[P-KS-31-1] 運動イメージおよび運動観察条件の差異が成人健常者の運動学習に及ぼす影響について
Keywords:運動イメージ, 運動観察, 運動学習
【はじめに,目的】
運動学習では運動イメージが学習効果に有効と報告されている。一方,運動イメージの鮮明性によって学習効果に個人差があると報告されている。また,運動イメージを補助するために運動観察が利用されているが,観察条件の差異によって運動イメージを想起する難易度が異なり,学習効果に影響をもたらす可能性が考えられる。本研究の目的では運動イメージ能力を評価し,その能力が学習効果に及ぼす影響を検討することと,運動観察の条件の差異が学習効果に及ぼす影響を検証することである。
【方法】
成人健常者45名(年齢21.0±0.7歳)を対象とした。運動イメージ能力としてメンタルローテーション(MR)課題を評価した。MR課題では左右の手背,手掌が各々時計回りに0°,90°,180°,270°回転してある写真を16枚使用した。ランダムに提示後,正確に素早く左右どちらかを回答してもらい,各対象者の平均反応時間を算出した。
学習課題として不安定板(DIJOCボード,酒井医療)上での立位課題とした。対象者に不安定板の両端が床につかないように提示した。学習効果判定のため,不安定板に内蔵された加速度計により安定指数を算出した。課題試行前(試行前),課題試行10分後(10分後),課題試行1日後(1日後)に評価した。各期間の学習変化率として10分後・1日後を試行前の値で除した値を算出した(10分後変化率・1日後変化率)。
課題は身体練習と運動イメージを行う群(運動イメージ群),身体練習と腹側の運動観察を行う群(腹側観察群),身体練習と背側の運動観察を行う群(背側観察群)の3群に分け,各群15名ずつとした。運動イメージは身体練習後に筋感覚的イメージを提示した。運動観察は身体練習時の腹側・背側から撮影し,身体練習後に運動観察を行った。身体練習を20秒間,運動イメージおよび運動観察は2分間行い,各5回施行した。
統計学的解析はMR課題平均反応時間と各期間の学習変化率の関係をみるため,Spearmanの順位相関分析を用いた。各群の学習効果を検討するため,二元配置分散分析・多重比較(Tukey法)を用いた。全ての検定における有意水準は5%未満とした。解析はSPSS(IBM社)を使用した。
【結果】
運動イメージ能力の指標であるMR課題平均反応時間と各期間の学習変化率の関係では,平均反応時間と1日後変化率にて正の相関を認め(r=0.38,p<0.05),運動イメージ能力が高いほど,有意に学習効果は高くなった。運動観察条件の差異が学習効果に及ぼす影響の検討では,3群ともに施行前と10分後・1日後のみに有意に立位バランスが改善したが(p<0.01),各群間の交互作用はなく,運動観察の差異による学習効果の影響はなかった。
【結論】
成人健常者では運動イメージ能力が高いほど学習効果が高くなると推察できる。一方,運動観察条件の差異では学習効果に影響を与えることはなかった。今後は高齢者や脳卒中患者などの運動イメージ能力が低下している患者で検証していく。
運動学習では運動イメージが学習効果に有効と報告されている。一方,運動イメージの鮮明性によって学習効果に個人差があると報告されている。また,運動イメージを補助するために運動観察が利用されているが,観察条件の差異によって運動イメージを想起する難易度が異なり,学習効果に影響をもたらす可能性が考えられる。本研究の目的では運動イメージ能力を評価し,その能力が学習効果に及ぼす影響を検討することと,運動観察の条件の差異が学習効果に及ぼす影響を検証することである。
【方法】
成人健常者45名(年齢21.0±0.7歳)を対象とした。運動イメージ能力としてメンタルローテーション(MR)課題を評価した。MR課題では左右の手背,手掌が各々時計回りに0°,90°,180°,270°回転してある写真を16枚使用した。ランダムに提示後,正確に素早く左右どちらかを回答してもらい,各対象者の平均反応時間を算出した。
学習課題として不安定板(DIJOCボード,酒井医療)上での立位課題とした。対象者に不安定板の両端が床につかないように提示した。学習効果判定のため,不安定板に内蔵された加速度計により安定指数を算出した。課題試行前(試行前),課題試行10分後(10分後),課題試行1日後(1日後)に評価した。各期間の学習変化率として10分後・1日後を試行前の値で除した値を算出した(10分後変化率・1日後変化率)。
課題は身体練習と運動イメージを行う群(運動イメージ群),身体練習と腹側の運動観察を行う群(腹側観察群),身体練習と背側の運動観察を行う群(背側観察群)の3群に分け,各群15名ずつとした。運動イメージは身体練習後に筋感覚的イメージを提示した。運動観察は身体練習時の腹側・背側から撮影し,身体練習後に運動観察を行った。身体練習を20秒間,運動イメージおよび運動観察は2分間行い,各5回施行した。
統計学的解析はMR課題平均反応時間と各期間の学習変化率の関係をみるため,Spearmanの順位相関分析を用いた。各群の学習効果を検討するため,二元配置分散分析・多重比較(Tukey法)を用いた。全ての検定における有意水準は5%未満とした。解析はSPSS(IBM社)を使用した。
【結果】
運動イメージ能力の指標であるMR課題平均反応時間と各期間の学習変化率の関係では,平均反応時間と1日後変化率にて正の相関を認め(r=0.38,p<0.05),運動イメージ能力が高いほど,有意に学習効果は高くなった。運動観察条件の差異が学習効果に及ぼす影響の検討では,3群ともに施行前と10分後・1日後のみに有意に立位バランスが改善したが(p<0.01),各群間の交互作用はなく,運動観察の差異による学習効果の影響はなかった。
【結論】
成人健常者では運動イメージ能力が高いほど学習効果が高くなると推察できる。一方,運動観察条件の差異では学習効果に影響を与えることはなかった。今後は高齢者や脳卒中患者などの運動イメージ能力が低下している患者で検証していく。