[P-MT-10-1] 変形性股関節症に対して人工股関節全置換術を施行した女性患者の歩行速度1.0m/secに関わる要因と判断基準
Keywords:変形性股関節症, 人工股関節全置換術, 歩行速度
【はじめに,目的】
高齢化・長寿化が進む我が国では,運動器障害が増加しており,要介護者増加の原因となっている。そのような背景の中,変形性股関節症(以下,股OA)は女性に多く,股OAによる人工股関節全置換術(THA)の術後患者も増加している。そのためTHA術後の理学療法では,歩行自立だけでなく,健康寿命の延伸と介護予防を目標としたアプローチも重要となっている。
そこで本研究では,将来の要介護発生に関わるとされている歩行速度1.0m/secという基準を用いて,自宅退院前の歩行速度1.0m/secに関わる要因と判断基準を検討することを目的とする。
【方法】
対象は当院で股OAに対して初回THA術後に理学療法を施行し,術後重篤な合併症がなく,自宅退院した女性患者91例(平均年齢64.4±9.2歳)とした。
調査項目は基本属性として,年齢,BMI,術前JOA Hip score(以下,JOA),術前・術後歩行手段(杖・独歩orその他),非術側の股OAの有無,DDHの有無,画像所見(CE角,Sharp角,AHI),入院期間,評価日を調査した。また運動機能の評価は,VAS(安静時,歩行時),脚長差(2cm以上)の有無,ROM(股屈曲・伸展),等尺性筋力(股関節外転,膝関節伸展),片脚立位保持時間(以下,片脚立位),6MWT,TUGを測定した。
10m歩行時間から歩行速度を算出し,歩行速度が1.0m/sec以上であった患者を歩行速度正常群(以下正常群),1.0m/sec未満であった患者を歩行速度低下群(以下低下群)とし2群に分けた。
統計解析は,正常群と低下群で基本属性,運動機能の比較をMann Whitney U検定,χ2検定を用いて検討した。さらに単変量解析にて有意であった項目を独立変数,歩行速度正常群・低下群を従属変数とした二項ロジスティック回帰分析を行った。歩行速度に独立して影響するとされた因子については,ROC曲線を用いて,正常群と低下群を最適に分類するためのカットオフ値と曲線下面積(AUC)を求めた。全ての統計処理はSPSS Statistics 23を用い,危険率5%を有意水準とした。
【結果】
歩行速度の結果から低下群の割合は19.8%であった。2群間の比較では,JOA(術側),歩行手段(術前・術後),AHI(非術側),ROM(両側股伸展),筋力(両側股外転,非術側膝伸展),片脚立位(両側),TUGで有意差を認めた。多変量解析の結果から,歩行速度に独立して関わる因子として非術側片脚立位が抽出された[オッズ比0.97。95%信頼区間(0.95-0.99,p=0.04)]。ROC曲線のAUCは0.78(p<0.01)であり,歩行速度1.0m/sec以上を判断するためのカットオフ値は19.7sec(感度71%,特異度72.2%)であった。
【結論】
本研究の結果からTHA術後患者の19.8%が低下群であった。自宅退院前の歩行速度1.0m/secは,術前の基本属性の影響をうけ,非術側の片脚立位能力が重要であることが示された。股OAに対してTHAを施行した女性患者の将来的な健康寿命の延伸と介護予防に向けて,低下群は運動機能の中でも非術側の片脚立位保持時間を向上させていくことが重要である。
高齢化・長寿化が進む我が国では,運動器障害が増加しており,要介護者増加の原因となっている。そのような背景の中,変形性股関節症(以下,股OA)は女性に多く,股OAによる人工股関節全置換術(THA)の術後患者も増加している。そのためTHA術後の理学療法では,歩行自立だけでなく,健康寿命の延伸と介護予防を目標としたアプローチも重要となっている。
そこで本研究では,将来の要介護発生に関わるとされている歩行速度1.0m/secという基準を用いて,自宅退院前の歩行速度1.0m/secに関わる要因と判断基準を検討することを目的とする。
【方法】
対象は当院で股OAに対して初回THA術後に理学療法を施行し,術後重篤な合併症がなく,自宅退院した女性患者91例(平均年齢64.4±9.2歳)とした。
調査項目は基本属性として,年齢,BMI,術前JOA Hip score(以下,JOA),術前・術後歩行手段(杖・独歩orその他),非術側の股OAの有無,DDHの有無,画像所見(CE角,Sharp角,AHI),入院期間,評価日を調査した。また運動機能の評価は,VAS(安静時,歩行時),脚長差(2cm以上)の有無,ROM(股屈曲・伸展),等尺性筋力(股関節外転,膝関節伸展),片脚立位保持時間(以下,片脚立位),6MWT,TUGを測定した。
10m歩行時間から歩行速度を算出し,歩行速度が1.0m/sec以上であった患者を歩行速度正常群(以下正常群),1.0m/sec未満であった患者を歩行速度低下群(以下低下群)とし2群に分けた。
統計解析は,正常群と低下群で基本属性,運動機能の比較をMann Whitney U検定,χ2検定を用いて検討した。さらに単変量解析にて有意であった項目を独立変数,歩行速度正常群・低下群を従属変数とした二項ロジスティック回帰分析を行った。歩行速度に独立して影響するとされた因子については,ROC曲線を用いて,正常群と低下群を最適に分類するためのカットオフ値と曲線下面積(AUC)を求めた。全ての統計処理はSPSS Statistics 23を用い,危険率5%を有意水準とした。
【結果】
歩行速度の結果から低下群の割合は19.8%であった。2群間の比較では,JOA(術側),歩行手段(術前・術後),AHI(非術側),ROM(両側股伸展),筋力(両側股外転,非術側膝伸展),片脚立位(両側),TUGで有意差を認めた。多変量解析の結果から,歩行速度に独立して関わる因子として非術側片脚立位が抽出された[オッズ比0.97。95%信頼区間(0.95-0.99,p=0.04)]。ROC曲線のAUCは0.78(p<0.01)であり,歩行速度1.0m/sec以上を判断するためのカットオフ値は19.7sec(感度71%,特異度72.2%)であった。
【結論】
本研究の結果からTHA術後患者の19.8%が低下群であった。自宅退院前の歩行速度1.0m/secは,術前の基本属性の影響をうけ,非術側の片脚立位能力が重要であることが示された。股OAに対してTHAを施行した女性患者の将来的な健康寿命の延伸と介護予防に向けて,低下群は運動機能の中でも非術側の片脚立位保持時間を向上させていくことが重要である。