[P-MT-02-4] 変形性膝関節症患者の歩行能力に影響する因子の検討
体幹運動速度に着目して
Keywords:変形性膝関節症, 歩行速度, 体幹
【はじめに,目的】
高齢者にとって,歩行速度はADLの自立度や生命予後との関わりが示されている有用な指標である。歩行速度を規定する様々な要因の中で,近年,体幹機能と運動速度の重要性が指摘されており,このことから我々は,体幹を素早く動かす能力を評価するSeated Side Tapping test(SST)を開発し,検証を重ねてきた。さらに,TKA術後患者に対し,SSTをトレーニングとして実施することで歩行速度が改善することを本学会で報告した。これらのことに基づくと,TKAを実施せず保存的に加療されている変形性膝関節症(膝OA)患者の歩行においても,体幹の運動速度が重要であることが予想される。その関係性を明らかにすることは,膝OA患者の歩行速度を改善する,より効果的な運動療法を実施できる可能性を示唆すると考える。そこで本研究では,膝OA患者の体幹運動速度と歩行速度との関係を明らかにすることを目的とした。
【方法】
膝OAと診断された患者104名を対象とした。60歳以上,運動制限が必要な合併症がないことを対象者の選択条件とした。本研究では,年齢,身長,体重と,5mの最大歩行速度,術測膝伸展筋力,膝関節角度,歩行時の疼痛をVisual analog scale(VAS)を用いて測定した。体幹運動速度としてSSTを測定した。SSTは,座位で両上肢を側方に挙上し,10cm離した位置に設置したマーカーを交互にできるだけ速く10回叩き,要した時間を測定した。
統計処理は以下の方法を用いて実施した。まず,歩行速度と各因子の関連性の検討にPearsonの相関係数を求めた。さらに歩行速度を従属変数,歩行速度と相関が認められた項目を独立変数として重回帰分析を行った。全ての統計解析には,SPSS Ver.24.0を用い,危険率5%未満を有意とした。
【結果】
対象者は,年齢76.0±7.2歳,身長152.0±7.6cm,体重60.3±9.5kg,性別は男性22例,女性82例であった。歩行速度の平均は1.17±0.43m/sec,SSTの平均は6.7±1.5secであった。歩行速度と有意な相関を認めた項目は,年齢(r=-0.21,p<0.05),身長(r=0.33,p<0.01),SST(r=-0.55,p<0.01),膝伸展筋力(r=0.54,p<0.01),膝関節屈曲角度(r=0.28,p<0.01),VAS(r=-0.28,p<0.01)であった。歩行速度を従属変数とし,重回帰分析を行った結果,SST(β=-0.40),膝伸展筋力(β=0.35),膝関節屈曲角度(β=0.22),VAS(β=-0.18)が有意な項目として選択され,自由度調整済み決定係数(R2)は0.50であった。
【結論】
膝OA患者の歩行速度と体幹運動速度及び膝関節機能に有意な相関が示され,さらに重回帰分析によってSSTが選択された。このことから,膝OA患者の体幹運動速度は歩行速度に影響を与える因子であることが明らかとなった。
膝OA患者の保存的治療では,除痛や膝関節機能に着目した運動療法が推奨されている。今回の研究結果から,体幹運動速度にも着目し運動療法を実施することで,より効果的に歩行速度が改善する可能性が示唆された。
高齢者にとって,歩行速度はADLの自立度や生命予後との関わりが示されている有用な指標である。歩行速度を規定する様々な要因の中で,近年,体幹機能と運動速度の重要性が指摘されており,このことから我々は,体幹を素早く動かす能力を評価するSeated Side Tapping test(SST)を開発し,検証を重ねてきた。さらに,TKA術後患者に対し,SSTをトレーニングとして実施することで歩行速度が改善することを本学会で報告した。これらのことに基づくと,TKAを実施せず保存的に加療されている変形性膝関節症(膝OA)患者の歩行においても,体幹の運動速度が重要であることが予想される。その関係性を明らかにすることは,膝OA患者の歩行速度を改善する,より効果的な運動療法を実施できる可能性を示唆すると考える。そこで本研究では,膝OA患者の体幹運動速度と歩行速度との関係を明らかにすることを目的とした。
【方法】
膝OAと診断された患者104名を対象とした。60歳以上,運動制限が必要な合併症がないことを対象者の選択条件とした。本研究では,年齢,身長,体重と,5mの最大歩行速度,術測膝伸展筋力,膝関節角度,歩行時の疼痛をVisual analog scale(VAS)を用いて測定した。体幹運動速度としてSSTを測定した。SSTは,座位で両上肢を側方に挙上し,10cm離した位置に設置したマーカーを交互にできるだけ速く10回叩き,要した時間を測定した。
統計処理は以下の方法を用いて実施した。まず,歩行速度と各因子の関連性の検討にPearsonの相関係数を求めた。さらに歩行速度を従属変数,歩行速度と相関が認められた項目を独立変数として重回帰分析を行った。全ての統計解析には,SPSS Ver.24.0を用い,危険率5%未満を有意とした。
【結果】
対象者は,年齢76.0±7.2歳,身長152.0±7.6cm,体重60.3±9.5kg,性別は男性22例,女性82例であった。歩行速度の平均は1.17±0.43m/sec,SSTの平均は6.7±1.5secであった。歩行速度と有意な相関を認めた項目は,年齢(r=-0.21,p<0.05),身長(r=0.33,p<0.01),SST(r=-0.55,p<0.01),膝伸展筋力(r=0.54,p<0.01),膝関節屈曲角度(r=0.28,p<0.01),VAS(r=-0.28,p<0.01)であった。歩行速度を従属変数とし,重回帰分析を行った結果,SST(β=-0.40),膝伸展筋力(β=0.35),膝関節屈曲角度(β=0.22),VAS(β=-0.18)が有意な項目として選択され,自由度調整済み決定係数(R2)は0.50であった。
【結論】
膝OA患者の歩行速度と体幹運動速度及び膝関節機能に有意な相関が示され,さらに重回帰分析によってSSTが選択された。このことから,膝OA患者の体幹運動速度は歩行速度に影響を与える因子であることが明らかとなった。
膝OA患者の保存的治療では,除痛や膝関節機能に着目した運動療法が推奨されている。今回の研究結果から,体幹運動速度にも着目し運動療法を実施することで,より効果的に歩行速度が改善する可能性が示唆された。