[P-KS-31-3] 30%MVCの母指対立運動の運動イメージの反復が脊髄神経機能の興奮性と運動の正確性に及ぼす影響
Keywords:運動イメージ, F波, 運動の正確性
【はじめに,目的】
我々は先行研究にて30%MVCの母指対立運動の運動イメージは脊髄神経機能の興奮性を増加させるが,運動の正確性に影響を及ぼさなかったと報告した。運動イメージによる正確性の向上は随意的に手指を動かすことのできない患者に対して書字動作やつまみ動作などの巧緻運動の向上に繋がると考える。今回は30%MVCの母指対立運動の運動イメージを3試行行うことで脊髄神経機能の興奮性に及ぼす影響と運動の正確性に及ぼす影響を検討した。
【方法】
対象は健常成人20名(男性:11名,女性:9名,年齢:23±2.4歳)とした。まず,安瀬背臥位にてViking Quest(Natus社)を用いて,正中神経刺激によりF波を母指球の筋腹上より導出した(安静時試行)。刺激条件は頻度:0.5Hz,時間:0.2ms,強度:M波最大上刺激,回数:30回とした。次に母指対立位にて母指と示指に圧力センサーを接触させてF波を計測した(センサー把持試行)。その後,最大ピンチ力から30%MVCのピンチ力を同定し,ピンチメータモニターを注視しながら10秒間30%MVCの母指対立運動(以下,ピンチ課題)を練習させ,その後モニターを隠してピンチ課題を再現させる(運動イメージ前ピンチ課題試行)。次に30%MVCの母指対立運動の運動イメージを行わせ,F波を計測する(運動イメージ試行①)。その後,再度ピンチ課題を再現させた(ピンチ課題試行①)。今回,運動イメージ試行とピンチ課題試行を3試行繰り返し計測した(2回目を②と表記)。運動の正確性にはDigital indicator F340A(Unipulse社)と筋電図収録ソフトVital Recorder2(KISSEI COMTEC社)を用いてピンチ力値を記録し,解析にはBIMUTAS-Video(KISSEI COOMTEC社)を使用して正解時間と変動係数を算出した。正解時間は30%MVC±5%以内のピンチ力値の正解範囲の時間とした。統計学的検討は各試行間の振幅F/M比,立ち上がり潜時,出現頻度と正解時間,変動係数をBonferroni検定を用いて比較し,その後Scheffe検定を用いて検討した。
【結果】
振幅F/M比,立ち上がり潜時は各試行間に有意差を認めなかった。出現頻度は安静時試行と比較してセンサー把持試行,運動イメージ試行①,②,③に有意な増加を認めた(p<0.01)。またセンサー把持試行と比較して運動イメージ試行①,②(p<0.05),③(p<0.01)に有意な増加を認めた。
正解時間は運動イメージ前と比較してピンチ課題①(p<0.01),②(p<0.05),③(p<0.01)に有意な減少を認めた。また各試行間での変動係数は有意差を認めなかった。
【結論】
運動イメージにより脊髄神経機能の興奮性を増加させることが示唆されたが,運動の正確性は低下した。はじめから間違った運動イメージを行っている被験者や学習した運動イメージがピンチ課題を繰り返すことで運動イメージの内容が変化している要因が考えられる。そのためイメージの内容を安定させるための学習方法が重要性であると考える。
我々は先行研究にて30%MVCの母指対立運動の運動イメージは脊髄神経機能の興奮性を増加させるが,運動の正確性に影響を及ぼさなかったと報告した。運動イメージによる正確性の向上は随意的に手指を動かすことのできない患者に対して書字動作やつまみ動作などの巧緻運動の向上に繋がると考える。今回は30%MVCの母指対立運動の運動イメージを3試行行うことで脊髄神経機能の興奮性に及ぼす影響と運動の正確性に及ぼす影響を検討した。
【方法】
対象は健常成人20名(男性:11名,女性:9名,年齢:23±2.4歳)とした。まず,安瀬背臥位にてViking Quest(Natus社)を用いて,正中神経刺激によりF波を母指球の筋腹上より導出した(安静時試行)。刺激条件は頻度:0.5Hz,時間:0.2ms,強度:M波最大上刺激,回数:30回とした。次に母指対立位にて母指と示指に圧力センサーを接触させてF波を計測した(センサー把持試行)。その後,最大ピンチ力から30%MVCのピンチ力を同定し,ピンチメータモニターを注視しながら10秒間30%MVCの母指対立運動(以下,ピンチ課題)を練習させ,その後モニターを隠してピンチ課題を再現させる(運動イメージ前ピンチ課題試行)。次に30%MVCの母指対立運動の運動イメージを行わせ,F波を計測する(運動イメージ試行①)。その後,再度ピンチ課題を再現させた(ピンチ課題試行①)。今回,運動イメージ試行とピンチ課題試行を3試行繰り返し計測した(2回目を②と表記)。運動の正確性にはDigital indicator F340A(Unipulse社)と筋電図収録ソフトVital Recorder2(KISSEI COMTEC社)を用いてピンチ力値を記録し,解析にはBIMUTAS-Video(KISSEI COOMTEC社)を使用して正解時間と変動係数を算出した。正解時間は30%MVC±5%以内のピンチ力値の正解範囲の時間とした。統計学的検討は各試行間の振幅F/M比,立ち上がり潜時,出現頻度と正解時間,変動係数をBonferroni検定を用いて比較し,その後Scheffe検定を用いて検討した。
【結果】
振幅F/M比,立ち上がり潜時は各試行間に有意差を認めなかった。出現頻度は安静時試行と比較してセンサー把持試行,運動イメージ試行①,②,③に有意な増加を認めた(p<0.01)。またセンサー把持試行と比較して運動イメージ試行①,②(p<0.05),③(p<0.01)に有意な増加を認めた。
正解時間は運動イメージ前と比較してピンチ課題①(p<0.01),②(p<0.05),③(p<0.01)に有意な減少を認めた。また各試行間での変動係数は有意差を認めなかった。
【結論】
運動イメージにより脊髄神経機能の興奮性を増加させることが示唆されたが,運動の正確性は低下した。はじめから間違った運動イメージを行っている被験者や学習した運動イメージがピンチ課題を繰り返すことで運動イメージの内容が変化している要因が考えられる。そのためイメージの内容を安定させるための学習方法が重要性であると考える。