[P-KS-52-3] 異なる筋収縮様式がラット棘上筋腱複合体及び骨接合部に及ぼす影響
Keywords:Enthesis, 運動, 収縮様式
【はじめに,目的】
筋腱付着部関連疾患は理学療法士が対象とする疾患の中で多く目にする疾患である。腱などの軟部組織が骨に付着する部位はEnthesisと呼ばれ,4層構造を呈することで強靭な付着部を形成する。同部は機械的負荷が集中する部位であり,炎症や変形の好発部位としても報告され,特に成長期における骨端部障害やOverUseにより生じると報告されている。Enthesis関連疾患が数多く報告されている中,機械的負荷が起因として挙げられているが,収縮様式の違いが特異的変化を及ぼすかについては報告されていない。よって本研究は,収縮様式の違いがEnthesisに及ぼす影響について,組織学及び分子生物学的解析を用いることで特異性の一部を解明し,同関連疾患に対する治療介入の基礎となるデータを提示することを目的とした。
【方法】
Wistar系雄性ラット24匹(4週齢)を対象とし,運動群(Level群,Down群,Up群)と非運動群(NoRun群)各6匹に分類。対象筋は棘上筋とし,小動物用トレッドミルを用いて9,12m/minにて10分,15m/minにて40分の走行を計20日実施した。トレッドミルの傾斜角度は先行研究に基づき0度(Level群),-16度(Down群),+16度(Up群)と設定し走行させ,収縮様式は傾斜角度を変えることで変化を与えた。
組織学的解析として右肩甲帯を採取し,固定,脱灰後,パラフィンブロックより薄切し,Toluidine Blue染色を行った。
分子生物学的解析として左棘上筋・腱を使用し,IL-6,LOXのmRNA発現量比較をreal-time PCRを用いて比較した。統計的手法として正規性検定後,一元配置分散分析を行い,下位検定にTukuy法を用いた。有意水準は5%未満とした。
【結果】
組織学的結果として,NoRun群と比較し全運動介入群において線維軟骨層の拡大が観察されたが,運動介入群間での差は観察されなかった。
分子生物学的結果として,筋腱両組織において,NoRun群と比較すると全群でIL-6発現量は増加傾向を示し,LOX発現量は低下傾向を示した。特に筋組織におけるNoRun群とLevel群間でIL-6発現量は優位な増加を示し,腱組織におけるNoRun群とDown群間でLOXの有意な低下が確認された。
【結論】
全運動介入群で線維軟骨層の拡大,炎症物質の増加,collagen架橋因子の減少を認めた。よって運動介入が機械的負荷を生じさせ,Enthesis構造変化に影響を及ぼしている可能性が推察された。しかし異なる運動介入に対する反応の違いには一定の見解を得ることができず,特異性の解明には至らなかった。
Enthesis関連疾患は,先行研究上高頻度・高負荷な運動が構造変化に影響を及ぼすと報告されている。また腱組織においては遠心性収縮が高負荷を生じさせると言われているため,遠心性収縮がEnthesis構造に及ぼす影響は大きいことが推察される。しかし本研究にて,起因となる運動強度や収縮様式の再現性が低かった可能性が示唆されたため,今後介入方法や解析方法の再検討を行っていく必要がある。
筋腱付着部関連疾患は理学療法士が対象とする疾患の中で多く目にする疾患である。腱などの軟部組織が骨に付着する部位はEnthesisと呼ばれ,4層構造を呈することで強靭な付着部を形成する。同部は機械的負荷が集中する部位であり,炎症や変形の好発部位としても報告され,特に成長期における骨端部障害やOverUseにより生じると報告されている。Enthesis関連疾患が数多く報告されている中,機械的負荷が起因として挙げられているが,収縮様式の違いが特異的変化を及ぼすかについては報告されていない。よって本研究は,収縮様式の違いがEnthesisに及ぼす影響について,組織学及び分子生物学的解析を用いることで特異性の一部を解明し,同関連疾患に対する治療介入の基礎となるデータを提示することを目的とした。
【方法】
Wistar系雄性ラット24匹(4週齢)を対象とし,運動群(Level群,Down群,Up群)と非運動群(NoRun群)各6匹に分類。対象筋は棘上筋とし,小動物用トレッドミルを用いて9,12m/minにて10分,15m/minにて40分の走行を計20日実施した。トレッドミルの傾斜角度は先行研究に基づき0度(Level群),-16度(Down群),+16度(Up群)と設定し走行させ,収縮様式は傾斜角度を変えることで変化を与えた。
組織学的解析として右肩甲帯を採取し,固定,脱灰後,パラフィンブロックより薄切し,Toluidine Blue染色を行った。
分子生物学的解析として左棘上筋・腱を使用し,IL-6,LOXのmRNA発現量比較をreal-time PCRを用いて比較した。統計的手法として正規性検定後,一元配置分散分析を行い,下位検定にTukuy法を用いた。有意水準は5%未満とした。
【結果】
組織学的結果として,NoRun群と比較し全運動介入群において線維軟骨層の拡大が観察されたが,運動介入群間での差は観察されなかった。
分子生物学的結果として,筋腱両組織において,NoRun群と比較すると全群でIL-6発現量は増加傾向を示し,LOX発現量は低下傾向を示した。特に筋組織におけるNoRun群とLevel群間でIL-6発現量は優位な増加を示し,腱組織におけるNoRun群とDown群間でLOXの有意な低下が確認された。
【結論】
全運動介入群で線維軟骨層の拡大,炎症物質の増加,collagen架橋因子の減少を認めた。よって運動介入が機械的負荷を生じさせ,Enthesis構造変化に影響を及ぼしている可能性が推察された。しかし異なる運動介入に対する反応の違いには一定の見解を得ることができず,特異性の解明には至らなかった。
Enthesis関連疾患は,先行研究上高頻度・高負荷な運動が構造変化に影響を及ぼすと報告されている。また腱組織においては遠心性収縮が高負荷を生じさせると言われているため,遠心性収縮がEnthesis構造に及ぼす影響は大きいことが推察される。しかし本研究にて,起因となる運動強度や収縮様式の再現性が低かった可能性が示唆されたため,今後介入方法や解析方法の再検討を行っていく必要がある。