[P-KS-40-1] ハムストリングス短縮の評価法の検討
下肢伸展挙上および膝伸展テストにおける骨盤後傾の男女間比較
Keywords:ハムストリングス, 骨盤後傾, 性差
【はじめに,目的】
ハムストリングスの短縮の評価には下肢伸展挙上(以下,SLR)テスト,膝伸展テストなどが用いられる。SLRテストおよび膝伸展テストのどちらもテスト中に骨盤が後傾することが報告されている。我々は同一被験者においてSLRテストと膝伸展テスト時の骨盤後傾量を比較したところ,膝伸展テスト時のほうが骨盤後傾量が小さいことを明らかにした。ところで,骨盤の形状には性差があることが知られている。またSLRテスト時の股関節屈曲角度および膝伸展テスト時の膝伸展角度にも性差があることが報告されている。しかし,SLRテストと膝伸展テスト時の骨盤後傾角度の性差については明らかになっていない。そこで本研究は健常成人を対象として,SLRテストと膝伸展テスト時の骨盤後傾角度の性差を明らかにすることを目的とした。
【方法】
被験者は健常な大学生で男性11名,女性9名の合計20名とした。右下肢を対象に,背臥位で他動的にSLRテストと膝伸展テストを行った。骨盤の角度を記録するために皮膚上から骨盤(左右上後腸骨棘の高さで正中仙骨稜上)に傾斜角度計を取り付けた。SLRテスト時には右下肢の大腿前面に,膝伸展テスト時には右下肢の脛骨前面に傾斜角度計をそれぞれ取り付けた。全ての実験は測定用ベッド上で行った。
1)SLRテスト
背臥位を開始肢位とし,この肢位での骨盤傾斜角度を記録した。SLRを他動的に行い,テスト最終域でのSLR角度と骨盤傾斜角度を記録した。
2)膝伸展テスト
背臥位で股関節及び膝関節90°屈曲位を開始肢位とし,この肢位での骨盤傾斜角度を記録した。膝伸展を他動的に行い,テスト最終域での膝伸展角度と骨盤傾斜角度を記録した。
両テストとも測定は5回行い,測定時は骨盤および対側下肢を固定した。5回の測定の平均値を個人の代表値とした。
統計処理:検定項目はSLR角度,膝伸展角度,開始から最終までの角度変化量(骨盤角度変化量),全可動域に対する骨盤後傾の割合(以下,後傾割合)とし,それぞれ対応のないt検定を用いて男女間の比較をした。有意水準はそれぞれ0.05とした。
【結果】
SLR角度および膝伸展角度は女性が男性よりも有意に大きかった(SLR:男性67.7±11.5°,女性84.5±14.4°,膝伸展:男性61.7±12.2°,女性80.2±14.3°)。両テスト時の骨盤角度変化量に男女差は認められなかった。SLRテスト時の後傾割合は男性が女性よりも有意に大きく(男性:13.5±4.3%,女性:8.4±3.0%),男性は全可動域に対する骨盤後傾角度の割合が大きかった。膝伸展テスト時の後傾割合には男女差は認められなかった。
【結論】
本研究の結果より,SLRテストでは後傾割合に性差があり,膝伸展テストでは骨盤割合に性差がなかった。従って,膝伸展テストはテスト結果に含まれる骨盤後傾割合に性差が小さいことが示唆された。そのため,男女間でハムストリングスの短縮を比較する際の評価法としては膝伸展テストを用いることが推奨される。
ハムストリングスの短縮の評価には下肢伸展挙上(以下,SLR)テスト,膝伸展テストなどが用いられる。SLRテストおよび膝伸展テストのどちらもテスト中に骨盤が後傾することが報告されている。我々は同一被験者においてSLRテストと膝伸展テスト時の骨盤後傾量を比較したところ,膝伸展テスト時のほうが骨盤後傾量が小さいことを明らかにした。ところで,骨盤の形状には性差があることが知られている。またSLRテスト時の股関節屈曲角度および膝伸展テスト時の膝伸展角度にも性差があることが報告されている。しかし,SLRテストと膝伸展テスト時の骨盤後傾角度の性差については明らかになっていない。そこで本研究は健常成人を対象として,SLRテストと膝伸展テスト時の骨盤後傾角度の性差を明らかにすることを目的とした。
【方法】
被験者は健常な大学生で男性11名,女性9名の合計20名とした。右下肢を対象に,背臥位で他動的にSLRテストと膝伸展テストを行った。骨盤の角度を記録するために皮膚上から骨盤(左右上後腸骨棘の高さで正中仙骨稜上)に傾斜角度計を取り付けた。SLRテスト時には右下肢の大腿前面に,膝伸展テスト時には右下肢の脛骨前面に傾斜角度計をそれぞれ取り付けた。全ての実験は測定用ベッド上で行った。
1)SLRテスト
背臥位を開始肢位とし,この肢位での骨盤傾斜角度を記録した。SLRを他動的に行い,テスト最終域でのSLR角度と骨盤傾斜角度を記録した。
2)膝伸展テスト
背臥位で股関節及び膝関節90°屈曲位を開始肢位とし,この肢位での骨盤傾斜角度を記録した。膝伸展を他動的に行い,テスト最終域での膝伸展角度と骨盤傾斜角度を記録した。
両テストとも測定は5回行い,測定時は骨盤および対側下肢を固定した。5回の測定の平均値を個人の代表値とした。
統計処理:検定項目はSLR角度,膝伸展角度,開始から最終までの角度変化量(骨盤角度変化量),全可動域に対する骨盤後傾の割合(以下,後傾割合)とし,それぞれ対応のないt検定を用いて男女間の比較をした。有意水準はそれぞれ0.05とした。
【結果】
SLR角度および膝伸展角度は女性が男性よりも有意に大きかった(SLR:男性67.7±11.5°,女性84.5±14.4°,膝伸展:男性61.7±12.2°,女性80.2±14.3°)。両テスト時の骨盤角度変化量に男女差は認められなかった。SLRテスト時の後傾割合は男性が女性よりも有意に大きく(男性:13.5±4.3%,女性:8.4±3.0%),男性は全可動域に対する骨盤後傾角度の割合が大きかった。膝伸展テスト時の後傾割合には男女差は認められなかった。
【結論】
本研究の結果より,SLRテストでは後傾割合に性差があり,膝伸展テストでは骨盤割合に性差がなかった。従って,膝伸展テストはテスト結果に含まれる骨盤後傾割合に性差が小さいことが示唆された。そのため,男女間でハムストリングスの短縮を比較する際の評価法としては膝伸展テストを用いることが推奨される。