第52回日本理学療法学術大会

講演情報

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-43] ポスター(基礎)P43

2017年5月13日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-43-3] めまい患者の客観的身体活動量の検討

仁木 淳一1, 浅井 友詞2, 森本 浩之1, 酒井 成輝1, 水谷 武彦1, 水谷 陽子1, 中山 明峰3 (1.水谷病院リハビリテーション科, 2.日本福祉大学健康科学部, 3.名古屋市立大学耳鼻咽喉科)

キーワード:めまい, 身体活動量, 前庭リハビリテーション

【はじめに,目的】

我々は第49回の本学会にて慢性めまい患者に対する前庭リハビリテーションの効果について報告した。前庭リハはAdaptation,Habituation,Substitutionの3つの方法を基本とし,日常生活における活動性を高める指導が有効とされている。過去の報告においてもめまいと活動性に関する報告はされているが,いずれもアンケートなど主観的な評価であり,身体活動量に対する客観的分析はされておらず,めまい患者の身体活動量は明らかにされていない。めまい患者の身体活動量を調査することで,従来の理学療法に加えて,より患者個人の社会的背景を考慮したプログラムの立案が期待できると考える。そこで本研究では,活動量計を用いてめまい患者と健常者の身体活動量を計測し,活動水準を求めるとともに健常者との違いを検討する。


【方法】

対象は3ヶ月以上めまいを訴えている前庭機能低下症15名(平均年齢:64.5±17.5歳)と健常者15名(平均年齢:66.7±4.5歳)とした。身体活動量はActiSleep+Monitor(ActiGraph社製)を用いて,計測期間は1週間とし,入浴時以外に装着した。解析方法はFreedsonらの方法を用いて身体活動量の程度を,Sedentary Behavior(以下,SB)(座位行動身体活動量),Moderate-to-Vigorous-Intensity Physical Activity(以下,MVPA)(中等度以上身体活動量)で分類した。めまいの障害の評価は,めまいと日常生活動作に関するアンケートDizziness Handicap Inventory(以下,DHI)を使用し,0-100スコアで判定した。統計処理には,対応のないT検定により両群間の身体活動量(SB,MVPA)の差を比較し,Wilcoxon順位和検定にて両群間のDHIの差を比較した。


【結果】

DHIは前庭機能低下症44.0(2.0-82.0)点,健常者0(0-12.0)点と有意差を認めた。身体活動量に関して,前庭機能低下症はSB 405.9±75.1min/day,MVPA 228.3±85.4min/dayであった。健常者はSB 352.9±61.1 min/day,MVPA 232.3±73.7min/dayであった。両群間においてSBは有意差を認め,MVPAは有意差が認められなかった。


【結論】

今回,めまい患者は健常者と比較してSBの時間が長いことが明らかになった。めまい患者はめまい発症により,身体活動を制限し安静な時間を多くとることが考えられる。しかし,MVPAに分類される家事や買い物のような身体活動量に差が生じなかったことから,一般的な日常生活の身体活動量は健常者と変わりがないことが示唆された。今回の調査では,活動性を高めることがめまい症状の改善に関連するかどうかは不明であり,また日常生活でSB,MVPAがどのように変動しているかなどの詳細も不明である。今後の課題としては,めまい患者の身体活動量が理学療法の介入によりどのように変化していくか,さらに患者個人の社会的背景が身体活動量にどのような影響を及ぼすかも検討していく必要がある。