第52回日本理学療法学術大会

講演情報

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-45] ポスター(基礎)P45

2017年5月14日(日) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-45-3] 地域在住高齢者における腹部引き込み時の腹横筋の筋活動の検討
せん断波エラストグラフィー機能を用いた検討

清水 厳郎1,2, 建内 宏重1, 本村 芳樹1, 中尾 彩佳1, 為沢 透1, 水上 優1, 西平 真子2, 駒村 智史2, 森下 勝行1, 正木 光裕3,4, 市橋 則明1 (1.京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻, 2.京都大学医学部人間健康科学科, 3.新潟医療福祉大学医療技術学部, 4.新潟医療福祉大学運動機能医科学研究所)

キーワード:腹横筋, 腹部引き込み, せん断波エラストグラフィー

【はじめに,目的】

腹横筋は下部体幹の安定性維持のために重要な役割を果たしており,腹部筋の萎縮は高齢者において下肢筋と同様に転倒やADL低下のリスクになるといわれている。腹部引き込み運動は背臥位において股・膝関節屈曲位で腹部をへこませる運動で,腹横筋の選択的トレーニングとして一般的に行われている。しかし,高齢者において腹部引き込み運動時の腹横筋の筋活動や腹部筋における選択性を示した報告はない。そこで本研究は,高齢者における腹部引き込み時の腹部の筋活動を若年者と比較することで高齢者の腹横筋の筋活動や選択性を明らかにし,高齢者に対する腹横筋の萎縮の予防と選択性維持のためのトレーニングを示すことを目的とした。

【方法】



対象は地域在住高齢男性55名(高齢群:77.1±5.1歳),健常成人男性16名(若年群:26.1±4.7歳)とし,対象筋は腹直筋,外腹斜筋,内腹斜筋,腹横筋とした。弾性率を超音波診断装置(SuperSonic Imagine社製)のせん断波エラストグラフィー機能を用いて計測(ICC[1,1]:0.87-0.99)し,3回の計測の平均値を算出した。弾性率は筋活動の程度を示す指標で,弾性率の変化は高値を示すほど筋活動が高いことを意味する。測定肢位は背臥位での股・膝関節90度屈曲位で,課題は骨盤中間位保持および最大後傾位保持での腹部引き込みなしと最大努力での腹部引き込みの計4条件とした。骨盤後傾筋力は,腰椎の下に設置した圧フィードバック装置の値の中間位からの変化量で評価した。腹横筋の筋活動の指標として中間位引き込みと後傾位保持,後傾位引き込みの3条件における腹横筋の弾性率の中間位保持からの変化量(以下;腹横筋変化量)と,選択性の指標として腹横筋の寄与率(腹横筋の弾性率/[腹直筋+外腹斜筋+内腹斜筋+腹横筋の弾性率])を算出した。統計処理は腹横筋変化量と腹横筋の寄与率に対して群と条件(中間位引き込みと後傾位保持,後傾位引き込みの3条件における腹横筋変化量)を2要因とする反復測定二元配置分散分析と事後検定として条件間にBonferroni補正による多重比較を,群間に対応のないt検定を行い,有意水準は5%とした。

【結果】



腹横筋変化量は条件の主効果と交互作用を認めた。条件間の比較では高齢者に差はなく,若年者においては後傾位引き込みが最も高い値を示し,後傾位保持に対して有意に高かった。群間の比較では後傾位引き込みにおいて高齢者は若年者と比較して有意に低かった。寄与率は条件にのみ主効果を認め,群間に差はなく,両群ともに骨盤中間位での引き込みが他の条件と比較して有意に高かった。

【結論】

若年者では骨盤後傾と腹部引き込みを同時に行うことで腹横筋の最大筋活動が得られたが,高齢者では中間位引き込みと骨盤後傾,後傾位引き込みで腹横筋の筋活動に差はなかった。一方,腹横筋の選択的トレーニングとしては年齢に関わらず中間位での腹部引き込みが効果的であることが示唆された。