[P-KS-43-5] 頸髄症術後患者の巧緻動作後の唾液アミラーゼ活性値に与える影響
Keywords:頸髄症, 巧緻動作, 唾液アミラーゼ活性値
【はじめに,目的】頸髄症の手指上肢機能の評価は,随意運動能力の的確性や円滑性の評価のみでなく,作業遂行時の動きにくさで生じる心理的/身体的負担要因の評価も必要と考えられるが見当たらない。ヒトの情動反応に対する指標とされる唾液中のα-アミラーゼ活性値(AMY値)は,心理的/身体的負担状態に関連性を持つとされる。本研究は,頸髄症術後患者における巧緻運動の遂行時間とAMY値の関連性,そして術後経過における上肢機能やAMY値を比較検討した。
【方法】手指の巧緻運動障害を有する頸髄症術後患者12例(男性10例,女性2例,62.6±13.8歳)を対象とした。AMY値の測定は,唾液アミラーゼモニター用チップで対象の舌下から唾液を抽出し,酵素分析装置(唾液アミラーゼモニターCM-2.1:NIPRO)にて測定した(安静AMY値)。次いでSTEFの大球つかみ動作(sf01)もしくは小球つまみ動作(sf09)の施行後にAMY値を測定した。sf01とsf09の測定はランダム化し,各sf間は10分間の休憩をはさんだ。環境設定は,快適温度の無音の個室で食後から一定時間経過後の測定とした。AMY測定時期は,術後2週と4週とした。また,STEF総点,握力,ピンチ力,Finger escape sign(FES),および10秒テストを評価した。対象には術後1週以内から理学療法および作業療法を施行した。sf01とsf09のAMY値から,(各施行後のAMY値-安静AMY値)/安静AMY値×100(%AMY値)を算出した。術後2週における各sfの%AMY値の比較および術後2週と4週の比較はWilcoxon検定とpaired t-test,各sfの%AMY値と所要時間の関連性はSpearmanの順位相関係数を用いて,有意水準は5%とした。本研究は,2009年度に福井県理学療法士会の研究助成を受けたものである。
【結果】術後2週のsf09の%AMY値と所要時間はsf01の%AMY値より有意に高値を示した(p<0.01)。術後2週の両sfの%AMY値と所要時間に有意な正の相関を認めた(r=0.78,p<0.001)。術後4週のSTEF総点,握力,ピンチ力およびFESは術後2週より有意に改善していた(p<0.05)。術後4週のsf09の%AMY値は,術後2週より有意に低く(p<0.05),sf01の%AMY値は低値傾向を示した。各sfの所要時間と点数は,術後2週より術後4週で有意に改善を認めた(p<0.05)。
【結論】巧緻運動障害を呈する頸髄症術後患者は,巧緻性を要する細かな作業課題になるにともない,作業遂行における心理的/身体的負担を反映するアミラーゼ活性が上昇したと考えられた。また,巧緻運動機能の改善は動作におけるアミラーゼ活性の減少を認め作業遂行で生じる心理的負担を減少させる可能性が考えられた。
【方法】手指の巧緻運動障害を有する頸髄症術後患者12例(男性10例,女性2例,62.6±13.8歳)を対象とした。AMY値の測定は,唾液アミラーゼモニター用チップで対象の舌下から唾液を抽出し,酵素分析装置(唾液アミラーゼモニターCM-2.1:NIPRO)にて測定した(安静AMY値)。次いでSTEFの大球つかみ動作(sf01)もしくは小球つまみ動作(sf09)の施行後にAMY値を測定した。sf01とsf09の測定はランダム化し,各sf間は10分間の休憩をはさんだ。環境設定は,快適温度の無音の個室で食後から一定時間経過後の測定とした。AMY測定時期は,術後2週と4週とした。また,STEF総点,握力,ピンチ力,Finger escape sign(FES),および10秒テストを評価した。対象には術後1週以内から理学療法および作業療法を施行した。sf01とsf09のAMY値から,(各施行後のAMY値-安静AMY値)/安静AMY値×100(%AMY値)を算出した。術後2週における各sfの%AMY値の比較および術後2週と4週の比較はWilcoxon検定とpaired t-test,各sfの%AMY値と所要時間の関連性はSpearmanの順位相関係数を用いて,有意水準は5%とした。本研究は,2009年度に福井県理学療法士会の研究助成を受けたものである。
【結果】術後2週のsf09の%AMY値と所要時間はsf01の%AMY値より有意に高値を示した(p<0.01)。術後2週の両sfの%AMY値と所要時間に有意な正の相関を認めた(r=0.78,p<0.001)。術後4週のSTEF総点,握力,ピンチ力およびFESは術後2週より有意に改善していた(p<0.05)。術後4週のsf09の%AMY値は,術後2週より有意に低く(p<0.05),sf01の%AMY値は低値傾向を示した。各sfの所要時間と点数は,術後2週より術後4週で有意に改善を認めた(p<0.05)。
【結論】巧緻運動障害を呈する頸髄症術後患者は,巧緻性を要する細かな作業課題になるにともない,作業遂行における心理的/身体的負担を反映するアミラーゼ活性が上昇したと考えられた。また,巧緻運動機能の改善は動作におけるアミラーゼ活性の減少を認め作業遂行で生じる心理的負担を減少させる可能性が考えられた。