[P-KS-20-3] 健常高齢者における立位の主観的安定度と立位バランスの評価との関連
Keywords:主観的安定度, 立位バランス, 評価
【はじめに,目的】
理学療法における立位バランスの評価は重心動揺検査やTimed up and go test(TUG)などパフォーマンスによる客観的な指標と転倒自己効力感やmodified Gait Efficacy Scale(mGES)などのセルフレポートによる主観的な指標,また,自身の安定度を主観的に捉える主観的安定度がある。パフォーマンスを遂行した際の客観的な指標と主観的な安定度の一致または不一致を評価することは,転倒リスクの把握や理学療法プログラムを決定していくうえで重要である。しかしながら,主観的安定度の理学療法に資する検討は十分にされていない。健常高齢者の主観的安定度に関連する要因を知ることは臨床での推論を行ううえで有用な知見となると考える。本研究は,健常高齢者における立位の主観的安定度と立位バランスの評価との関連について検討することである。
【方法】
参加者は日常生活が自立している健常高齢者89名(平均年齢76.1±5.0歳)とした。参加者に対して重心動揺検査,TUGおよび日本語版mGESを測定した。重心動揺測定は,重心動揺計(アニマ社製)上に閉脚立位をとり,開眼および閉眼の2条件で30秒間測定した。条件別に総軌跡長と外周面積を算出した。立位の主観的安定度の評価方法について,開眼と閉眼の重心動揺検査の計測を終了した直後の参加者に対して,「0:実行不能~10:完全に安定」の11段階で構成された主観的安定度評価尺度(望月2009)を評価するよう求めた。統計解析として,立位の主観的安定度と立位バランスの評価との関連をSpearmanの順位相関係数を用い検討した。なお,主観的安定度と重心動揺は開眼と閉眼条件を対応させた。有意水準はすべて5%とした。
【結果】
各評価の測定値について,主観的安定度の中央値(範囲)は開眼5(3-10),閉眼5(2-10)であった。重心動揺値は総軌跡長が開眼52.2±18.4cm,閉眼73.9±28.9cm,外周面積が開眼2.9±1.3cm2,閉眼4.0±2.3cm2であった。TUGは7.1±1.6秒,mGESは76.8±19.3点であった。主観的安定度の開眼は,総軌跡長の開眼(rs=-0.26,p=0.01),mGES(rs=0.41,p<0.01)との間に有意な相関関係を認めた。主観的安定度の閉眼は,軌跡長の閉眼(rs=-0.23,p=0.02),外周面積の閉眼(rs=-0.20,p=0.04),mGES(rs=0.32,p<0.01)との間に有意な相関関係を認めた。
【結論】
立位の主観的安定度と重心動揺との間に有意な相関関係が認められ,Schieppati(1999)らが示した主観的安定度と重心動揺との関連を支持する。また,心理状態を反映するmGESとの有意な相関関係が認められたことから,立位の主観的安定度は心理面からの影響も受けていると考えられる。以上のことから,従来の立位のバランス評価に主観的安定度の評価を加えることで,より多角的な評価を実施できる可能性が考えられる。今後,理学療法への有用性を確認するため,転倒との関連やバランスの改善との関連について検討すべきである。
理学療法における立位バランスの評価は重心動揺検査やTimed up and go test(TUG)などパフォーマンスによる客観的な指標と転倒自己効力感やmodified Gait Efficacy Scale(mGES)などのセルフレポートによる主観的な指標,また,自身の安定度を主観的に捉える主観的安定度がある。パフォーマンスを遂行した際の客観的な指標と主観的な安定度の一致または不一致を評価することは,転倒リスクの把握や理学療法プログラムを決定していくうえで重要である。しかしながら,主観的安定度の理学療法に資する検討は十分にされていない。健常高齢者の主観的安定度に関連する要因を知ることは臨床での推論を行ううえで有用な知見となると考える。本研究は,健常高齢者における立位の主観的安定度と立位バランスの評価との関連について検討することである。
【方法】
参加者は日常生活が自立している健常高齢者89名(平均年齢76.1±5.0歳)とした。参加者に対して重心動揺検査,TUGおよび日本語版mGESを測定した。重心動揺測定は,重心動揺計(アニマ社製)上に閉脚立位をとり,開眼および閉眼の2条件で30秒間測定した。条件別に総軌跡長と外周面積を算出した。立位の主観的安定度の評価方法について,開眼と閉眼の重心動揺検査の計測を終了した直後の参加者に対して,「0:実行不能~10:完全に安定」の11段階で構成された主観的安定度評価尺度(望月2009)を評価するよう求めた。統計解析として,立位の主観的安定度と立位バランスの評価との関連をSpearmanの順位相関係数を用い検討した。なお,主観的安定度と重心動揺は開眼と閉眼条件を対応させた。有意水準はすべて5%とした。
【結果】
各評価の測定値について,主観的安定度の中央値(範囲)は開眼5(3-10),閉眼5(2-10)であった。重心動揺値は総軌跡長が開眼52.2±18.4cm,閉眼73.9±28.9cm,外周面積が開眼2.9±1.3cm2,閉眼4.0±2.3cm2であった。TUGは7.1±1.6秒,mGESは76.8±19.3点であった。主観的安定度の開眼は,総軌跡長の開眼(rs=-0.26,p=0.01),mGES(rs=0.41,p<0.01)との間に有意な相関関係を認めた。主観的安定度の閉眼は,軌跡長の閉眼(rs=-0.23,p=0.02),外周面積の閉眼(rs=-0.20,p=0.04),mGES(rs=0.32,p<0.01)との間に有意な相関関係を認めた。
【結論】
立位の主観的安定度と重心動揺との間に有意な相関関係が認められ,Schieppati(1999)らが示した主観的安定度と重心動揺との関連を支持する。また,心理状態を反映するmGESとの有意な相関関係が認められたことから,立位の主観的安定度は心理面からの影響も受けていると考えられる。以上のことから,従来の立位のバランス評価に主観的安定度の評価を加えることで,より多角的な評価を実施できる可能性が考えられる。今後,理学療法への有用性を確認するため,転倒との関連やバランスの改善との関連について検討すべきである。