The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

Presentation information

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-28] ポスター(基礎)P28

Sat. May 13, 2017 12:50 PM - 1:50 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-28-3] 足関節不動モデルラットにおける筋痛の発生メカニズムの検討―神経成長因子と末梢神経の経時変化に着目して―

大賀 智史1,2, 濵上 陽平2,3, 片岡 英樹2,4, 坂本 淳哉5, 中野 治郎5, 沖田 実2 (1.社会福祉法人済生会長崎病院リハビリテーション部, 2.長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻リハビリテーション科学講座運動障害リハビリテーション学分野, 3.社会福祉法人十善会十善会病院リハビリテーション科, 4.社会医療法人長崎記念病院リハビリテーション部, 5.長崎大学大学院医歯薬学総合研究科保健学専攻理学・作業療法学講座理学療法学分野)

Keywords:不動, 筋痛, 神経成長因子

【はじめに,目的】

近年,四肢の一部を不動化するだけで痛みが発生することが明らかになっており,廃用に伴う新たな運動器の機能障害として注目されている。そして,自験例の先行研究では不動に伴う痛みは深部組織である骨格筋にも発生することが明らかになっている。具体的には,ラット足関節を不動化すると腓腹筋外側頭における筋圧痛覚閾値が不動2週後から低下し始め,不動4週後においては痛みの内因性メディエーターである神経成長因子(nerve growth factor;NGF)の発現増加が同筋で認められている(大賀智史・他,日本運動器疼痛学会誌6:107-13, 2014)。しかし,NGFの経時変化についてはこれまで検討できておらず,課題となっていた。一方,不動に伴う表在性の痛みの発生メカニズムには皮膚におけるNGFの発現増加と末梢神経密度の増加が関与するといわれている。つまり,われわれは不動に伴う筋痛の発生メカニズムにはNGFの発現増加に加え,末梢神経密度の増加も関与していると仮説している。そこで,今回,足関節不動モデルラットの腓腹筋外側頭におけるNGF含有量ならびに末梢神経密度の経時変化を検索し,筋圧痛覚閾値の変化との関連について検討した。

【方法】

実験動物には8週齢のWistar系雄性ラット20匹を用い,右足関節を最大底屈位にてギプスで2週間もしくは4週間不動化する不動群(各5匹)と週齢を合致させるために10,12週齢時まで通常飼育する対照群(各5匹)に振り分けた。各不動期間終了後は麻酔下にて腓腹筋外側頭を採取し,その一部は生化学的解析に供し,ELISA法にてNGF含有量を定量化した。また,一部は免疫組織化学的解析に供し,有髄A線維のマーカーであるNeurofilament 200(NF200)ならびに無髄C線維のマーカーであるPeripherinに対する蛍光免疫染色を実施した。そして,切片上の全視野における各陽性線維ならびに筋線維の総数を計測し,筋線維1000本当たりのA線維ならびにC線維の密度を算出した。

【結果】

NGF含有量は不動2,4週後のいずれとも不動群は対照群より有意に高値を示した。一方,A線維の密度は不動2,4週後のいずれとも不動群と対照群に有意差は認められなかったが,C線維の密度は不動2,4週後のいずれとも不動群は対照群より有意に高値を示した。

【結論】

今回の実験モデルにおける検索結果では,2週間の不動によって腓腹筋外側頭にはNGFの発現増加とC線維の密度の増加が認められた。そして,これらの変化は先に報告した筋圧痛覚閾値の低下が生じ始める時期と一致していた。先行研究では,NGFが末梢神経に作用すると種々の侵害受容器の閾値が低下するだけでなく,神経線維の側枝発芽を促進すると報告されている。また,組織の末梢神経密度が増加すると痛覚閾値が低下することも報告されている。以上のことから,不動に伴う筋痛の発生メカニズムには,骨格筋におけるNGFの発現増加ならびにC線維の密度の増加が関与している可能性が高いといえよう。