[P-KS-50-4] 関節不安定性の制動が膝関節軟骨異化反応に及ぼす影響―組織学的・運動学的分析―
Keywords:変形性膝関節症, 関節不安定性, 関節軟骨変性
【はじめに,目的】
変形性膝関節症(以下:膝OA)の発症と進行には,メカニカルストレスと生物学的ストレスが関与する。メカニカルストレスに関しては,関節不安定性が関節軟骨破壊を導くカスケードを引き起こし,生物学的ストレスに関してはMatrix metalloproteinase(MMP)とTissue Inhibitor of Metalloproteinase(TIMP)の不均衡な発現によって,関節軟骨細胞の異化反応が亢進することが報告されている。しかし,関節不安定性の制動が膝関節軟骨異化作用に及ぼす影響は明らかにされていない。膝関節軟骨は一度損傷されると修復しないため,理学療法を含む保存療法では変性を予防することが重要である。本研究の目的は,関節不安定性の制動が関節軟骨異化作用に及ぼす影響を組織学的,運動学的に検討することとした。
【方法】
Wistar系雄性ラット(12週齢8匹)とし,異なる関節状態(ACL-T群,CAJM群)の2群に分類し,Control群としてACL-T群対側後肢を用いた。ACL-T群では,ACL脛骨付着部を外科的に切離し,CAJM群では脛骨の前方動揺を外科的に制動した。組織学的分析として,術後4週時に膝関節を採取し,関節軟骨の損傷程度を,Safranin O-Fast Green染色を用いたMankinスコアにより評価した。スコアリングはランダムに番号割り付けをした後で2名に依頼し,平均点を算出した。また,免疫組織化学染色にて抗MMP13抗体,抗TIMP1抗体にてABC法を用いてDABにて発色させた後,ヘマトキシリンによる対比染色を施行して光学顕微鏡にて観察した。運動学的分析として,術後1週,2週,4週時にアクリル板で作成した歩行路上を自由歩行させ,その様子を底面から撮影し,安定した2~3歩行周期の歩幅を画像解析ソフトImage J(1.45I)を用いて算出した。術側後肢の支持性が影響を及ぼすと考えられる,非術側後肢の歩幅を分析項目として,「(非術側の歩幅平均/両側の歩幅平均の和)×100」の式にて歩行周期における非術側後肢の占める割合を算出し,統計解析ソフトJMP Pro12を用いて解析し,有意水準は5%とした。
【結果】
Mankinスコアは,ACL-T群(平均:3.63 最大:5.5),CAJM群(平均:2.13 最大:3),Control群(平均:1.13 最大:1.5)となった。免疫組織化学染色では,最表層から中間層においてMMP13はACLT群とCAJM群で発現が認められたが,TIMP1はCAJM群でのみ発現が認められた。運動学的分析では,両群において有意差は認められなかった。
【結論】
運動学的分析として,関節不安定性を制動することが歩行に及ぼす影響を歩幅で検討したが有意差は認められなかった。しかし,組織学的分析において,CAJM群ではACL-T群と比較して軟骨の異化の予防に作用した可能性が考えられる。今後は運動力学的分析により,関節不安定性を制動することが膝関節軟骨変性に及ぼす影響を検討する必要がある。本研究は,膝関節軟骨代謝維持に向けて,異常関節運動の改善に向けた介入を行う意義を示す基礎的データの1つと成り得る。
変形性膝関節症(以下:膝OA)の発症と進行には,メカニカルストレスと生物学的ストレスが関与する。メカニカルストレスに関しては,関節不安定性が関節軟骨破壊を導くカスケードを引き起こし,生物学的ストレスに関してはMatrix metalloproteinase(MMP)とTissue Inhibitor of Metalloproteinase(TIMP)の不均衡な発現によって,関節軟骨細胞の異化反応が亢進することが報告されている。しかし,関節不安定性の制動が膝関節軟骨異化作用に及ぼす影響は明らかにされていない。膝関節軟骨は一度損傷されると修復しないため,理学療法を含む保存療法では変性を予防することが重要である。本研究の目的は,関節不安定性の制動が関節軟骨異化作用に及ぼす影響を組織学的,運動学的に検討することとした。
【方法】
Wistar系雄性ラット(12週齢8匹)とし,異なる関節状態(ACL-T群,CAJM群)の2群に分類し,Control群としてACL-T群対側後肢を用いた。ACL-T群では,ACL脛骨付着部を外科的に切離し,CAJM群では脛骨の前方動揺を外科的に制動した。組織学的分析として,術後4週時に膝関節を採取し,関節軟骨の損傷程度を,Safranin O-Fast Green染色を用いたMankinスコアにより評価した。スコアリングはランダムに番号割り付けをした後で2名に依頼し,平均点を算出した。また,免疫組織化学染色にて抗MMP13抗体,抗TIMP1抗体にてABC法を用いてDABにて発色させた後,ヘマトキシリンによる対比染色を施行して光学顕微鏡にて観察した。運動学的分析として,術後1週,2週,4週時にアクリル板で作成した歩行路上を自由歩行させ,その様子を底面から撮影し,安定した2~3歩行周期の歩幅を画像解析ソフトImage J(1.45I)を用いて算出した。術側後肢の支持性が影響を及ぼすと考えられる,非術側後肢の歩幅を分析項目として,「(非術側の歩幅平均/両側の歩幅平均の和)×100」の式にて歩行周期における非術側後肢の占める割合を算出し,統計解析ソフトJMP Pro12を用いて解析し,有意水準は5%とした。
【結果】
Mankinスコアは,ACL-T群(平均:3.63 最大:5.5),CAJM群(平均:2.13 最大:3),Control群(平均:1.13 最大:1.5)となった。免疫組織化学染色では,最表層から中間層においてMMP13はACLT群とCAJM群で発現が認められたが,TIMP1はCAJM群でのみ発現が認められた。運動学的分析では,両群において有意差は認められなかった。
【結論】
運動学的分析として,関節不安定性を制動することが歩行に及ぼす影響を歩幅で検討したが有意差は認められなかった。しかし,組織学的分析において,CAJM群ではACL-T群と比較して軟骨の異化の予防に作用した可能性が考えられる。今後は運動力学的分析により,関節不安定性を制動することが膝関節軟骨変性に及ぼす影響を検討する必要がある。本研究は,膝関節軟骨代謝維持に向けて,異常関節運動の改善に向けた介入を行う意義を示す基礎的データの1つと成り得る。