[P-KS-53-3] 部分的坐骨神経結紮モデルラットにおける疼痛と運動機能低下
Keywords:慢性疼痛, 神経障害性疼痛, 骨格筋
【はじめに,目的】
慢性疼痛は感覚的側面に加えて,情動・認知的側面を伴い,不動が慢性疼痛の増悪因子になることは広く知られるようになっている。慢性疼痛モデルとして部分的坐骨神経結紮(以下PSN)モデルなどの神経障害モデルや薬剤性炎症モデル,ギプス固定モデルが一般的に用いられている。これらの慢性疼痛モデルに対しトレッドミル走行などの運動負荷を加えることで,不動を回避し疼痛の改善に至ったとする研究は多くあるが,神経障害モデルではトレッドミル走行をしても疼痛に変化を認めないとする報告も見られる。不動が疼痛と関与することが常識的になっている一方で,神経障害による運動機能障害は注目されていない。今回,PSNモデルを用いて骨格筋機能の変化を検討することを目的とした。
【方法】
Wistar系雄ラット10匹をシャム(SH)群4匹,PSN群6匹に無作為に分類した。seltzerらの方法に基づいて,右坐骨神経を背側より露出し,絹糸(6-0)にて1/3~1/2結紮した。SH群では同様に坐骨神経を露出し,坐骨神経を剥離する処置まで施行した。手術前および術後1,3,5,7日,その後は1週間ごとに体重測定およびVon Frey hairとpush-pull gaugeによる疼痛行動評価を実施した。また,術後4週で麻酔下にて両側のヒラメ筋(以下SOL)と長趾伸筋(以下EDL)を摘出し,In vitroにて骨格筋張力測定を実施した。その後,筋湿重量を測定し組織学標本を作成した。筋の連続切片に対しコハク酸脱水素酵素染色(以下SDH染色),ATP-ase染色を行って筋線維タイプ別に分類し,筋線維横断面積を測定した。統計処理はF検定にて等分散の検定を行い,等分散性が仮定できればStudentの,仮定できない場合はWelchのt検定を行った。なお,危険率5%をもって統計学的有意とした。
【結果】
両群間の体重に有意な差はなかった。疼痛行動評価でPSN群の右後肢に痛覚過敏症状が認められた。右SOL(SH:0.12±0.02g,PSN:0.04±0.01g),右EDL(SH:0.09±0.01g,PSN:0.06±0.01g)の筋湿重量がSH群と比較しPSN群が有意に低値を示した。また,右SOLは筋張力測定で電気刺激を与えてもほとんど収縮を認めず,右EDLの筋張力に関してもSH群と比較しPSN群で有意な低下を認めた。左SOLの筋張力に有意な差はなかった。左EDLの筋張力はSH群に対しPSN群で有意に低下した。
【結論】
PSNモデルでは患側に痛覚過敏症と同時に筋萎縮,筋張力低下が認められ,骨格筋機能が低下することが示唆された。運動機能の低下は疼痛に起因した間接的な不動だけでなく,直接的に永続的な不動を誘発することが予測され疼痛の増悪因子になることが考えられる。この影響は慢性疼痛を考える上で無視できず,今後さらに関係性を明らかにしていく必要がある。
慢性疼痛は感覚的側面に加えて,情動・認知的側面を伴い,不動が慢性疼痛の増悪因子になることは広く知られるようになっている。慢性疼痛モデルとして部分的坐骨神経結紮(以下PSN)モデルなどの神経障害モデルや薬剤性炎症モデル,ギプス固定モデルが一般的に用いられている。これらの慢性疼痛モデルに対しトレッドミル走行などの運動負荷を加えることで,不動を回避し疼痛の改善に至ったとする研究は多くあるが,神経障害モデルではトレッドミル走行をしても疼痛に変化を認めないとする報告も見られる。不動が疼痛と関与することが常識的になっている一方で,神経障害による運動機能障害は注目されていない。今回,PSNモデルを用いて骨格筋機能の変化を検討することを目的とした。
【方法】
Wistar系雄ラット10匹をシャム(SH)群4匹,PSN群6匹に無作為に分類した。seltzerらの方法に基づいて,右坐骨神経を背側より露出し,絹糸(6-0)にて1/3~1/2結紮した。SH群では同様に坐骨神経を露出し,坐骨神経を剥離する処置まで施行した。手術前および術後1,3,5,7日,その後は1週間ごとに体重測定およびVon Frey hairとpush-pull gaugeによる疼痛行動評価を実施した。また,術後4週で麻酔下にて両側のヒラメ筋(以下SOL)と長趾伸筋(以下EDL)を摘出し,In vitroにて骨格筋張力測定を実施した。その後,筋湿重量を測定し組織学標本を作成した。筋の連続切片に対しコハク酸脱水素酵素染色(以下SDH染色),ATP-ase染色を行って筋線維タイプ別に分類し,筋線維横断面積を測定した。統計処理はF検定にて等分散の検定を行い,等分散性が仮定できればStudentの,仮定できない場合はWelchのt検定を行った。なお,危険率5%をもって統計学的有意とした。
【結果】
両群間の体重に有意な差はなかった。疼痛行動評価でPSN群の右後肢に痛覚過敏症状が認められた。右SOL(SH:0.12±0.02g,PSN:0.04±0.01g),右EDL(SH:0.09±0.01g,PSN:0.06±0.01g)の筋湿重量がSH群と比較しPSN群が有意に低値を示した。また,右SOLは筋張力測定で電気刺激を与えてもほとんど収縮を認めず,右EDLの筋張力に関してもSH群と比較しPSN群で有意な低下を認めた。左SOLの筋張力に有意な差はなかった。左EDLの筋張力はSH群に対しPSN群で有意に低下した。
【結論】
PSNモデルでは患側に痛覚過敏症と同時に筋萎縮,筋張力低下が認められ,骨格筋機能が低下することが示唆された。運動機能の低下は疼痛に起因した間接的な不動だけでなく,直接的に永続的な不動を誘発することが予測され疼痛の増悪因子になることが考えられる。この影響は慢性疼痛を考える上で無視できず,今後さらに関係性を明らかにしていく必要がある。