研究より,干渉効果が大きいほど両条件でのμ波の変化量の差が小さくなり,両条件で同程度のμ波の減衰効果が生じることが示された。したがって,干渉効果が大きいほど,両条件ともにMNS活動が増加していることを示し,今回用いた干渉効果がMNS活動の行動学的指標となり得ることが明らかとなった。