[P-KS-44-3] 一側肢の反復練習がもたらす非練習肢運動イメージの変化,およびパフォーマンスへの影響
Keywords:運動学習, 運動イメージ, 経頭蓋磁気刺激法
【はじめに,目的】
『学習転移』とは一側肢の反復練習を行うことで対側非練習肢に練習効果が波及する現象をいう。この背景には一側肢の反復練習に伴った左右大脳皮質の相補的な可塑的変化が生じることが示されている。本研究は,経頭蓋磁気刺激法(TMS)を用いて,一側肢の反復練習がもたらす非練習肢の運動イメージ(MI)の形成,およびその後非練習肢による実際の運動が行われた場合のMIの修飾過程を皮質脊髄路興奮性評価を指標に検討を行った。
【方法】
対象は健常成人16名。学習課題は画面上に表示された手関節背屈張力に連動した追随マーカーを操作し,ランプ状に上昇する基準線を追随するトラッキング課題を用いた。被験者を学習転移群8名(転移群),対照群8名の2群にランダムに振り分け,右手トラッキング練習の有無による左手MIおよび課題パフォーマンスへの影響を調査した。転移群は条件課題として右手で計30回のトラッキング練習を行い,右手練習前後の左手MIの評価をした。さらに転移群は右手練習後,左手にて計30回のトラッキング練習を実施し実際の運動を付加したことによる左手MI,及び左手練習前後の課題パフォーマンス評価を行った。一方,対照群は転移群の条件課題を行わず左手のみの練習を行いその前後による同様の比較を行った。課題パフォーマンスの評価として,画面上の基準線とマーカーを消失させ計10回の課題を実施し,被験者が実施した追随マーカーの軌跡から上昇を行っている間の傾きを算出しその変動係数を求めた。またMIの評価はTMSによる運動誘発電位(MEP)により行った。TMSはMIによるトラッキング課題のランプ上の中点にてトリガーし橈側手根伸筋(主動作筋)よりMEPを導出した。各群の左手練習前後における課題パフォーマンスとMEPの平均値を求め検討した。統計解析は各群の左手練習前後における追随マーカー軌跡変動係数に対しMann-Whitney検定にBonferroni補正を行い群間の比較を行った。また,転移群のMIのMEP変化に対しFriedman検定を行い必要に応じ事後検定を行った。対照群のMIのMEP変化に対しWilcoxonの検定を行った。さらに転移群,対照群の左手練習前後におけるMEP変化率に対しMann-Whitney検定を用いた。危険率は5%とした。
【結果】
追随マーカー軌跡変動係数は,左手練習前において転移群で有意な低下を認めた。また,転移群は右手の反復練習により左手MIのMEPは有意な減少を示し,その後左手による実際の運動を行った後もMEP減少は維持されていた。一方,対照群は左手練習前後にてMIのMEPは有意な増加を示し,その増加率は転移群よりも有意に大きかった。
【結論】
一側肢の練習に伴い対側非練習肢のMIは変化し,さらにその後非練習肢にて実際の運動を行った後も形成されたMIは持続する可能性が示唆された。また一側肢の練習に伴い形成された対側非練習肢のMIは非練習肢のパフォーマンスを安定させることに寄与することが示唆された。
『学習転移』とは一側肢の反復練習を行うことで対側非練習肢に練習効果が波及する現象をいう。この背景には一側肢の反復練習に伴った左右大脳皮質の相補的な可塑的変化が生じることが示されている。本研究は,経頭蓋磁気刺激法(TMS)を用いて,一側肢の反復練習がもたらす非練習肢の運動イメージ(MI)の形成,およびその後非練習肢による実際の運動が行われた場合のMIの修飾過程を皮質脊髄路興奮性評価を指標に検討を行った。
【方法】
対象は健常成人16名。学習課題は画面上に表示された手関節背屈張力に連動した追随マーカーを操作し,ランプ状に上昇する基準線を追随するトラッキング課題を用いた。被験者を学習転移群8名(転移群),対照群8名の2群にランダムに振り分け,右手トラッキング練習の有無による左手MIおよび課題パフォーマンスへの影響を調査した。転移群は条件課題として右手で計30回のトラッキング練習を行い,右手練習前後の左手MIの評価をした。さらに転移群は右手練習後,左手にて計30回のトラッキング練習を実施し実際の運動を付加したことによる左手MI,及び左手練習前後の課題パフォーマンス評価を行った。一方,対照群は転移群の条件課題を行わず左手のみの練習を行いその前後による同様の比較を行った。課題パフォーマンスの評価として,画面上の基準線とマーカーを消失させ計10回の課題を実施し,被験者が実施した追随マーカーの軌跡から上昇を行っている間の傾きを算出しその変動係数を求めた。またMIの評価はTMSによる運動誘発電位(MEP)により行った。TMSはMIによるトラッキング課題のランプ上の中点にてトリガーし橈側手根伸筋(主動作筋)よりMEPを導出した。各群の左手練習前後における課題パフォーマンスとMEPの平均値を求め検討した。統計解析は各群の左手練習前後における追随マーカー軌跡変動係数に対しMann-Whitney検定にBonferroni補正を行い群間の比較を行った。また,転移群のMIのMEP変化に対しFriedman検定を行い必要に応じ事後検定を行った。対照群のMIのMEP変化に対しWilcoxonの検定を行った。さらに転移群,対照群の左手練習前後におけるMEP変化率に対しMann-Whitney検定を用いた。危険率は5%とした。
【結果】
追随マーカー軌跡変動係数は,左手練習前において転移群で有意な低下を認めた。また,転移群は右手の反復練習により左手MIのMEPは有意な減少を示し,その後左手による実際の運動を行った後もMEP減少は維持されていた。一方,対照群は左手練習前後にてMIのMEPは有意な増加を示し,その増加率は転移群よりも有意に大きかった。
【結論】
一側肢の練習に伴い対側非練習肢のMIは変化し,さらにその後非練習肢にて実際の運動を行った後も形成されたMIは持続する可能性が示唆された。また一側肢の練習に伴い形成された対側非練習肢のMIは非練習肢のパフォーマンスを安定させることに寄与することが示唆された。