[P-KS-52-1] 小動物用定量負荷運動装置の試作
Keywords:ラット, 最大反復回数, 筋肥大
【はじめに,目的】臨床における筋力増強運動時の負荷量の設定について,RM(最大反復回数:repetition maximum)法の概念を取り入れることが多い。しかし,運動負荷と筋の反応に関する知見は十分ではなく,理学療法研究において負荷強度と筋肥大の関係を解明することは重要な課題である。しかし,本邦の研究機関において,倫理的な問題から筋生検などの人体へ侵襲を加える研究は非常に困難な状況にある。そこで,本研究では,運動負荷強度と筋肥大の関係を解明するための動物モデル作成を目的として行った。
【方法】8週齢のWistar系雄性ラット8匹を対照群および70%-1RM群の2群に振り分けた。先行研究を参考に作成したスクワット運動装置を用いて1RMを測定して1RMを基準に70%-1RMを決定した。同装置を用いて70%-1RM群には1RMの70%に相当する負荷を与えて,15回×15セットのスクワット運動を5回/週の頻度で8週間行わせた。また,すべてのラットの1RMは2週間ごとに1回測定し,70%-1RM群の負荷量を調整した。実験終了後,ヒラメ筋,腓腹筋,大腿四頭筋を採取した。組織を急速凍結して横断切片を作成し,ヘマトキシリン-エオジン染色後,顕微鏡にて画像撮影を行った。筋湿重量および筋湿重量/体重(筋湿重量比)に有意差の認められた下肢筋のみ,画像解析ソフトを用いて筋線維横断面積を測定し,筋線維横断面積,筋湿重量,筋湿重量比はStudent's t-検定にて比較した。また,体重および1RM,体重に対する1RMの比較は反復測定による分散分析後,Bonferroniの多重比較法にて統計学的に比較した。有意水準は5%未満とした。なお,実験期間中はすべての実験動物に標準的な固定飼料を与えて飼育した。
【結果】実験終了時の体重は対照群401.5±16.7 g,70%-1RM群342.0±12.0 g,1RMは対照群1012.5±272.0 g,70%-1RM群1925.0±221.7 g,体重に対する1RMは対照群2.5±0.6,70%-1RM群5.6±0.7であり有意差が認められた。実験終了時の筋湿重量は,対照群ヒラメ筋132.5±7.7 g,腓腹筋1993.8±133.3 g,大腿四頭筋1227.5±135.2 g,70%-1RM群ヒラメ筋133.0±20.4 g,腓腹筋1928.0±96.9 g,大腿四頭筋1142.3±87.7 g,筋湿重量比は対照群ヒラメ筋0.3±0.0,腓腹筋5.0±0.4,大腿四頭筋3.1±0.2,70%-1RM群ヒラメ筋0.9±0.0,腓腹筋5.6±.04,大腿四頭筋3.3±0.2であり,筋湿重量はヒラメ筋で,筋湿重量比はヒラメ筋および腓腹筋において有意差が認められた。ヒラメ筋筋線維横断面積は,対照群2315±370μm2,70%-1RM群2369±316μm2であり,有意差は認められなかった。
【結論】小動物用定量負荷運動装置を用いた中負荷,高頻度のスクワット運動は,1RMおよびヒラメ筋の湿重量を増加させたが,筋線維肥大は生じなかった。本研究の結果,本装置が小動物用筋力増強システムとして有用である可能性が示されたが,さらに運動の繰り返し回数やセット数などを検討する余地があると考えられた。
【方法】8週齢のWistar系雄性ラット8匹を対照群および70%-1RM群の2群に振り分けた。先行研究を参考に作成したスクワット運動装置を用いて1RMを測定して1RMを基準に70%-1RMを決定した。同装置を用いて70%-1RM群には1RMの70%に相当する負荷を与えて,15回×15セットのスクワット運動を5回/週の頻度で8週間行わせた。また,すべてのラットの1RMは2週間ごとに1回測定し,70%-1RM群の負荷量を調整した。実験終了後,ヒラメ筋,腓腹筋,大腿四頭筋を採取した。組織を急速凍結して横断切片を作成し,ヘマトキシリン-エオジン染色後,顕微鏡にて画像撮影を行った。筋湿重量および筋湿重量/体重(筋湿重量比)に有意差の認められた下肢筋のみ,画像解析ソフトを用いて筋線維横断面積を測定し,筋線維横断面積,筋湿重量,筋湿重量比はStudent's t-検定にて比較した。また,体重および1RM,体重に対する1RMの比較は反復測定による分散分析後,Bonferroniの多重比較法にて統計学的に比較した。有意水準は5%未満とした。なお,実験期間中はすべての実験動物に標準的な固定飼料を与えて飼育した。
【結果】実験終了時の体重は対照群401.5±16.7 g,70%-1RM群342.0±12.0 g,1RMは対照群1012.5±272.0 g,70%-1RM群1925.0±221.7 g,体重に対する1RMは対照群2.5±0.6,70%-1RM群5.6±0.7であり有意差が認められた。実験終了時の筋湿重量は,対照群ヒラメ筋132.5±7.7 g,腓腹筋1993.8±133.3 g,大腿四頭筋1227.5±135.2 g,70%-1RM群ヒラメ筋133.0±20.4 g,腓腹筋1928.0±96.9 g,大腿四頭筋1142.3±87.7 g,筋湿重量比は対照群ヒラメ筋0.3±0.0,腓腹筋5.0±0.4,大腿四頭筋3.1±0.2,70%-1RM群ヒラメ筋0.9±0.0,腓腹筋5.6±.04,大腿四頭筋3.3±0.2であり,筋湿重量はヒラメ筋で,筋湿重量比はヒラメ筋および腓腹筋において有意差が認められた。ヒラメ筋筋線維横断面積は,対照群2315±370μm2,70%-1RM群2369±316μm2であり,有意差は認められなかった。
【結論】小動物用定量負荷運動装置を用いた中負荷,高頻度のスクワット運動は,1RMおよびヒラメ筋の湿重量を増加させたが,筋線維肥大は生じなかった。本研究の結果,本装置が小動物用筋力増強システムとして有用である可能性が示されたが,さらに運動の繰り返し回数やセット数などを検討する余地があると考えられた。