[P-MT-09-4] 人工膝関節置換術症例の大腿骨前脂肪体に対する治療効果
―膝関節可動域と大腿骨前脂肪体組織弾性との関係―
Keywords:大腿骨前脂肪体, TKA, Shear Wave Elastography
【はじめに】
人工膝関節置換術（TKA）症例の関節可動域（ROM）制限には様々な原因があげられ，膝関節周囲の脂肪体硬化も原因の一つである。大腿骨前脂肪体（PFP）は膝蓋上嚢（SPP）の直下に存在し，膝関節の疼痛やROM制限に関与するとされている。我々は，TKA症例の膝ROMとPFP柔軟性が関連することを報告した。臨床において，PFPの柔軟性改善によって膝ROMが向上することを経験するが，客観的に検討した報告は認められない。そこで本研究の目的は，TKAにおけるPFPの柔軟性を超音波エコー（US）にて評価し，PFPの柔軟性改善による膝屈曲ROMの変化について検討することである。
【方法】
対象は，TKA症例23例27膝（男性3人，女性20人，平均年齢75.1±7.4歳）とし，PFP治療前後におけるPFP組織弾性，膝ROMを測定した。
PFP組織弾性は，US（AIXPLORER，コニタミノルタ社製）のShear Wave Elastographyを用いて，膝伸展位（E）と膝90度屈曲位（F90）とでPFP治療前後に各6回測定し，その平均値を算出した。検討項目は，PFP治療前後のPFP組織弾性および膝屈曲・伸展ROMを比較した。PFPの治療は，PFPの柔軟性改善操作を5分間施行した。また，検査測定及び治療は，同一者が施行した。統計処理は対応のあるt検定，ウィルコクソン検定を用い，有意水準を5%未満とした。
【結果】
PFP組織弾性（治療前：治療後）は，Eが4.37m/s：3.05m/s，F90が4.06m/s：3.13m/sであり，EおよびF90ともにPFP治療後に有意な低下を示した（p＜0.01）。膝伸展ROM（治療前：治療後）は7.2°：3.2°，膝屈曲ROM（治療前：治療後）は112.9°：119.9°であり，治療後に有意な改善を示した（p＜0.01）。
【結論】
PFPは，大腿骨とSPPとの間に存在する脂肪組織である。PFPの機能は，大腿四頭筋の収縮効率の補助，膝蓋大腿関節の内圧調節，膝関節屈伸運動時におけるSPPの滑走性維持などであり，膝関節の屈伸運動時に重要な役割を担っている。我々の先行研究では，TKA症例では健常人とで比較し，PFP柔軟性がEで14％，F120で37％減少し，PFP柔軟性と膝ROMとで負の相関を認めた。今回，TKA症例に対するPFPの柔軟性改善により，膝伸展・屈曲ROMの拡大が認められた。これは我々の先行研究で，TKA症例に対する膝蓋下脂肪体の柔軟性改善が，膝屈曲・伸展ROMの拡大に有効であったのと同様の結果となった。このことから，膝屈曲・伸展ROM制限のあるTKA症例に対して，PFPの柔軟性改善操作が運動療法の一方法として有効であるものと考えられた。
人工膝関節置換術（TKA）症例の関節可動域（ROM）制限には様々な原因があげられ，膝関節周囲の脂肪体硬化も原因の一つである。大腿骨前脂肪体（PFP）は膝蓋上嚢（SPP）の直下に存在し，膝関節の疼痛やROM制限に関与するとされている。我々は，TKA症例の膝ROMとPFP柔軟性が関連することを報告した。臨床において，PFPの柔軟性改善によって膝ROMが向上することを経験するが，客観的に検討した報告は認められない。そこで本研究の目的は，TKAにおけるPFPの柔軟性を超音波エコー（US）にて評価し，PFPの柔軟性改善による膝屈曲ROMの変化について検討することである。
【方法】
対象は，TKA症例23例27膝（男性3人，女性20人，平均年齢75.1±7.4歳）とし，PFP治療前後におけるPFP組織弾性，膝ROMを測定した。
PFP組織弾性は，US（AIXPLORER，コニタミノルタ社製）のShear Wave Elastographyを用いて，膝伸展位（E）と膝90度屈曲位（F90）とでPFP治療前後に各6回測定し，その平均値を算出した。検討項目は，PFP治療前後のPFP組織弾性および膝屈曲・伸展ROMを比較した。PFPの治療は，PFPの柔軟性改善操作を5分間施行した。また，検査測定及び治療は，同一者が施行した。統計処理は対応のあるt検定，ウィルコクソン検定を用い，有意水準を5%未満とした。
【結果】
PFP組織弾性（治療前：治療後）は，Eが4.37m/s：3.05m/s，F90が4.06m/s：3.13m/sであり，EおよびF90ともにPFP治療後に有意な低下を示した（p＜0.01）。膝伸展ROM（治療前：治療後）は7.2°：3.2°，膝屈曲ROM（治療前：治療後）は112.9°：119.9°であり，治療後に有意な改善を示した（p＜0.01）。
【結論】
PFPは，大腿骨とSPPとの間に存在する脂肪組織である。PFPの機能は，大腿四頭筋の収縮効率の補助，膝蓋大腿関節の内圧調節，膝関節屈伸運動時におけるSPPの滑走性維持などであり，膝関節の屈伸運動時に重要な役割を担っている。我々の先行研究では，TKA症例では健常人とで比較し，PFP柔軟性がEで14％，F120で37％減少し，PFP柔軟性と膝ROMとで負の相関を認めた。今回，TKA症例に対するPFPの柔軟性改善により，膝伸展・屈曲ROMの拡大が認められた。これは我々の先行研究で，TKA症例に対する膝蓋下脂肪体の柔軟性改善が，膝屈曲・伸展ROMの拡大に有効であったのと同様の結果となった。このことから，膝屈曲・伸展ROM制限のあるTKA症例に対して，PFPの柔軟性改善操作が運動療法の一方法として有効であるものと考えられた。