The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-43] ポスター(基礎)P43

Sat. May 13, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-43-1] 情動喚起画像を使用した痛み軽減アプローチの検証
―心拍変動による自律神経機能評価―

前岡 浩, 松尾 篤, 冷水 誠 (畿央大学健康科学部理学療法学科)

Keywords:痛み軽減, 不快感, 自律神経機能

【はじめに,目的】

痛みは感覚的,認知的,情動的側面から構成され,その強度や捉え方,嫌悪など様々な要因で変化する。現在,ミラーセラピーなどの認知的側面への治療法は提案されているが,情動的側面へのアプローチは十分検討されていない。我々は過去の情動喚起画像を用いた研究において,自身の手で「痛み場面」を消去するアプローチによって痛みの閾値,耐性,不快感の改善を報告した。しかしながら,このアプローチが情動的および認知的側面のどちらに対する影響が大きいかは検討できなかった。そこで,情動的側面の評価として自律神経機能評価を加え,本アプローチをさらに検証することを目的とする。

【方法】

健常大学生60名を無作為に20名ずつ3群に割り付けた。痛み刺激部位は左前腕内側部とし,痛み閾値と耐性を痛覚計で測定後,痛み閾値から痛み刺激強度を設定した。情動喚起画像は,痛み刺激部位に類似した左前腕の傷口を縫合した画像10枚を使用し,痛み刺激と同時に画像をランダムに提示した。その際のアプローチは,画像をそのまま観察するコントロール群,縫合部など画像内の痛い部位が自動的に消去されるのを観察する自動消去群,自身の右示指で画像内の痛み部位を擦り消去するのを観察する自己消去群の3条件とした。評価項目は,課題前後の痛み閾値と耐性,Visual Analogue Scaleにて情動喚起画像,痛み刺激強度,不快感,画像提示中の痛み刺激に対する強度,不快感を評価した。また同時に心電図を測定しR-R間隔の周波数解析から低周波成分/高周波成分の比(LF/HF)を算出し,課題前後の変化を比較した。統計学的分析は,評価項目の課題前後および課題中の変化率を算出し,課題間での各変化率を一元配置分散分析またはKruskal-Wallis検定にて比較し,有意差が認められた場合は多重比較を実施した。統計学的有意水準は5%未満とした。

【結果】

痛み閾値と耐性はともに,自己消去群がコントロール群と比較し有意な増加を示した(p<0.05,p<0.01)。また,課題中の痛み刺激に対する強度と不快感について,痛み強度は自己消去群が他の2群と比較し有意に低下し(p<0.01),不快感は自己消去群が自動消去群と比較し有意に低下した(p<0.05)。自律神経評価におけるLF/HFは,自己消去群が自動消去群と比較し有意な低下を示した(p<0.05)。

【結論】

本研究のアプローチにより,痛み閾値と耐性の増加,強度と不快感の減少が認められ,さらに課題前後の交感神経活動の減少も認められた。このことから,自身の手で「痛み場面」を消去する行為は,痛みの情動的側面へ影響を与え,それにより疼痛や不快感が軽減した可能性が示唆される。