[P-KS-44-1] Box and Block Testの運動イメージが上肢脊髄神経機能の興奮性に及ぼす影響
Keywords:F波, イメージ, 複合運動
【はじめに,目的】
日常生活では,物を棚に置くなど複合的な動作様式が多い。そのため,運動イメージ課題としても単関節運動だけでなく複合運動のイメージにおいて脊髄神経機能の興奮性が変化する必要があると考える。Box and Block Test(以下,BBT)とは,手全体の巧緻性に基づいた評価である。
大脳皮質レベルの研究では,運動イメージを用いて10m歩行やBBTなどの運動課題を行うことで運動関連領域が賦活すると報告されている。しかしながら脊髄神経機能の研究では,BBTの運動イメージを用いた報告は見られない。
そこで,本研究では上肢の巧緻性の指標となるBBTを用い,複合運動のイメージが上肢における脊髄神経機能の興奮性に及ぼす影響について,F波を用いて検討した。
【方法】
対象は,右利きの健常者10名(平均年齢27.7±7.8歳)とした。検査姿勢は椅子座位とし肘関節90°屈曲位,前腕回外位で机の上に位置させ手掌が上を向く肢位とした。F波導出の刺激条件は,強度を最大上刺激(最大M波の120%),頻度は0.5Hz,持続時間0.2msとして,右手関節部正中神経を連続30回刺激した。記録条件として探査電極は右母指球の筋腹上,基準電極は右母指基節骨上に配置した。
BBTの運動イメージは,右手で1度にブロック1つを母指と示指で把持し,箱の対側に入れた。イメージを行う際,移動するキューブの数を頭の中で数えながら1分間でできるだけ早く多くのキューブを移動するようにイメージした。なお,運動イメージ課題は物品を見ながら行い,1人称イメージを用いた。
測定方法は,まず安静時のF波を測定し,続いて5分間の安静後,BBTの運動イメージ試行中にF波を測定した。その後,運動イメージ終了2分後,4分後にF波を測定した。
検討項目は,安静時と運動イメージ試行中,運動イメージ終了2分後,4分後の振幅F/M比,F波出現頻度の変化をFriedman検定とBonferroni補正したWilcoxonの符号付順位検定を用いて比較検討した。有意水準は5%とした。
【結果】
振幅F/M比,F波の出現頻度ともに安静時と比較して運動イメージ試行中で有意に増加した(p<0.05)。
【結論】
振幅F/M比は再発火する脊髄前角細胞数と脊髄前角細胞の個々の興奮性に影響され,F波出現頻度は再発火する脊髄前角細胞数に影響されると考えられている。本結果より,BBTの運動イメージで上肢脊髄神経機能の興奮性が増加する可能性が示唆された。Joachim Liepertらの研究において,BBTの運動イメージ中に運動関連領域の興奮性が増加すると報告されている。また,母指と示指の対立運動の運動イメージでは大脳皮質から脊髄への下行性線維の影響で母指球筋に対応する上肢脊髄神経機能の興奮性が増加すると報告されている。このような点から本研究においても,BBTの運動イメージによる運動関連領域の興奮性の増加にともない,大脳皮質から脊髄への下行性線維の影響により上肢脊髄神経機能の興奮性が増加した可能性が考えられた。
日常生活では,物を棚に置くなど複合的な動作様式が多い。そのため,運動イメージ課題としても単関節運動だけでなく複合運動のイメージにおいて脊髄神経機能の興奮性が変化する必要があると考える。Box and Block Test(以下,BBT)とは,手全体の巧緻性に基づいた評価である。
大脳皮質レベルの研究では,運動イメージを用いて10m歩行やBBTなどの運動課題を行うことで運動関連領域が賦活すると報告されている。しかしながら脊髄神経機能の研究では,BBTの運動イメージを用いた報告は見られない。
そこで,本研究では上肢の巧緻性の指標となるBBTを用い,複合運動のイメージが上肢における脊髄神経機能の興奮性に及ぼす影響について,F波を用いて検討した。
【方法】
対象は,右利きの健常者10名(平均年齢27.7±7.8歳)とした。検査姿勢は椅子座位とし肘関節90°屈曲位,前腕回外位で机の上に位置させ手掌が上を向く肢位とした。F波導出の刺激条件は,強度を最大上刺激(最大M波の120%),頻度は0.5Hz,持続時間0.2msとして,右手関節部正中神経を連続30回刺激した。記録条件として探査電極は右母指球の筋腹上,基準電極は右母指基節骨上に配置した。
BBTの運動イメージは,右手で1度にブロック1つを母指と示指で把持し,箱の対側に入れた。イメージを行う際,移動するキューブの数を頭の中で数えながら1分間でできるだけ早く多くのキューブを移動するようにイメージした。なお,運動イメージ課題は物品を見ながら行い,1人称イメージを用いた。
測定方法は,まず安静時のF波を測定し,続いて5分間の安静後,BBTの運動イメージ試行中にF波を測定した。その後,運動イメージ終了2分後,4分後にF波を測定した。
検討項目は,安静時と運動イメージ試行中,運動イメージ終了2分後,4分後の振幅F/M比,F波出現頻度の変化をFriedman検定とBonferroni補正したWilcoxonの符号付順位検定を用いて比較検討した。有意水準は5%とした。
【結果】
振幅F/M比,F波の出現頻度ともに安静時と比較して運動イメージ試行中で有意に増加した(p<0.05)。
【結論】
振幅F/M比は再発火する脊髄前角細胞数と脊髄前角細胞の個々の興奮性に影響され,F波出現頻度は再発火する脊髄前角細胞数に影響されると考えられている。本結果より,BBTの運動イメージで上肢脊髄神経機能の興奮性が増加する可能性が示唆された。Joachim Liepertらの研究において,BBTの運動イメージ中に運動関連領域の興奮性が増加すると報告されている。また,母指と示指の対立運動の運動イメージでは大脳皮質から脊髄への下行性線維の影響で母指球筋に対応する上肢脊髄神経機能の興奮性が増加すると報告されている。このような点から本研究においても,BBTの運動イメージによる運動関連領域の興奮性の増加にともない,大脳皮質から脊髄への下行性線維の影響により上肢脊髄神経機能の興奮性が増加した可能性が考えられた。