第52回日本理学療法学術大会

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-47] ポスター(基礎)P47

2017年5月14日(日) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-47-1] ハムストリングス・大腿四頭筋比と静的・動的バランスの関係

粕渕 賢志1, 幸田 仁志2,3, 坂東 峰鳴3,4, 梅山 和也3, 藤田 浩之5, 福本 貴彦3 (1.大阪行岡医療大学, 2.京都橘大学, 3.畿央大学大学院, 4.香芝旭ヶ丘病院, 5.白鳳短期大学)

キーワード:HQ比, 静的バランス, 動的バランス

【はじめに,目的】大腿四頭筋に対するハムストリングスの筋力はhamstrings-to-quadriceps ratio(HQ比)と呼ばれている。HQ比には,求心性のハムストリングスと大腿四頭筋の筋力の関係をみたconventional HQ比と,遠心性のハムストリングスと求心性の大腿四頭筋の筋力の関係を表しているfunctional HQ比がある。どちらのHQ比も膝関節の安定性に関与していると考えられている。しかし,HQ比と動作能力との関係の報告は少なく,動作能力に最も適したHQ比については明らかではない。よって,本研究の目的は,HQ比と静的・動的バランスとの関係を調査し,HQ比の目標となる指標を検討することとした。



【方法】対象は,健常成人女性9名(年齢21.6±0.5歳)とした。筋力の測定は,等速性筋力測定器(Biodex System4,酒井医療社)を使用し,左下肢の大腿四頭筋とハムストリングスの等速性運動における求心性収縮と遠心性収縮の筋力を測定した。角速度60°/秒と180°/秒にて測定し,体重で除した値から,conventional HQ比とfunctional HQ比を算出した。静的バランスは左下肢での開眼および閉眼での片脚立位とした。測定時間は20秒間とし,重心動揺計(G-6100,ANIMA社)を使用して,総軌跡長と矩形面積を測定した。動的バランスは30cmの台から身長の半分の距離だけ前方にジャンプするsingle-leg landing balance testを実施した。測定項目は床反力計(BP400600-2000,AMTI社)を用いて,着地時の前後(anteroposterior stability index;APSI),左右(mediolateral stability index;MLSI)方向の安定性と,3方向からなるdynamic postural stability index(DPSI)を測定した。統計学的解析は,回帰分析にて二次曲線の回帰式を求め,危険率を0.05未満で有意とした。



【結果】角速度60°/秒,180°/秒でconventional HQ比は0.92±0.21,1.22±0.44であり,functional HQ比は1.00±0.27,1.34±0.52であった。片脚立位時の総軌跡長と矩形面積は,開眼にて58.4±7.2cm,9.1±1.7 cm2であり,閉眼では123.1±16.7cm,21.8±3.5 cm2であった。ジャンプ着地時のAPSIは0.03±0.01,MLSIは0.01±0.01であり,DPSIは0.72±0.06であった。角速度60°/秒のconventional HQ比とAPSI(r2=0.74,p<0.05)と,角速度60°/秒のfunctional HQ比とAPSI(r2=0.94,p<0.05)に有意な二次の曲線回帰が認められた。APSIが最も小さくなるのは,conventional HQ比では0.77のときであり,functional HQ比では0.85のときであった。その他の項目とは有意な関係は認められなかった。



【結論】conventional HQ比,functional HQ比ともに動的バランスでは最も適したHQ比が存在した。動的バランスを向上させるために膝周囲筋の筋力トレーニングをする際の指標として,角速度60°/秒のconventional HQ比,functional HQ比を用いることが可能であることが示唆された。