The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-25] ポスター(基礎)P25

Sat. May 13, 2017 12:50 PM - 1:50 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-25-4] 非対称歩行時の左右下肢における蹴り出しの変化と交互性の検討
Split-belt treadmillの理学療法応用

平田 恵介1, 国分 貴徳2, 宮澤 拓1, 一寸木 洋平3, 園尾 萌香4, 久保田 圭祐1, 金村 尚彦2 (1.埼玉県立大学大学院保健医療福祉学研究科リハビリテーション学専修博士前期課程, 2.埼玉県立大学保健医療福祉学部, 3.国立障害者リハビリテーションセンター研究所, 4.医療法人名圭会白岡整形外科リハビリテーション科)

Keywords:歩行, 下肢COM, Split-belt treadmill

【はじめに,目的】

下肢は歩行時に左右交互に駆動するため逆位相関係にある。これが左右のベルトが異なる速度のトレッドミル歩行(Split-belt)では,肢体運動のキネマティクスに左右差を生じるものの,そうした非対称歩行に適応し,逆位相が定常歩行よりも高まることが先行研究により明らかになっている。しかし大腿仰角や足部マーカー座標といった単セグメントの動きに影響され易いパラメータを用いている上,具体的に左右差を生じる運動学データに関して言及されていない。そこで本研究では,肢体の総合的な位置を反映する質量中心(COM)をパラメータとして用い,非対称歩行適応時に変化する下肢の前後振幅と逆位相性をSplit-beltで検証した。本研究目的は変形性関節症や慢性期片麻痺の様に,歩行時に肢体のキネマティクスに左右差を呈する患者に対するSplit-belt treadmillによる治療指針確立の基礎データを得ることである。


【方法】

対象は健常成人10名。Split-belt実験はダブルベルトトレッドミル(Bertec)を用い,0.9m/sの対称歩行1分,続いて一時的に片側が1.8m/sの非対称歩行3分,その後再び対称歩行2分の計6分間行った(左右2条件×各3試行)。計測は三次元動作解析装置(赤外線カメラ17台,VICON,100Hz)で剛体リンクモデルPlug In Gait Full Body AI Modelを用い,反射マーカーの三次元座標を記録し,体重比からCOMを算出した。データは①対称歩行,②非対称化直後,③非対称歩行適応後,④再対称化直後,⑤終了前の全5相,各相5歩分を採用した。解析は下肢COMの振幅・踵接地時の位置・最後方値,片脚支持時間,両脚支持時間の左右差を抽出し,被験者ごとに対応のあるt検定を行った。また下肢COM,大腿仰角,踝マーカーの振幅を取得し,左右間での相互相関係数を求め,COMでの結果との有意差を検証した(有意水準0.01)。


【結果】

COM振幅,最後方値は遅側に比べ速側が大きく,片脚支持時間は遅側に比べ速側が短くなる左右差を示し,③非対称歩行と①対称歩行で有意差を認めた。踵接地時の位置と両脚支持時間に左右差,有意差はなかった。また,③非対称歩行適応後において,下肢COMの変動は左右間で-0.97~-0.99と高い負の相関を示し,逆位相性が亢進していた。これは同様の条件で大腿仰角,踝マーカーで逆位相が高まると述べた先行研究結果と比較しても,高い相関係数であった。


【結論】

上記結果から非対称歩行時でも下肢COMの踵接地時位置と,両脚支持時間を左右対称にしており,これには速側下肢の蹴り出し延長が関与していた。また下肢逆位相性の左右比較において,下肢COMデータで高い相関係数が示されたことは,蹴り出し延長の対応に高次な力学的対応が行われている可能性が示唆された。これらの事実は,不可変なキネマティクスや蹴り出し不全を呈する歩行の改善を目的とした患者の歩行機能改善に対し,Split-belt treadmillによる非対称性歩行適応の論理的背景確立に貢献するものである。