[P-KS-52-2] ラット膝関節拘縮モデルに対する関節可動域運動が関節可動域と関節構成体に及ぼす予防効果
Keywords:ラット膝関節拘縮モデル, 関節可動域運動, 関節可動域・関節構成体
【はじめに,目的】
関節可動域運動(以下,ROM-ex.)に関する先行研究では,関節拘縮に対して関節可動域を改善させる報告はあるが,関節構成体に及ぼす病理組織学的変化について検討したものは少ない。今回,我々はラット膝関節拘縮モデルにおいて,ギプス固定期間に行う膝関節へのROM-ex.が関節可動域と関節構成体に及ぼす効果について検討することを目的とした。
【方法】
対象は8週齢のWistar系雄ラット17匹(体重262~304g)を用い,1週間の馴化後,無作為に通常飼育のみを行う群(以下,正常群)5匹,ギプス固定のみ行う群(以下,拘縮群)6匹,不動期間中にROM-ex.を行う群(以下,介入群)6匹,の3群に分けた。正常群は2週間の通常飼育を行い,拘縮群と介入群には2週間のギプス固定を行った。不動化は右後肢とし,我々の先行研究に倣いギプス固定を行った。ギプス固定の際,擦過傷ができないように留意し,浮腫の有無を確認するために,固定肢の足関節遠位部から足趾までは露出させた。ギプス固定及びROM-ex.を行う際は,イソフルラン吸入麻酔を使用し,介入群はギプス固定期間に1日1回(7回/週),介入群は不動期間中に1日1回(7回/週),ギプス固定を除去して右膝関節にROM-ex.を行った。ROM-ex.は約1Nの力で右後肢を尾側へ牽引し,その後,元の位置に戻す動作を10分間繰り返した。速度を一定に保つため,メトロノームを用い,2秒間で伸展-屈曲が1セット(1秒伸展,1秒屈曲)となるようにした。実験最終日に拘縮群と介入群は右後肢を約1Nの力で尾側へ牽引し,角度計を用い,膝関節角度(可動範囲)を測定した。介入群はROM-ex.の前後で角度を測定した。実験期間終了後,ラットを安楽死させ,右後肢膝関節を一塊として採取した。採取した膝関節は通常手技でHE染色を行い,組織標本を作製した。関節構成体の観察部位は大腿骨及び脛骨の軟骨表面と後方関節包とした。組織標本は光学顕微鏡下で観察し,病理組織学的検討を行った。統計処理は,関節可動域は一元配置分散分析を適用し,有意差を認めた場合は多重比較検定(Tukey-Kramer法)を行い,関節構成体の変化は組織標本を半定量的に分析し,Fisherの直接確率検定を行った。有意水準は5%とした(Excel統計statcel3)。
【結果】
関節可動域は拘縮群80.3±10.7°,介入前67.7±11.0°,介入後60.7±8.4°であり,拘縮群と介入後の間で有意差を認めた。組織学的所見としては,軟骨表面に膜状組織の線維増生が観察され,大腿骨の軟骨表面では正常群と介入群,拘縮群と介入群の間で線維増生の出現数に有意差が認められた。また後方関節包では密性組織への変化,うっ血や出血の所見が観察され,正常群と拘縮群,正常群と介入群の間でその出現数に有意差が認められた。
【結論】
2週間のギプス固定期間に行う1日10分のROM-ex.は,介入による効果を認めたが,関節拘縮や関節構成体の変化に対する有益な予防効果は認められなかった。
関節可動域運動(以下,ROM-ex.)に関する先行研究では,関節拘縮に対して関節可動域を改善させる報告はあるが,関節構成体に及ぼす病理組織学的変化について検討したものは少ない。今回,我々はラット膝関節拘縮モデルにおいて,ギプス固定期間に行う膝関節へのROM-ex.が関節可動域と関節構成体に及ぼす効果について検討することを目的とした。
【方法】
対象は8週齢のWistar系雄ラット17匹(体重262~304g)を用い,1週間の馴化後,無作為に通常飼育のみを行う群(以下,正常群)5匹,ギプス固定のみ行う群(以下,拘縮群)6匹,不動期間中にROM-ex.を行う群(以下,介入群)6匹,の3群に分けた。正常群は2週間の通常飼育を行い,拘縮群と介入群には2週間のギプス固定を行った。不動化は右後肢とし,我々の先行研究に倣いギプス固定を行った。ギプス固定の際,擦過傷ができないように留意し,浮腫の有無を確認するために,固定肢の足関節遠位部から足趾までは露出させた。ギプス固定及びROM-ex.を行う際は,イソフルラン吸入麻酔を使用し,介入群はギプス固定期間に1日1回(7回/週),介入群は不動期間中に1日1回(7回/週),ギプス固定を除去して右膝関節にROM-ex.を行った。ROM-ex.は約1Nの力で右後肢を尾側へ牽引し,その後,元の位置に戻す動作を10分間繰り返した。速度を一定に保つため,メトロノームを用い,2秒間で伸展-屈曲が1セット(1秒伸展,1秒屈曲)となるようにした。実験最終日に拘縮群と介入群は右後肢を約1Nの力で尾側へ牽引し,角度計を用い,膝関節角度(可動範囲)を測定した。介入群はROM-ex.の前後で角度を測定した。実験期間終了後,ラットを安楽死させ,右後肢膝関節を一塊として採取した。採取した膝関節は通常手技でHE染色を行い,組織標本を作製した。関節構成体の観察部位は大腿骨及び脛骨の軟骨表面と後方関節包とした。組織標本は光学顕微鏡下で観察し,病理組織学的検討を行った。統計処理は,関節可動域は一元配置分散分析を適用し,有意差を認めた場合は多重比較検定(Tukey-Kramer法)を行い,関節構成体の変化は組織標本を半定量的に分析し,Fisherの直接確率検定を行った。有意水準は5%とした(Excel統計statcel3)。
【結果】
関節可動域は拘縮群80.3±10.7°,介入前67.7±11.0°,介入後60.7±8.4°であり,拘縮群と介入後の間で有意差を認めた。組織学的所見としては,軟骨表面に膜状組織の線維増生が観察され,大腿骨の軟骨表面では正常群と介入群,拘縮群と介入群の間で線維増生の出現数に有意差が認められた。また後方関節包では密性組織への変化,うっ血や出血の所見が観察され,正常群と拘縮群,正常群と介入群の間でその出現数に有意差が認められた。
【結論】
2週間のギプス固定期間に行う1日10分のROM-ex.は,介入による効果を認めたが,関節拘縮や関節構成体の変化に対する有益な予防効果は認められなかった。