[P-KS-50-5] マウス変形性膝関節症モデルに対する振動刺激が関節軟骨に及ぼす影響
Keywords:マウス, 変形性膝関節症, 振動刺激
【はじめに,目的】
近年,変形性関節症(OA)に対する全身振動の効果や,ジグリングの臨床的効果について報告が散見される。しかし,局所への振動刺激がOAを生じた関節軟骨にどのような影響を及ぼすかは十分に検討されていない。そこで今回,マウス膝OAモデルに対し,振動刺激が関節軟骨に及ぼす影響を病理組織学的に検討することを目的として実験を行った。
【方法】
対象は10週齢のICRマウス18匹を用いた。4週間の環境順化後,無作為に4匹を抽出し,実験終了まで通常飼育するControl群とした。残りの14匹に対しては,吸入麻酔下で外科的に膝OAを作製した。その方法は,先行研究を参考に,膝内側から侵襲して内側脛骨半月靭帯と前十字靭帯を切除し,関節不安定化モデルを両側膝関節内側部に作製した。術後は8週間の通常飼育を行い,膝OAを惹起させた。8週後,無作為に介入群と非介入群にそれぞれ7匹ずつ分け,介入群には1回/日,15分間の振動刺激を4週間行った。振動刺激の装置は,電動歯ブラシの先端アタッチメントを自作して改良した自家製の装置を用い,吸入麻酔下で膝関節内側部に振動刺激を加えた。非介入群については,介入を行わずに吸入麻酔のみ4週間実施した。実験期間終了後,すべてのマウスを麻酔の過剰投与にて安楽死させ,両下肢を一塊として採取した。通常の組織標本作製手順でパラフィンブロックを作製し,滑走式ミクロトームを用いて約3μmの厚さで薄切した。その後,ヘマトキシリン・エオジン染色を行った後に,光学顕微鏡下で膝関節の関節内を観察した。膝OAの病理組織学的変化についてはGlassonらによる組織学的分類(0:正常,0.5:Safranin-O染色性低下,1:軟骨表面のわずかなfibrillation,2:表層下への亀裂と微細な欠損,3:石灰化層への亀裂またはびらんが関節面の25%未満,4:同25~50%,5:同50~75%,6:同75%以上)により評価した。
【結果】
組織学スコアについては,Control群はいずれの標本も0点であった。非介入群,介入群の順に,大腿骨軟骨は4.7±1.3(6-2),1.8±0.6(3-1),脛骨軟骨は5.5±0.5(6-5),2.2±0.6(3-1)となり,いずれも介入群の方が有意に低値を示した。組織学的所見については,非介入群のすべての標本でfibrillationが生じており,亀裂は軟骨下骨に達していた。また,軟骨層が欠損する象牙化や軟骨の壊死像も認められた。一方で介入群は,fibrillationが軟骨表層にとどまる例が多く,軟骨の壊死像は非介入群よりも少数であった。なお,Control群には異常所見は認められなかった。
【結論】
振動刺激は,OAの関節軟骨を器質的に改善させる可能性が示唆された。
近年,変形性関節症(OA)に対する全身振動の効果や,ジグリングの臨床的効果について報告が散見される。しかし,局所への振動刺激がOAを生じた関節軟骨にどのような影響を及ぼすかは十分に検討されていない。そこで今回,マウス膝OAモデルに対し,振動刺激が関節軟骨に及ぼす影響を病理組織学的に検討することを目的として実験を行った。
【方法】
対象は10週齢のICRマウス18匹を用いた。4週間の環境順化後,無作為に4匹を抽出し,実験終了まで通常飼育するControl群とした。残りの14匹に対しては,吸入麻酔下で外科的に膝OAを作製した。その方法は,先行研究を参考に,膝内側から侵襲して内側脛骨半月靭帯と前十字靭帯を切除し,関節不安定化モデルを両側膝関節内側部に作製した。術後は8週間の通常飼育を行い,膝OAを惹起させた。8週後,無作為に介入群と非介入群にそれぞれ7匹ずつ分け,介入群には1回/日,15分間の振動刺激を4週間行った。振動刺激の装置は,電動歯ブラシの先端アタッチメントを自作して改良した自家製の装置を用い,吸入麻酔下で膝関節内側部に振動刺激を加えた。非介入群については,介入を行わずに吸入麻酔のみ4週間実施した。実験期間終了後,すべてのマウスを麻酔の過剰投与にて安楽死させ,両下肢を一塊として採取した。通常の組織標本作製手順でパラフィンブロックを作製し,滑走式ミクロトームを用いて約3μmの厚さで薄切した。その後,ヘマトキシリン・エオジン染色を行った後に,光学顕微鏡下で膝関節の関節内を観察した。膝OAの病理組織学的変化についてはGlassonらによる組織学的分類(0:正常,0.5:Safranin-O染色性低下,1:軟骨表面のわずかなfibrillation,2:表層下への亀裂と微細な欠損,3:石灰化層への亀裂またはびらんが関節面の25%未満,4:同25~50%,5:同50~75%,6:同75%以上)により評価した。
【結果】
組織学スコアについては,Control群はいずれの標本も0点であった。非介入群,介入群の順に,大腿骨軟骨は4.7±1.3(6-2),1.8±0.6(3-1),脛骨軟骨は5.5±0.5(6-5),2.2±0.6(3-1)となり,いずれも介入群の方が有意に低値を示した。組織学的所見については,非介入群のすべての標本でfibrillationが生じており,亀裂は軟骨下骨に達していた。また,軟骨層が欠損する象牙化や軟骨の壊死像も認められた。一方で介入群は,fibrillationが軟骨表層にとどまる例が多く,軟骨の壊死像は非介入群よりも少数であった。なお,Control群には異常所見は認められなかった。
【結論】
振動刺激は,OAの関節軟骨を器質的に改善させる可能性が示唆された。