第52回日本理学療法学術大会

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-36] ポスター(基礎)P36

2017年5月13日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-36-2] しゃがみこみ動作のバイオメカニクス
骨盤と下肢関節角度の関係性と腰背部の筋活動パターンについて

齋藤 涼平 (IMS(イムス)グループ高島平中央総合病院)

キーワード:しゃがみこみ動作, 三次元動作解析, 筋電図

【はじめに,目的】

しゃがみこみ動作は和式トイレや草むしりなど生活動作の中で重要な動作であり,足関節背屈角度の重要性や身体重心の位置関係に関してなど諸家によって報告されている。しゃがみこみ動作は上半身の質量を制御して行う事も重要であると考えられ,動作時の骨盤と下肢関節の関係性を明らかにすることができれば,理学療法介入時の評価や治療の方向性を示すことが可能であると考える。本研究の目的は,しゃがみこみ動作時の骨盤と下肢関節の関節角度変化の関係性と腰背部の筋活動パターンを明らかにする事とした。


【方法】

対象は健常成人8名(年齢24.7±3.1歳)。しゃがみこみ動作は,立位から最大限しゃがみこみを行い,しゃがみ姿勢を保持し,立ち上がるように指示した。その際,両上肢は肩関節軽度外転を保持するように指示した。しゃがみ込み動作を5回計測し,立位から最大限しゃがみこみまでを解析に用いた。計測機器は三次元動作解析装置(VICON Nexus)と床反力計(AMTI社製)を用い,対象者の体表面上に貼付した35個の赤外線反射標点の位置を計測し,胸郭,骨盤,股,膝,足関節の関節角度を算出した。多裂筋,腰腸肋筋,胸最長筋の筋活動を表面筋電図(COMETA Systems社製Zerowire)で計測し,サンプリングした筋電のRAWデータは全波整流化をした。計測した筋電波形を積分処理し,動作開始時から足関節最大背屈時まで(以下1相)と,足関節最大背屈時から動作終了時まで(以下2相)の筋活動量(μV・s)を算出し比較した。統計は対応のあるt検定を用い,有意水準は危険率5%未満とした。


【結果】

しゃがみこみ動作中の下肢の最大関節可動域は足関節背屈33.3±7.5°,膝関節屈曲135.6±6.1°,股関節屈曲91.2±2.3°であった。これら最大可動域はしゃがみこみ動作の,足関節67.6±10.3%,膝関節97.2±2.2%,股関節91.1±2.4%の時期であった。しゃがみこみ動作終了時の骨盤の後傾角度は18.0±7.9°であったが,1相では骨盤前傾5.6±6.4°,2相では骨盤後傾23.5±11.5°と有意な差があった。各筋肉の筋電の各相での有意な差がみられなかった。


【結論】

本研究ではしゃがみこみ動作は,足関節背屈角度が最大になってから骨盤の後傾がみられる特徴がみられた。これはしゃがみこみ動作は足底の支持基底面で身体重心を制御し下降を行うが,骨盤後傾が早期に起こると身体重心が後方へ移動し動作が困難になってしまうことが考えられ,骨盤と下肢関節の動きのタイミングを調整する事で支持基底面内での重心の下降を可能にしていると考えられる。また骨盤後傾の動きに伴い多裂筋の筋活動の減少を考えたが,筋電では活動しており,遠心性の筋活動で骨盤の後傾を制御している事が示唆された。しゃがみこみ動作を獲得していくためには,下肢関節の可動域も重要であるが,動作の際に各関節が協調して動いているのかを評価しアプローチしていく事も有用だと思われる。