The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-55] ポスター(基礎)P55

Sun. May 14, 2017 1:00 PM - 2:00 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-55-3] 対人ライトタッチを用いた立位姿勢動揺における協力的な身体同調課題は暗黙的な身体同調を増加させる

石垣 智也1,3, 森岡 周1,2 (1.畿央大学大学院健康科学研究科神経リハビリテーション学研究室, 2.畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター, 3.訪問看護リハビリステーションフィットケア)

Keywords:身体接触, 身体同調, 姿勢制御

【はじめに,目的】

二者間で指先を用いた軽い身体接触(対人ライトタッチ)を行うと,立位姿勢動揺に身体同調現象が認められる(Johannsen L,2009)。身体同調は非言語的コミュニケーションのひとつとされており,暗黙的な身体同調は,明示的な身体同調後に増加することが知られている(Yun K, 2012)。しかし,明示的な身体同調をもたらす課題特性の違いが,暗黙的な身体同調に及ぼす影響は検討されていない。本研究では,明示的な身体同調は伴うものの,その課題特性が協力的か否かという違いが,対人ライトタッチによる立位姿勢動揺の暗黙的な身体同調に及ぼす影響について検討することを目的とした。


【方法】

面識のある健常同性若年者からなる16ペア(32名)を,協力的同調群8ペア(平均年齢20.9±1.4歳)と非協力的同調群8ペア(平均年齢21.6±3.7歳)に群分けし,立位姿勢動揺の二者同時測定を行った。立位条件は,二者を側方に位置させた閉眼開脚安静立位を基準に,非接触(NT)条件と,示指を介して相互接触(1N未満)を行う対人ライトタッチ(IPLT)条件とした。測定は,NT条件,IPLT条件の順で3試行ずつ実施した後に,明示的な身体同調課題を行い,再度,NT条件とIPLT条件の測定を課題前と同様に行った。測定時間は全て30秒間とした。明示的な身体同調課題はIPLT条件の設定で行い,ペアの各々にリーダーとフォロワーの役割を設定し,それぞれ2回ずつ役割を交代して4試行実施した。協力的同調群では,リーダーは任意の方向にランダムな体重移動を行うが,接触している示指の感覚に基づきリーダーの体動に自己の体動を追従することを求めるフォロワーと協力する課題とした。非協力的同調群では,リーダーはフォロワーとの協力は求めず,0.5Hzの音刺激に合わせて前後または左右に体重移動を行い,フォロワーはリーダーの体動に追従する課題とした。姿勢動揺は,重心動揺計Twin-Gravicorder G-6100(ANIMA社製)を用い,足圧中心(CoP)を記録(sampling rate:100Hz)した。解析値には,CoP速度の前後(AP)軸・側方(ML)軸別における相互相関係数(CoPv-Xcorr)のピーク値を用いた。統計解析は,CoPv-Xcorrの比較を群と課題前後の二要因からなる分散分析にて行った。有意水準は5%とした。


【結果】

IPLT条件のAP軸にのみ有意な交互作用を認め(p<.01),協力的同調群は課題後にCoPv-Xcorrが有意に増加し(p<.01),非協力的同調群よりも有意に高値を示した(p<.05)。他の条件,項目では有意な交互作用および主効果は認めなった。


【結論】

対人ライトタッチによる立位姿勢動揺の暗黙的な身体同調の増加には,協力的な課題特性を有する身体同調経験が関与することが示された。運動療法は対象者の身体に触れて行うことが多く,対象者と協働することが求められる。本研究結果より,身体接触を介して協力的状況下で行われる運動療法には,非言語的コミュニケーションとして機能している側面があると考えられる。