[P-KS-55-2] 仮想壁に対する指先への振動刺激が姿勢制御に与える影響
Keywords:Light Touch contact, Virtual Light Touch contact, 姿勢制御
【はじめに,目的】
指先での軽い接触(Light Touch contact:以下LT)は姿勢動揺を軽減させ,身体の安定化に貢献することは報告されているが,LTによる効果を得るためにはカーテンや壁などの「固定点への接触」が不可欠であると考えられている。そこでshimaらはLTをコンセプトとし,固定点がない空間でもLT効果を得られることを目的とした,工学的手法を用いることで仮装壁に対する指先への振動刺激を与えるデバイスであるVirtual Light Touch contact system(以下VLT)を開発し,立位機能評価に対する有効性を報告している(sakata, shima, et al., 2015)。しかし,VLTが姿勢制御に与える影響は明らかにされていないため,本研究はVLTが姿勢制御に与える影響を検証することを目的として検証した。
【方法】
対象者は健常成人女子6名とした。先行研究(Baldan, et al., 2014)を参考に,Control条件は閉眼閉脚立位で両上肢は自然な体側下垂位とした(No touch条件:以下NT条件)。比較条件として,対象者の右横に垂らした紙に指尖で軽く触れさせるLT条件,被験者の右示指に振動子と加速度計を内蔵した装置を装着させ,右上肢を振ることで振動子から振動刺激が与えられるVLT条件の3条件を設定した。尚,VLT条件の時は,被験者に「まるで壁に触れるように手を振ってください」と口頭指示を行った。姿勢動揺の測定には重心動揺計GP-6000(ANIMA社製)を用い,サンプリング周波数は50Hz,測定時間は60秒とした。VLT systemには3軸加速度計,小型振動子を使用した。測定項目は総軌跡長,外周面積,実効値面積,前後重心動揺速度,重心動揺速度の実効値を使用し,各条件の重心動揺パラメータの比較を対応のある一元配置分散分析(多重比較検定法Bonferroni法)を用いて比較した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
3群間において,総軌跡長,前後重心動揺速度,重心動揺速度の実効値の項目で,VLT条件がNT条件と比較して有意な減少を認めた(p<0.05)。また,有意差が出るには至らなかったが,LT条件もNT条件と比較すると上記の項目で減少傾向を示した(総軌跡長:p=0.1332,前後重心動揺速度:p=0.1504,重心動揺速度の実効値:p=0.2376)。
【結論】
重心動揺速度はCOMの加速度と相関しており(Masani, et al., 2014),本研究結果より,総軌跡長,及び前後重心動揺速度が減少したことから,VLTはLTと同様かそれ以上の姿勢動揺軽減効果を得られることが示唆される結果となった。さらに,重心動揺速度の実効値が減少したことから,VLTは対象者の重心動揺速度のばらつきを抑え,一定の速度で姿勢制御の調節が可能になることが示唆された。またVLTにより姿勢動揺の軽減が得られた要因として,LTによる姿勢制御への影響は指尖から得られる求心性情報が必要である(Kouzaki, 2008)と報告されており,VLTによる姿勢動揺軽減効果も指尖への振動刺激が姿勢制御の感覚戦略に影響したと推測されるが,今後の検証が必要である。
指先での軽い接触(Light Touch contact:以下LT)は姿勢動揺を軽減させ,身体の安定化に貢献することは報告されているが,LTによる効果を得るためにはカーテンや壁などの「固定点への接触」が不可欠であると考えられている。そこでshimaらはLTをコンセプトとし,固定点がない空間でもLT効果を得られることを目的とした,工学的手法を用いることで仮装壁に対する指先への振動刺激を与えるデバイスであるVirtual Light Touch contact system(以下VLT)を開発し,立位機能評価に対する有効性を報告している(sakata, shima, et al., 2015)。しかし,VLTが姿勢制御に与える影響は明らかにされていないため,本研究はVLTが姿勢制御に与える影響を検証することを目的として検証した。
【方法】
対象者は健常成人女子6名とした。先行研究(Baldan, et al., 2014)を参考に,Control条件は閉眼閉脚立位で両上肢は自然な体側下垂位とした(No touch条件:以下NT条件)。比較条件として,対象者の右横に垂らした紙に指尖で軽く触れさせるLT条件,被験者の右示指に振動子と加速度計を内蔵した装置を装着させ,右上肢を振ることで振動子から振動刺激が与えられるVLT条件の3条件を設定した。尚,VLT条件の時は,被験者に「まるで壁に触れるように手を振ってください」と口頭指示を行った。姿勢動揺の測定には重心動揺計GP-6000(ANIMA社製)を用い,サンプリング周波数は50Hz,測定時間は60秒とした。VLT systemには3軸加速度計,小型振動子を使用した。測定項目は総軌跡長,外周面積,実効値面積,前後重心動揺速度,重心動揺速度の実効値を使用し,各条件の重心動揺パラメータの比較を対応のある一元配置分散分析(多重比較検定法Bonferroni法)を用いて比較した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
3群間において,総軌跡長,前後重心動揺速度,重心動揺速度の実効値の項目で,VLT条件がNT条件と比較して有意な減少を認めた(p<0.05)。また,有意差が出るには至らなかったが,LT条件もNT条件と比較すると上記の項目で減少傾向を示した(総軌跡長:p=0.1332,前後重心動揺速度:p=0.1504,重心動揺速度の実効値:p=0.2376)。
【結論】
重心動揺速度はCOMの加速度と相関しており(Masani, et al., 2014),本研究結果より,総軌跡長,及び前後重心動揺速度が減少したことから,VLTはLTと同様かそれ以上の姿勢動揺軽減効果を得られることが示唆される結果となった。さらに,重心動揺速度の実効値が減少したことから,VLTは対象者の重心動揺速度のばらつきを抑え,一定の速度で姿勢制御の調節が可能になることが示唆された。またVLTにより姿勢動揺の軽減が得られた要因として,LTによる姿勢制御への影響は指尖から得られる求心性情報が必要である(Kouzaki, 2008)と報告されており,VLTによる姿勢動揺軽減効果も指尖への振動刺激が姿勢制御の感覚戦略に影響したと推測されるが,今後の検証が必要である。