[P-KS-42-2] Timed Up and Goテストにおける履物条件の影響
Keywords:履物条件, Timed Up and Goテスト, 妥当性
【はじめに,目的】
Timed Up and Goテスト(以下,TUG)は,臨床上で動的バランスの評価指標として頻繁に用いられる。また,その測定の簡便さから訪問リハビリテーションや介護予防事業における運動機能評価の一つとして利用されている。訪問リハビリテーションや介護予防事業における運動機能評価の際には,履物は靴ではなく靴下であることが多い。さらに,積雪寒冷地では,冬期間,習慣的に靴下の上に毛糸で編まれた靴下カバーを着用(以下,多重着用)している高齢者が多い。このため,夏季と冬季で履物条件が異なる状況でTUGが測定されていることが見受けられ,経時的な測定結果の解釈の妥当性に疑問がある。しかし,TUGの測定法に履物条件の違いによる報告はない。そこで,本研究は,履物条件がTUGの結果に影響を及ぼすかを検討することを目的に,時間および歩数を測定した。
【方法】
対象は健常若年者35名(平均年齢25.4±2.8歳)とし,平均の身長と体重はそれぞれ164.7±8.0 cmと59.7±11.5 kgであった。TUGを裸足,靴下および多重着用の3条件で行い,時間と歩数を測定した。床面の素材はフローリングとした。3条件の順番をランダムに,1条件につき各5回試行した。各試行は,歩行路に対して側面に設置されたデジタルビデオカメラによって撮影された。対象者には,背もたれに設置した光式シンクロナイザーのスイッチを押して座るよう指示した。光式シンクロナイザーは,スイッチを押すと点灯する設定とし,各試行における時間は,光式シンクロナイザーの信号の消灯から点灯までとした。条件間による時間および歩数の統計学的分析はSPSS ver.20を用い,繰り返しのある一元配置分散分析を適用した。統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
TUGの時間は,裸足,靴下および多重着用の順で6.1±0.7秒,6.2±0.7秒および6.4±0.6秒で,裸足と多重着用間,靴下と多重着用間で有意な差を認めた(p<0.01)。歩数は,同様の順番で11.7±1.9歩,12.3±2.0歩および12.8±1.9歩で,すべての条件間で有意な差を認めた(裸足と靴下間および靴下と多重着用間:p<0.05,裸足と多重着用間:p<0.01)。
【結論】
履物が増えるにしたがってTUGの時間と歩数が増加したことから,TUGの時間増加は,歩数の増加に起因していると考えられた。また,履物の条件がTUGの結果に影響を及ぼすと考えられ,積雪寒冷地における夏季と冬季のTUGの結果の解釈には,身体機能および身体能力以外に履物にも考慮する必要がある。そのため,夏季と冬季で履物を揃えて測定する,あるいは高齢者の生活場面に即した履物を着用して測定するなど目的に応じて履物条件を統一する必要があると示唆された。
Timed Up and Goテスト(以下,TUG)は,臨床上で動的バランスの評価指標として頻繁に用いられる。また,その測定の簡便さから訪問リハビリテーションや介護予防事業における運動機能評価の一つとして利用されている。訪問リハビリテーションや介護予防事業における運動機能評価の際には,履物は靴ではなく靴下であることが多い。さらに,積雪寒冷地では,冬期間,習慣的に靴下の上に毛糸で編まれた靴下カバーを着用(以下,多重着用)している高齢者が多い。このため,夏季と冬季で履物条件が異なる状況でTUGが測定されていることが見受けられ,経時的な測定結果の解釈の妥当性に疑問がある。しかし,TUGの測定法に履物条件の違いによる報告はない。そこで,本研究は,履物条件がTUGの結果に影響を及ぼすかを検討することを目的に,時間および歩数を測定した。
【方法】
対象は健常若年者35名(平均年齢25.4±2.8歳)とし,平均の身長と体重はそれぞれ164.7±8.0 cmと59.7±11.5 kgであった。TUGを裸足,靴下および多重着用の3条件で行い,時間と歩数を測定した。床面の素材はフローリングとした。3条件の順番をランダムに,1条件につき各5回試行した。各試行は,歩行路に対して側面に設置されたデジタルビデオカメラによって撮影された。対象者には,背もたれに設置した光式シンクロナイザーのスイッチを押して座るよう指示した。光式シンクロナイザーは,スイッチを押すと点灯する設定とし,各試行における時間は,光式シンクロナイザーの信号の消灯から点灯までとした。条件間による時間および歩数の統計学的分析はSPSS ver.20を用い,繰り返しのある一元配置分散分析を適用した。統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
TUGの時間は,裸足,靴下および多重着用の順で6.1±0.7秒,6.2±0.7秒および6.4±0.6秒で,裸足と多重着用間,靴下と多重着用間で有意な差を認めた(p<0.01)。歩数は,同様の順番で11.7±1.9歩,12.3±2.0歩および12.8±1.9歩で,すべての条件間で有意な差を認めた(裸足と靴下間および靴下と多重着用間:p<0.05,裸足と多重着用間:p<0.01)。
【結論】
履物が増えるにしたがってTUGの時間と歩数が増加したことから,TUGの時間増加は,歩数の増加に起因していると考えられた。また,履物の条件がTUGの結果に影響を及ぼすと考えられ,積雪寒冷地における夏季と冬季のTUGの結果の解釈には,身体機能および身体能力以外に履物にも考慮する必要がある。そのため,夏季と冬季で履物を揃えて測定する,あるいは高齢者の生活場面に即した履物を着用して測定するなど目的に応じて履物条件を統一する必要があると示唆された。