[P-KS-44-4] 感覚間の時間的統合による運動練習効果の検証
映像遅延システムとfNIRSを用いた検討
Keywords:頭頂葉, 運動学習, 視覚フィードバック
【はじめに,目的】頭頂葉は運動結果の予測と実際の感覚フィードバックの時間的統合を担うと共に内部モデルを構築し,運動学習に貢献する(Wolpert, 1995)。しかし,その時間的統合による運動学習効果は明確でない。本研究では時間的一致と不一致による運動練習効果の検証とその効果に関連する脳活動を調査した。
【方法】対象は右利き健常大学生30名。30名をリアルタイム条件下練習群(10名),視覚フィードバックの300msec遅延条件下練習群(10名),600msec遅延条件下練習群(10名)の3群に無作為に割り付けた。練習課題は各々の条件でのペグボード課題(Movement-ABC2,PEARSON)を3試行実施した。300msec遅延群と600msec遅延群は,我々の先行研究通りに映像遅延装置(朋栄YEMエレテックス)を用い,自己手の視覚フィードバックが遅延した状態(Shimada, 2010)で練習を行い,リアルタイム群は遅延がない状態(自然状況)で行った。練習課題のプレ・ポスト測定としてリアルタイム条件でのペグボード課題(12本)を実施し,その遂行時間と短縮時間(プレ-ポスト)を成績とした。練習課題中の脳活動はfNIRS(FOIRE3000,島津製作所)を用い計測した。プロトコルは練習課題時間に合わせ安静30秒-課題30秒-安静30秒を1試行とし計3試行とした。計測部位は国際10-20法を基に頭頂葉とし縦3×横9の合計42chを用いた。解析は関心領域を正中頭頂部と左・右頭頂葉とし,神経活動の増加を示すOxy-Hb濃度長変化から効果量(Effect Size:ES)を算出した。また脳活動と行動学的指標との関連を調べる目的で練習課題におけるペグ挿入本数も記録した。解析は遂行時間のプレ・ポスト間比較と短縮時間及びESの群間比較,ESとペグ挿入本数との相関分析をSPSS Statistics 24(IBM)を用い実施した(有意水準5%)。
【結果】プレに比べポストでリアルタイム群(p=0.005)と300msec遅延群(p=0.028)の遂行時間に有意な短縮を認めたが,600msec遅延群は有意差がなかった(p=0.059)。短縮時間の群間比較では600msec遅延群に比べリアルタイム群で有意な短縮を認めた(p=0.044)。またペグ挿入本数と正中頭頂部のES(r=0.281,p=0.026),左頭頂葉のES(r=0.256,p=0.043)の間に有意な相関を認めた。
【結論】本研究は視覚フィードバック遅延下(時間的不一致)での運動練習に比べ,リアルタイム(時間的一致)での運動練習がより効果的であることを示した。そして,その成績は頭頂葉活動に関連することが示された。この結果は,頭頂葉損傷により身体性の変容を呈する患者の運動学習停滞の基礎知見になると考える。
【方法】対象は右利き健常大学生30名。30名をリアルタイム条件下練習群(10名),視覚フィードバックの300msec遅延条件下練習群(10名),600msec遅延条件下練習群(10名)の3群に無作為に割り付けた。練習課題は各々の条件でのペグボード課題(Movement-ABC2,PEARSON)を3試行実施した。300msec遅延群と600msec遅延群は,我々の先行研究通りに映像遅延装置(朋栄YEMエレテックス)を用い,自己手の視覚フィードバックが遅延した状態(Shimada, 2010)で練習を行い,リアルタイム群は遅延がない状態(自然状況)で行った。練習課題のプレ・ポスト測定としてリアルタイム条件でのペグボード課題(12本)を実施し,その遂行時間と短縮時間(プレ-ポスト)を成績とした。練習課題中の脳活動はfNIRS(FOIRE3000,島津製作所)を用い計測した。プロトコルは練習課題時間に合わせ安静30秒-課題30秒-安静30秒を1試行とし計3試行とした。計測部位は国際10-20法を基に頭頂葉とし縦3×横9の合計42chを用いた。解析は関心領域を正中頭頂部と左・右頭頂葉とし,神経活動の増加を示すOxy-Hb濃度長変化から効果量(Effect Size:ES)を算出した。また脳活動と行動学的指標との関連を調べる目的で練習課題におけるペグ挿入本数も記録した。解析は遂行時間のプレ・ポスト間比較と短縮時間及びESの群間比較,ESとペグ挿入本数との相関分析をSPSS Statistics 24(IBM)を用い実施した(有意水準5%)。
【結果】プレに比べポストでリアルタイム群(p=0.005)と300msec遅延群(p=0.028)の遂行時間に有意な短縮を認めたが,600msec遅延群は有意差がなかった(p=0.059)。短縮時間の群間比較では600msec遅延群に比べリアルタイム群で有意な短縮を認めた(p=0.044)。またペグ挿入本数と正中頭頂部のES(r=0.281,p=0.026),左頭頂葉のES(r=0.256,p=0.043)の間に有意な相関を認めた。
【結論】本研究は視覚フィードバック遅延下(時間的不一致)での運動練習に比べ,リアルタイム(時間的一致)での運動練習がより効果的であることを示した。そして,その成績は頭頂葉活動に関連することが示された。この結果は,頭頂葉損傷により身体性の変容を呈する患者の運動学習停滞の基礎知見になると考える。