The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-11] ポスター(運動器)P11

Fri. May 12, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-11-2] 地域在住高齢者における運動器慢性痛と日常生活動作の関係

村田 峻輔1, 小野 玲1, 小俣 純一2, 遠藤 達矢3, 大谷 晃司4 (1.神戸大学大学院保健学研究科, 2.福島県立医科大学新医療系学部設置準備室, 3.福島県立医科大学会津医療センターリハビリテーション科, 4.福島県立医科大学整形外科)

Keywords:日常生活動作, 運動器慢性痛, 疫学

【はじめに,目的】

地域在住高齢者において運動器慢性痛は有病率が高く,その部位数によって健康アウトカム(転倒,抑うつ症状)への影響が異なることが報告されてきている。しかし,運動器慢性痛を多関節慢性痛,特に広範囲慢性痛(右・左半身の両方,上・下半身の両方,体軸部すべてに慢性痛を有する)へ分類し,日常生活動作能力(Activity of daily living:ADL)と各項目について検討した研究はない。本研究の目的は地域在住高齢者において運動器慢性痛を部位数によって分類し,ADLと各ADL項目との関係を検討することである。

【方法】

対象者は特定健診に参加し,同意を得られた65歳以上の地域在住高齢者で欠損値のない1,876名とした。運動器慢性痛は頸部,腰部,肩関節,肘関節,手関節もしくは手指,股関節,膝関節,足関節もしくは足部において3ヶ月以上続く痛みの有無をそれぞれ聴取し,痛みなし/単関節慢性痛/多関節慢性痛/広範囲慢性痛と群分けした。広範囲慢性痛はアメリカリウマチ学会の基準(Wolfeら1990)をもとに群分けした。ADLはロコモ25の項目より上位更衣,下位更衣,入浴,トイレ,歩行,階段能力を使用し,中等度困難以上をひとつでも有するものをADL低下群とした。統計解析は目的変数をADL低下の有無もしくは,ADLの各項目の低下の有無とし,説明変数を運動器慢性痛のグループとし,年齢,性別,Body Mass Index,Geriatric depression scale,運動習慣(有・無)を調整因子とした多重ロジスティック回帰分析を行った。

【結果】

単関節慢性痛,多関節慢性痛,広範囲慢性痛の有病率はそれぞれ22.9%,17.3%,8.4%であった。ADL低下の有訴率は痛みなし,単関節慢性痛,多関節慢性痛,広範囲慢性痛群それぞれにおいて11.2%,13.0%,21.9%,43.0%であった。多関節慢性痛を有する者は痛みなしの者と比べてADLが低下しており(オッズ比:2.2,95%信頼区間:1.5-3.2),また広範囲慢性痛を有する者においても痛みなしのものと比べてADLが低下していた(オッズ比:5.0,95%信頼区間:3.3-7.7)。ADLの各項目でみると,多関節慢性痛を有する者は歩行能力(オッズ比:2.4,95%信頼区間:1.2-4.7)と階段昇降能力(オッズ比:2.2,95%信頼区間:1.5-3.2)が低下しており,広範囲慢性痛を有する者はすべての項目において低下していた(上位更衣,オッズ比:6.0;下位更衣,オッズ比:7.2;入浴,オッズ比:5.4;トイレ,オッズ比:7.1;歩行,オッズ比:4.5;階段昇降,オッズ比:4.5)。

【結論】

本研究結果より多関節慢性痛・広範囲慢性痛を有しているものはADLが低いことが示された。多関節慢性痛のものは主に移動能力が低かったのに対し,広範囲慢性痛を有するものはすべての項目の能力が低かった。