[P-KS-32-4] 脳卒中後片麻痺者において運動課題の違いが運動単位の調節に与える影響
Keywords:運動単位, 片麻痺, 筋出力調節
【はじめに,目的】
脳卒中後に生じる筋力低下は臨床的に重要な問題であるとされており,その原因として運動単位動員数の減少や,発火頻度の低下が挙げられる。健常者では急速な動作や複雑な課題ではサイズの原理に従わず,高閾値の運動単位が動員されやすいが,脳卒中後片麻痺者では高閾値の運動単位が選択的に不活動になることが報告されている。しかし,運動課題の違いが運動単位の制御に与える影響については十分に検証されていない。本研究の目的は,脳卒中後片麻痺者を対象に筋活動電位波形から運動単位の挙動を推定するDecomposition法を用いて,異なる運動課題における運動単位制御について明らかにすることである。
【方法】
対象は,脳卒中後片麻痺者7名(年齢55.4±11.7歳,上肢Fugl-Meyer scale 44.4±13.0点)とした。運動課題として背臥位で肘関節30度屈曲位にて麻痺側・非麻痺側の等尺性肘関節屈曲運動を行った。DELSYS社製dEMGシステムを用いて上腕二頭筋の筋活動を記録した。まず,肘関節屈曲最大筋力(MVC)を測定し,20%MVCで筋力を発揮させた状態を30秒間保持するよう教示した(定常課題:ST)。続いてSTのうち10~20秒の10秒間は20%MVC以下において収縮と弛緩を最大速度で繰り返す動的な筋力発揮を行わせた(動的課題:DT)。各課題でDELSYS社製dEMGシステムを用いて上腕二頭筋の筋活動を記録し,Decomposition法を用いて運動単位動員数と発火頻度を算出した。また,肘関節屈曲最大トルクをハンドヘルドダイナモメーターにて計測した。統計解析は各課題における麻痺側と非麻痺側の運動単位数や発火頻度と最大トルクの相関をPearsonの積率相関係数を用いて検討した。有意水準は5%とした。
【結果】
麻痺側におけるSTの発火頻度は最大トルクの大きさと有意な負の相関を示したが,DTの発火頻度は最大トルクと有意な正の相関を示した。一方,非麻痺側においては2課題とも発火頻度と最大トルクの間に相関は認めなかった。運動単位動員数はどの条件においても最大トルクとの相関は認められなかった。
【結論】
麻痺側において,STではより筋力の低い対象者では20%MVCの低負荷の課題でも運動単位発揮張力低下によって発火頻度を過度に増加させたのではないかと考えられる。一方,DTでは,筋力が大きくより高閾値の運動単位が機能すると考えられる対象者では健常者と同様の制御を行ったが,筋力が小さく高閾値の運動単位が障害されていると考えられる対象者では健常者とは異なる制御を行った可能性が示された。本研究において麻痺側では定常課題と動的課題での運動単位の制御が異なる可能性が示唆された。
脳卒中後に生じる筋力低下は臨床的に重要な問題であるとされており,その原因として運動単位動員数の減少や,発火頻度の低下が挙げられる。健常者では急速な動作や複雑な課題ではサイズの原理に従わず,高閾値の運動単位が動員されやすいが,脳卒中後片麻痺者では高閾値の運動単位が選択的に不活動になることが報告されている。しかし,運動課題の違いが運動単位の制御に与える影響については十分に検証されていない。本研究の目的は,脳卒中後片麻痺者を対象に筋活動電位波形から運動単位の挙動を推定するDecomposition法を用いて,異なる運動課題における運動単位制御について明らかにすることである。
【方法】
対象は,脳卒中後片麻痺者7名(年齢55.4±11.7歳,上肢Fugl-Meyer scale 44.4±13.0点)とした。運動課題として背臥位で肘関節30度屈曲位にて麻痺側・非麻痺側の等尺性肘関節屈曲運動を行った。DELSYS社製dEMGシステムを用いて上腕二頭筋の筋活動を記録した。まず,肘関節屈曲最大筋力(MVC)を測定し,20%MVCで筋力を発揮させた状態を30秒間保持するよう教示した(定常課題:ST)。続いてSTのうち10~20秒の10秒間は20%MVC以下において収縮と弛緩を最大速度で繰り返す動的な筋力発揮を行わせた(動的課題:DT)。各課題でDELSYS社製dEMGシステムを用いて上腕二頭筋の筋活動を記録し,Decomposition法を用いて運動単位動員数と発火頻度を算出した。また,肘関節屈曲最大トルクをハンドヘルドダイナモメーターにて計測した。統計解析は各課題における麻痺側と非麻痺側の運動単位数や発火頻度と最大トルクの相関をPearsonの積率相関係数を用いて検討した。有意水準は5%とした。
【結果】
麻痺側におけるSTの発火頻度は最大トルクの大きさと有意な負の相関を示したが,DTの発火頻度は最大トルクと有意な正の相関を示した。一方,非麻痺側においては2課題とも発火頻度と最大トルクの間に相関は認めなかった。運動単位動員数はどの条件においても最大トルクとの相関は認められなかった。
【結論】
麻痺側において,STではより筋力の低い対象者では20%MVCの低負荷の課題でも運動単位発揮張力低下によって発火頻度を過度に増加させたのではないかと考えられる。一方,DTでは,筋力が大きくより高閾値の運動単位が機能すると考えられる対象者では健常者と同様の制御を行ったが,筋力が小さく高閾値の運動単位が障害されていると考えられる対象者では健常者とは異なる制御を行った可能性が示された。本研究において麻痺側では定常課題と動的課題での運動単位の制御が異なる可能性が示唆された。