The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

Presentation information

日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-10] ポスター(運動器)P10

Fri. May 12, 2017 12:50 PM - 1:50 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-10-4] THA後5カ月に患者が考える歩容を満足させる因子の検討

臼井 友一 (東京慈恵会医科大学附属病院リハビリテーション科)

Keywords:THA, 歩容, 満足度

【はじめに,目的】

人工股関節全置換術(以下THA)は歩行能力を向上させる有効な治療手段であるが,歩容満足度に関しては十分に満足していない患者がいるとの報告もある。本研究の目的はTHA後の歩容満足度の違いから,その関連因子を検討し,満足度の向上を目指した治療の一助とすることである。

【方法】

対象は本大学附属4病院にて2010年1月から2016年3月までに片側変形性股関節症の診断を受け,初回THAを施行した,術後合併症のない183例(男性41例,女性142例,平均年齢65.9±9.1歳)とした。調査項目は術後5か月における「歩き姿」の満足度,歩容,年齢,性別,BMI,股関節可動域(屈曲,伸展),股関節外転筋力(Nm/kg),股関節痛(歩行時痛,階段昇降時痛),5m歩行速度(m/s),片脚立位能力とした。「歩き姿」の満足度は5段階尺度(5:満足~1:不満足)を使用し,5.4を満足群(以下A群),1.2を不満足群(以下B群)として分類した。歩容は術側に跛行なしとありで分類した。股関節伸展は計測後10度以上と10度未満に分類した。股関節外転筋力は,Hand held Dynamometer(アニマ社製,ミュータスF1)を用い,背臥位にて股関節内外転中間位で5秒間の等尺性筋力を測定し,大腿長を乗じ体重で除したトルク体重比で正規化した。痛みは5段階尺度(5:痛くない~1:激しく痛む)を使用した。片脚立位は,示指での手すり支持は許可し,5秒間保持させ,骨盤と両肩峰の前額面上の傾斜よりT-signやD-sign(以下sign)の有無で分類した。統計処理は年齢,BMI,股関節屈曲角度,股関節外転筋力,5m歩行速度は2標本t検定を用い,股関節痛(中央値)はMann-WhitneyのU検定を,性別,跛行の有無,股関節伸展角度,片脚立位能力はχ2検定(SPSS Ver20)を使用し,有意水準は5%未満とした。また,2群間で有意差が認められた項目についてロジスティック回帰分析を行った。

【結果】

A群は152例,B群は31例であった。両群の基礎項目,片脚立位signの有無,股関節伸展角度には有意差を認めなかった。一方,跛行の有無に関しては,跛行なし98例(64.5%)/11例(35.5%),跛行あり54例(35.5%)/20例(64.5%),股関節屈曲角度97.2±12.6/89.8±13.8,股関節外転筋力0.98±0.44/0.74±0.33,5m歩行速度1.56±0.33/1.18±0.40,歩行時痛の5/3,階段昇降時痛5/3であり有意差を認めた。ロジスティック回帰分析の結果,「歩き姿」の満足度に関わる因子は5m歩行速度と歩行時痛が抽出された。

【結論】

歩容の満足度は歩行時の股関節痛の程度や歩行速度の影響が示唆された。THA後の遷延化疼痛に関する調査結果はいくつか報告されており,疼痛性跛行が満足度に影響したと推測する。また,歩行速度は歩容満足度との相関があると報告されているが,本研究の結果から,跛行の有無のような外観的な因子ではなく,歩行速度というより実用的な能力が満足度に影響を与えていると考えられた。今後は性別や社会的役割の違いや縦断的な研究なども実施し,患者の歩容満足度向上に活かしたいと考える。