[P-KS-42-5] 筋硬結模型を用いた練習による触診技術の向上
Keywords:筋硬結, 触診, 練習
【はじめに,目的】
筋触診技術教育を目的とした練習用模型(筋硬結触診シミュレータ)を開発した。このシミュレータは,皮膚皮下組織モデルと筋モデルからなる2層構造をもち,筋モデルの中には筋硬結を模擬した筋硬結モデルを含んでいる。また,皮膚皮下組織モデルと筋モデルは,生体の臀部の皮膚皮下組織と筋それぞれの厚さと機械的特性を模擬している。また,筋硬結モデルの形と埋める深さは,臨床家の意見を参考にして決定した。本研究の目的は,我々が開発した筋硬結触診シミュレータを用いて練習することによる触診技術の向上効果を検証することである。
【方法】
被験者は21歳~22歳の学生10人である。10人の被験者を5人ずつの2グループに分け,一方を筋硬結触診シミュレータを用いて練習する群(練習群)とし,もう一方を練習しない群(コントロール群)とした。練習群は,まず,様々な位置と方向に筋硬結モデルが埋められている筋硬結触診シミュレータと筋硬結モデルが埋められていない筋硬結触診シミュレータを触診し,筋硬結モデルの有無並びに筋硬結モデルの位置と方向を回答する施行を20回行った(セッション1)。続いて,筋硬結モデルの位置と方向を見ることができる状態で,筋硬結モデルを触診する練習を5分間行った(セッション2)。その後,セッション1と同じ内容を繰り返した(セッション3)。また,セッション2とセッション3の直後に練習の影響について自由に感想を述べてもらった。コントロール群は,セッション1とセッション3は練習群と同じだが,セッション2の練習を行わずに10分間の休憩をとった。また,セッション3の直後に全体を通しての感想を自由に述べてもらった。筋硬結モデルがあると回答した全ての施行において,被験者が示した筋硬結モデルの位置と実際の筋硬結モデルの位置とのずれの距離が16mm未満の場合を位置正答とし,位置正答であった施行のうちズレの角度が30度未満の場合を位置角度正答とした。練習群,コントロール群それぞれについて,セッション1とセッション3の位置正答率及び位置角度正答率にウィルコクソンの符号付順位和検定を適用した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
練習群のセッション1とセッション3の位置正答率は29.3%と69.3%であり,両者の間に有意差がみられた。他の正答率間には有意差がみられなかった。練習群の内観報告では,触察感が分かった,効果的な触り方が分かったなど,練習に対する肯定的な意見がみられた。
【結論】
我々が開発した筋硬結触診シミュレータを用いて練習することで,筋硬結モデルの位置を同定する技術が向上した。その理由として,筋硬結モデルの触察感を知ることが重要であることが示唆された。筋硬結触診シミュレータはヒト殿部組織の厚さと機械的特性を模擬しているため,実際の筋硬結の触診技術教育に利用できるものと考える。
筋触診技術教育を目的とした練習用模型(筋硬結触診シミュレータ)を開発した。このシミュレータは,皮膚皮下組織モデルと筋モデルからなる2層構造をもち,筋モデルの中には筋硬結を模擬した筋硬結モデルを含んでいる。また,皮膚皮下組織モデルと筋モデルは,生体の臀部の皮膚皮下組織と筋それぞれの厚さと機械的特性を模擬している。また,筋硬結モデルの形と埋める深さは,臨床家の意見を参考にして決定した。本研究の目的は,我々が開発した筋硬結触診シミュレータを用いて練習することによる触診技術の向上効果を検証することである。
【方法】
被験者は21歳~22歳の学生10人である。10人の被験者を5人ずつの2グループに分け,一方を筋硬結触診シミュレータを用いて練習する群(練習群)とし,もう一方を練習しない群(コントロール群)とした。練習群は,まず,様々な位置と方向に筋硬結モデルが埋められている筋硬結触診シミュレータと筋硬結モデルが埋められていない筋硬結触診シミュレータを触診し,筋硬結モデルの有無並びに筋硬結モデルの位置と方向を回答する施行を20回行った(セッション1)。続いて,筋硬結モデルの位置と方向を見ることができる状態で,筋硬結モデルを触診する練習を5分間行った(セッション2)。その後,セッション1と同じ内容を繰り返した(セッション3)。また,セッション2とセッション3の直後に練習の影響について自由に感想を述べてもらった。コントロール群は,セッション1とセッション3は練習群と同じだが,セッション2の練習を行わずに10分間の休憩をとった。また,セッション3の直後に全体を通しての感想を自由に述べてもらった。筋硬結モデルがあると回答した全ての施行において,被験者が示した筋硬結モデルの位置と実際の筋硬結モデルの位置とのずれの距離が16mm未満の場合を位置正答とし,位置正答であった施行のうちズレの角度が30度未満の場合を位置角度正答とした。練習群,コントロール群それぞれについて,セッション1とセッション3の位置正答率及び位置角度正答率にウィルコクソンの符号付順位和検定を適用した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
練習群のセッション1とセッション3の位置正答率は29.3%と69.3%であり,両者の間に有意差がみられた。他の正答率間には有意差がみられなかった。練習群の内観報告では,触察感が分かった,効果的な触り方が分かったなど,練習に対する肯定的な意見がみられた。
【結論】
我々が開発した筋硬結触診シミュレータを用いて練習することで,筋硬結モデルの位置を同定する技術が向上した。その理由として,筋硬結モデルの触察感を知ることが重要であることが示唆された。筋硬結触診シミュレータはヒト殿部組織の厚さと機械的特性を模擬しているため,実際の筋硬結の触診技術教育に利用できるものと考える。