[P-KS-48-1] 注意方向の異なる練習方法によるCross Testの改善度の相違
Keywords:運動学習, 注意, バランス能力
【はじめに,目的】
効率的な運動学習は,早期に動作の再獲得に繋がり日常生活動作の改善に重要である。運動学習を促すための方略の一つとして,運動課題への注意の向け方が考えられる。注意の向け方として,運動中の注意を身体外部へ向けるExternal focus(EF)と身体内部に向けるInternal focus(IF)がある。EFは無意識的,反射的な運動制御過程の働きを高め運動パフォーマンスを向上させると言われているが,対象者や運動課題により効果や適応については明確になっていない。本研究の目的は,EFとIFの注意方向の異なる練習方法の違いが立位バランスに与える影響を調べ身体機能,注意機能,認知機能から検討することである。
【方法】
対象は,入院患者41人(脳血管疾患22人,整形外科疾患14人,廃用症候群5人)で,EF群(21人:平均76.2±9.5歳),IF群(20人:平均77.8±9.0歳)をランダムに2群に分けた。EF群とIF群の効果判定はCross Testを行い,立位から重心を前後,左右方向に移動させた際の面積である矩形面積とし,その拡大を改善度とした。計測はプレテスト,14日間の練習期間,7日後に保持テストを行った。教示は,EF群は重心を動かす方向の「床」へ,IF群は,対象者の「身体」へ意識を向けた。身体機能はバランス能力としてBerg Balance Scale(BBS),注意機能はTrail Making Test-A(TMT-A),認知機能はMini-Mental State Examination(MMSE)を行った。統計解析にはSPSS Statistics22を用い,EF群とIF群の改善度の検証は二元配置分散分析を行い,後検定はBonferroniの多重比較法を用いた。また,EF群,IF群のプレテストから保持テストまでの改善率とBBS,TMT-A,MMSEの関連を検討するため,スペアマンの相関係数を求めた。統計学的有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】
Cross Testの矩形面積は,プレテスト・練習期間・保持テストの順に,EF群は16777.3±9825.7mm2,19345.5±10233.8mm2,21179.3±9849.8mm2,IF群は14286.93±7915.73mm2,14940.28±8806.11mm2,14172.37±9088.08mm2でEF群において交互作用を認め,練習期間を除き有意に増加した(p<0.01)。また,BBS,TMT-A,MMSEはEF群で順に,39.8±10.5点,291.2±170.0秒,25.8±3.8点,IF群は37.9±9.1点,234.6±110.7秒,26.0±3.4点だった。EF群とIF群の改善率とBBS,TMT-A,MMSEはいずれも相関を示さなかった。
【結論】
本研究では,基礎研究として疾患を問わず軽度のバランス能力,注意機能の低下したものを対象とした。この度の研究では,EF群とIF群の改善率と身体機能,注意機能,認知機能との関係性は明らかにならなかったが,軽度のバランス能力,注意機能の低下した患者においてはEFの教示がIFの教示よりもCross Testの改善に有効であることが示唆された。要因として,EFの教示を行うことで「床」に意識が向き,足底から求心性の情報入力が得られやすくなった可能性がある。
効率的な運動学習は,早期に動作の再獲得に繋がり日常生活動作の改善に重要である。運動学習を促すための方略の一つとして,運動課題への注意の向け方が考えられる。注意の向け方として,運動中の注意を身体外部へ向けるExternal focus(EF)と身体内部に向けるInternal focus(IF)がある。EFは無意識的,反射的な運動制御過程の働きを高め運動パフォーマンスを向上させると言われているが,対象者や運動課題により効果や適応については明確になっていない。本研究の目的は,EFとIFの注意方向の異なる練習方法の違いが立位バランスに与える影響を調べ身体機能,注意機能,認知機能から検討することである。
【方法】
対象は,入院患者41人(脳血管疾患22人,整形外科疾患14人,廃用症候群5人)で,EF群(21人:平均76.2±9.5歳),IF群(20人:平均77.8±9.0歳)をランダムに2群に分けた。EF群とIF群の効果判定はCross Testを行い,立位から重心を前後,左右方向に移動させた際の面積である矩形面積とし,その拡大を改善度とした。計測はプレテスト,14日間の練習期間,7日後に保持テストを行った。教示は,EF群は重心を動かす方向の「床」へ,IF群は,対象者の「身体」へ意識を向けた。身体機能はバランス能力としてBerg Balance Scale(BBS),注意機能はTrail Making Test-A(TMT-A),認知機能はMini-Mental State Examination(MMSE)を行った。統計解析にはSPSS Statistics22を用い,EF群とIF群の改善度の検証は二元配置分散分析を行い,後検定はBonferroniの多重比較法を用いた。また,EF群,IF群のプレテストから保持テストまでの改善率とBBS,TMT-A,MMSEの関連を検討するため,スペアマンの相関係数を求めた。統計学的有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】
Cross Testの矩形面積は,プレテスト・練習期間・保持テストの順に,EF群は16777.3±9825.7mm2,19345.5±10233.8mm2,21179.3±9849.8mm2,IF群は14286.93±7915.73mm2,14940.28±8806.11mm2,14172.37±9088.08mm2でEF群において交互作用を認め,練習期間を除き有意に増加した(p<0.01)。また,BBS,TMT-A,MMSEはEF群で順に,39.8±10.5点,291.2±170.0秒,25.8±3.8点,IF群は37.9±9.1点,234.6±110.7秒,26.0±3.4点だった。EF群とIF群の改善率とBBS,TMT-A,MMSEはいずれも相関を示さなかった。
【結論】
本研究では,基礎研究として疾患を問わず軽度のバランス能力,注意機能の低下したものを対象とした。この度の研究では,EF群とIF群の改善率と身体機能,注意機能,認知機能との関係性は明らかにならなかったが,軽度のバランス能力,注意機能の低下した患者においてはEFの教示がIFの教示よりもCross Testの改善に有効であることが示唆された。要因として,EFの教示を行うことで「床」に意識が向き,足底から求心性の情報入力が得られやすくなった可能性がある。